カードを抜くように
銀色の腕が、子どもの目の前に迫っていた。
細長い刃が光を帯び、空気を裂く音がした瞬間――
「ガンッ」という金属音が響いた。
何かが飛来し、その怪物のこめかみに深く突き刺さっていた。
それは、たった一枚のプラスチックカード。
だが、その角度と速度は、まるで鋭いナイフのようだった。
怪物はよろめき、悲鳴を上げる。
そのすき間をぬって、長身の影が砂を蹴って飛び込んだ。
「こっちへ!」
落ち着いた低い声。
怪物の爪が振るわれるより早く、その腕をかわし、男は子どもの肩を抱き寄せた。
温かい腕だった。震える私の体をすっぽりと包む。
「怖かったね。でも、もう大丈夫だ。」
その声に、胸がじんわりと熱くなる。
ヘルメットの奥の瞳が、やさしく私を見ていた。
フリントは、腕の中の小さな命の鼓動を感じながら、短く息を吐いた。
(……こんな小さな子を、どうして巻き込む。
エイリアンたちに悪意がないとわかっていても……。
だが、倫理は星によって違う。だからこそ、こちらが守らなくては。)
後ろで怪物が体勢を立て直す音がした。
フリントはカードホルダーから二枚目を抜き取り、振り返る。
「君は、もっと遠くへ。」
そう囁き、子どもを路肩の岩陰に押しやる。
カードをひとひねりし、軽やかに投げた。
弧を描いたカードが、怪物の肩を削ぎ、銀色の液体が飛び散る。
(みんなほど、戦う能力が高い体ではない。だが、何かを切り開く技術なら、まだ僕にも残っている。)
怪物が爪を振るった。
だがフリントは滑らかに身をかわし、膝をついた姿勢からさらに三枚のカードを放つ。
爪が削られ、怪物が低くうめいた。
「……どこまでも追ってくるか。
君たちが狩りを望むのなら、せめてこの子を見逃してほしいものだ。」
呟きながら、フリントは子どもの頭に手を置いた。
「君は、南の丘を越えろ。そこに避難列車がある。」
私は、ただ頷いた。
その瞳の中に、優しい光があった。
フリントは再び立ち上がり、前を見据える。
(オパール・ドームまで、あと数キロ。
……時間は、まだある。)
怪物の群れの間を縫うように、フリントは子どもを背後に残し、再び走り出した。
赤土を蹴る足音が、夜明けの静寂を破る。
温厚な顔の奥に、強い意志が宿っていた。
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2025/08/06




