表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/119

僕らが育った場所

世界がまだ静かだったころ――

 サファル・アリムバエフは、ガラス張りの施設の中で生まれた。

 そこには、母の声も、父の顔もなかった。

 ただ無機質な白い壁と、眠り続ける培養槽と、規則正しい点検の足音だけがあった。


 名前を持つ前、彼らは番号だった。

 No.04──それが彼の最初の呼び名だった。


「君たちは特別な子どもたちだ。」

「人類の未来を託されている。」


 白衣の研究員が笑顔でそう告げた。

 だが子ども心にも、その笑みの奥に滲む罪悪感と疲れを見抜いていた。


 朝はランニングから始まり、昼は耐久訓練。

 夜は座学で戦術を叩き込まれた。

 食事は栄養管理され、傷はすぐに治療された。

 だが温もりはなかった。


 サファルが唯一、心を許せたのは、同じ部屋で育った仲間たちだった。

 笑顔のステルン、負けん気の強いオケケ、皮肉屋のブレイク、真面目なレイフ、無邪気なフリント、そして誰より速く走るエステバン。

 彼らと過ごす時間だけが、サファルに「家族」という言葉を教えた。


(親はいない。血も繋がっていない。

 でも俺たちは……確かに兄弟だった。)


 ときには反発し、ときには拳を交えながら、彼らは互いの傷を拭った。

 夜、ベッドの上で誰かが泣き出すと、皆が黙って手を伸ばした。

 その温もりだけが、人工的な施設の中で唯一の「人間らしさ」だった。


 だが、彼らはその時まだ知らなかった。

 自分たちの存在が、ある日突然、世界を救うための兵器として送り出されることを。

 彼らは夢を語り合った。

 サファルはその中で、ぽつりと言ったことがある。


「もし外に出られたらさ……俺、でかい岩を抱えてでも、誰かを守りてえんだ。」


 その言葉に、皆が笑った。

 オケケが言った。


「あんたならできるよ、あの頑固な腕ならね!」


 あの日の笑い声が、今もサファルの胸に残っている。

 そして、世界が火に包まれたとき――

 その約束が、彼を走らせ続ける理由になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ