砂塵の初撃
砂嵐が巻き上がる。
サファルは足を開き、低く構えた。
その腕の筋肉が、爆発する寸前の岩塊のように張り詰めている。
ルド・ヴァリクスは四本の刃を交差させ、ゆっくりと歩を進めた。
黄金の瞳が、わずかな愉悦を湛えている。
「走者よ。力を見せてみろ。」
その言葉を合図に、サファルは地を蹴った。
砂を跳ね上げ、一直線に突進する。
右の拳が唸りをあげ、ルド・ヴァリクスの胸を狙う。
刃が閃き、金属音が響く。
サファルの拳は受け止められたが、凄まじい衝撃で空気が波打つ。
(通じる!)
即座に左肘を繰り出す。
だがルド・ヴァリクスはそれをかわし、下段の刃でサファルの脚を払う。
踏みとどまったサファルは跳ねるように回転し、背後を取ろうとする。
拳が後頭部を狙ったが、ルド・ヴァリクスは予測していたかのように身を沈め、逆に四本の腕を広げた。
上段の刃がサファルの肩をかすめ、火花が散る。
「ぐっ……!」
鋭い痛みが走り、サファルは後退した。
その隙を逃さず、ルド・ヴァリクスが一気に間合いを詰める。
四本の刃が交互に閃き、嵐のような連撃が襲いかかった。
サファルは腕で受け、拳で弾き返すが、一本の刃が脇腹を掠めた。
布が裂け、血が砂に落ちる。
(重い……! こいつ、さっきまでの雑兵とは桁が違う!)
防御を続けるうちに、ルド・ヴァリクスは低く笑った。
「どうした、その程度か?」
次の瞬間、下段の刃がサファルの膝を狙い、上段の刃が肩へと振り下ろされる。
防御の体勢が崩れ、サファルは横へ跳んだ。
だが着地の瞬間、尾の一撃が側頭部を捉えた。
視界がぐらりと揺れる。
耳鳴りが響き、砂嵐の音が遠ざかる。
「っ……まだ……!」
サファルは拳を握り、渾身のアッパーを繰り出す。
だがルド・ヴァリクスはあざ笑うように身を引き、逆にその腕を刃で弾き返した。
衝撃でサファルの腕に痺れが走る。
砂を踏みしめ、体勢を整えようとするが、すでにルド・ヴァリクスが次の攻撃に入っていた。
四本の刃が、舞うように連続して振るわれる。
サファルは必死に捌くが、一撃が肩を裂き、さらに一撃が胸を抉った。
「がっ……!」
後方に弾き飛ばされ、瓦礫に背中を打ちつける。
肺から空気が抜け、呼吸が詰まる。
ルド・ヴァリクスはゆっくりと歩み寄り、刃を構えたまま言った。
「人間……貴様の足は、ここで止まる。」
サファルは歯を食いしばり、血を吐きながら立ち上がる。
だが――この一連の攻防で、戦場の主導権は確かにルド・ヴァリクスが握っていた。




