逆襲の刃
雨に煙る路地で、オケケは優勢を確信しかけていた。
蔓が四方から伸び、ルド・バルカスの腕を拘束し、脚を絡め取る。
敵は巨体を揺らし、装甲が軋み、苦悶の声をあげる。
「はぁっ……はぁっ……! このまま、決める……!」
オケケはさらに力を込める。
彼女の周囲の地面が震え、街灯や看板からも緑が溢れ、雨に濡れたアスファルトを割って新たな根が伸びた。
緑の牢獄がルド・バルカスを包み込んでいく。
だがそのときだった。
敵の口角が、わずかに吊り上がった。
「……面白い……だが、まだ見せていないものがある。」
ルド・バルカスの背の双刃が、突如として強烈な光を帯びた。
それは単なる光ではない。
刃そのものが熱を持ち、青白い稲妻が走る。
「これが……私の“雷鎧”だ。」
瞬間、轟音が響き、眩い閃光が街を照らした。
次の刹那、ルド・バルカスを覆っていた蔓が、一斉に焼け落ちた。
火花とともに切り裂かれ、焦げた匂いが立ち込める。
「なっ……!」
オケケの目が見開かれる。
ルド・バルカスは両腕を広げ、青白い電撃をまとった刃を振るった。
その一閃が、オケケの胸元を正確に貫いた。
「ぐあっ……!」
鋭い痛みが体中を焼く。
熱と電撃が同時に走り、筋肉が痙攣する。
血が口から溢れ、雨に混じって流れ落ちた。
(……あぁ……まだ……走らなきゃなのに……!)
オケケは膝をつき、地面に手をつく。
だがルド・バルカスは追撃をためらわない。
尾が電光をまとい、真横から横薙ぎに襲いかかる。
骨が軋む感覚。背中を打ち抜く衝撃。
オケケは瓦礫を数メートルも転がり、地面に叩き伏せられた。
「ぐ……ぅ……っ!」
視界が揺れる。耳鳴りがひどく、雨音が遠のく。
胸から肩にかけて、深い裂傷が走り、そこから力が抜けていく。
「これで終わりだ、走者。貴様はここまでだ。」
ルド・バルカスの声が低く響く。
青白い稲妻が刃を伝い、夜の街路を照らした。
オケケは倒れながらも、必死に手を伸ばそうとする。
(まだ……まだ……! 止まれない……!)
しかし、肺から血がこぼれ、呼吸が浅くなる。
雨が彼女の頬を冷たく撫でる。
それでもその瞳は、まだ戦場を見ていた。
「走れないなら、ここで潰れていけ。」
ルド・バルカスは最後の一撃を加えようと刃を構えた。
オケケは震える唇で呟く。
「……ここで……終わる気は……ない……!」
しかし、現実は容赦がない。
彼女の胸から流れる血が、雨に薄まりながら路地を染めていった。
彼女は……致命傷を負った。




