優勢の刹那
激しい衝突音が街路を震わせ、瓦礫が飛び散る。
雨が戦場を洗い流すように降り注ぐ中、オケケは一度跳ねるように後退した。
肩で荒く息をつきながらも、その瞳は鋭く獲物を見据える獣のものだ。
ルド・バルカスは刃を構えたまま前進する。
だが、ほんのわずか――彼の動きに鈍さが混じっているのを、オケケは見逃さなかった。
(効いてる……私の打撃は通ってる。
なら、一気に崩す!)
オケケは足元を見やる。濡れた路面、倒れた看板、瓦礫。
瞬時に頭の中で軌道を組み立て、地を蹴った。
踏み台にした瓦礫を蹴り飛ばし、雨を弾きながら高く跳躍。
落下の勢いを乗せた回し蹴りがルド・バルカスの肩を直撃した。
「ぐおっ……!」
鈍い衝撃音とともに、巨体がたたらを踏む。
オケケは着地と同時にさらに前へ踏み込み、拳を突き出した。
胸部装甲に深い凹みが生じ、火花が散る。
「どうした! その程度かよ!」
オケケは叫ぶと、渾身のコンビネーションを叩き込んだ。
右のストレート、左のアッパー、そして肘。
連撃が装甲を砕き、ルド・バルカスの体勢を崩す。
そのたびに、雨に混じって血の飛沫が広がった。
ルド・バルカスは咆哮を上げて爪を振るうが、オケケは半歩下がってかわし、腕を取るようにして捻り返した。
敵の巨体がわずかによろめく。その隙を突いて、鋭い膝蹴りを側頭部に叩き込む。
「ぐああっ……!」
ルド・バルカスの体が瓦礫の山へ吹き飛ばされる。
雨が衝突の衝撃で弾け飛び、轟音が街を揺らした。
(よし……この流れなら、押し切れる……!)
オケケは深く息を吸い、拳を握り直した。
脳裏をかすめるのは、すでに命を落としたエステバンの姿。
胸が熱くなる。
(あんたのぶんも、私が進む……!)
再び地を蹴り、瓦礫を踏み台にして跳び上がる。
豪雨の中を駆け抜け、雷鳴を背に拳を振り下ろした。
打撃がルド・バルカスの肩を砕き、地面に深い亀裂を生む。
優勢――確かにその瞬間、戦場の主導権はオケケに移っていた。
雨音に紛れて、彼女の荒い息と、短い笑い声が響く。
「ほら、どうした! まだまだ倒れちゃ困るんだよ……!」
瓦礫の上でルド・バルカスが低く唸り、爪を地面に突き立てた。
その動きに、オケケは再び構えを取り、次の攻撃に備えた。
(このまま……決める!)




