拳が拓く道
刃が四方から迫る。
サファルは瓦礫の中で、ただ耐えるだけの岩になりつつあった。
ルド・ヴァリクスの声が頭上で響く。
「どうした? 貴様の誇りはその程度か?」
胸の奥が熱くなる。
頭の片隅で、あの施設での夜が蘇る。
オケケが笑っていた。
エステバンがからかっていた。
彼らはもう、この世にいない。
その事実が、今なおサファルの胸を貫いていた。
(……そうだ……俺はあいつらの分まで、走らなきゃならねぇ……!
こんなところで……止まれるか!)
拳を握る。
瓦礫を押し退け、脚に力を込める。
刃が首元を狙って振り下ろされる瞬間、サファルは全身を捻り、硬化した肘でその刃を弾き飛ばした。
金属音が響き、ルド・ヴァリクスの目が見開かれる。
「……まだ立つか。」
「まだだ。俺は走り続けるって決めたんだよ!」
サファルは瓦礫を飛び越え、渾身の拳を敵の胸へ叩き込んだ。
四本の刃が交差し防御するが、硬化した拳の圧力がそれをねじ曲げ、ひびを入れる。
「ぬうっ……!」
さらにもう一撃。
ルド・ヴァリクスの体がよろめき、背後の岩壁に叩きつけられる。
砂嵐の中、サファルの瞳が炎のように燃える。
「お前がどんな文化を持っていようと関係ねぇ!
ここは俺たちの星だ……これ以上、踏みにじらせない!」
拳が雨のように振るわれる。
左の頬、右の胸、膝、肩、次々に打撃が加わり、ルド・ヴァリクスの装甲が崩れていく。
反撃の刃が飛ぶが、サファルは硬化した腕でそれを受け流し、さらに踏み込む。
ルド・ヴァリクスが最後の刃を突き出す。
だがサファルはそれを両手で掴み、無理やりへし折った。
「なっ……!」
「終わりだあああああっ!」
サファルは体をひねり、渾身のストレートを敵の胸部中央に叩き込む。
轟音が響き、衝撃波が砂を吹き飛ばす。
ルド・ヴァリクスの体がのけぞり、黄金の瞳が揺れる。
次の瞬間、彼の体が爆ぜるように崩れ、黒い靄が風に散った。
残ったのは、砕けた刃の残骸と、静まり返る荒野だけ。
サファルは肩で息をしながら、その場に立ち尽くした。
拳からはまだ熱が抜けず、脈動が伝わってくる。
(……やった……。俺は……こいつを……越えた……!)
遠くで雷鳴が響く。
砂嵐が少しだけ収まり、〈ハルダラ民家〉の屋根がかすかに見えた。
サファルは血を拭い、カードキーを握り直す。
「まだ終わりじゃねぇ……ここからだ……!」
そう呟き、再び走り出した。
倒れた敵を背に、目的地へ――仲間たちの夢を背負いながら。




