面を裂く予測線
空気がさらに重くなる。
ヴェル・サグリオンが翼膜を大きく広げ、蒼い光を放つと、無数の糸が一斉に広がった。
今度は一本ずつではない。
前方の地形そのものを塗りつぶすような、全面攻撃。
「……ここまで走るか。ならば――まとめて潰す。」
声と同時に、赤土の大地から数十本の光糸が立ち上がり、網目となって空間を埋め尽くした。
風が唸り、砂が渦を巻く。
(来る……!)
フリントは肩の痛みを無視して走る。
だが前方に開いている隙間はほとんどない。
そこで彼は、深く息を吸い、目を閉じた。
(落ち着け……風、角度、時間。すべてを結び付ける。)
脳裏で数式が走る。
糸が振れる角度、風の向き、次の一歩を踏み出すタイミング――
彼の意識が、一瞬、周囲のすべてを「線」として捉えた。
カードケースから一枚を抜き取り、指先で回す。
その瞬間、彼の固有能力が動いた。
カードの軌跡、糸の切れ目、わずかな空間を通すイメージが脳内で完成する。
「……通る。」
フリントはカードを投げた。
光る糸の間をすり抜け、一本を正確に断ち切る。
その切れ目を狙って、彼は体を滑り込ませた。
糸が彼の脇腹をかすめ、赤い線が走る。
痛みで息が詰まりそうになるが、彼は笑みをこぼした。
「……あなたの糸の網も、まだ完全じゃない。」
ヴェル・サグリオンの翼膜が震え、わずかに感嘆のような声が響く。
「……興味深い。ただ逃げ回ってばかりいるから、走者の中では最弱かと思ったが、
ただの最弱ではないな。」
だが次の瞬間、さらに糸が空間を埋める。
すべての方向から糸が迫り、空そのものが刃となって襲いかかる。
フリントは脇腹を押さえながら、再びカードを構えた。
(まだ、終われない。妻の笑顔が待っている。あの夜、彼女が見ていたカードの軌跡を――もう一度見せてやる。)
彼は痛みを押し殺し、再び加速した。
光と砂の渦の中で、その姿はさらに前へと進んでいく。
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2025/08/08




