狩りのルール
世界が終わるその前に、彼らは“ゲーム”のルールを告げた。
あの日、パリのサミット会場。黄金の瞳を持つ異星の指揮官が現れ、冷たく告げた。
「我らは四本の塔を地球へ送った。貴様らの空に、既にそびえているはずだ。」
実際、世界各地で同時刻に空が裂け、巨大な構造物が音もなくワープ転送されていた。まるで天を貫く杭。地表に根を張った鋼の塔。それがエイリアンの足場であり、狩り場であり、宣戦布告の象徴だった。
「我らは貴様らを滅ぼすために来たのではない。狩るために来たのだ。」
人類は絶望したが、同時に希望を託された。エイリアンは、自分たちの優位を誇示しながらも、あえて人類に技術を授けた。
彼らの言葉は簡潔で残酷だった。
「戦える人間を作れ。そうすればゲームは成立する。」
――その技術こそが、遺伝子操作であり、結果として七人の超能力者が生まれた。
公式に確認されているのは七人のみ。数十年の研究と死屍累々の実験の果てに、ようやく彼らは戦場に立てる年齢に到達した。世界の各地に散らばった彼らは「ランナーズ7」と呼ばれ、たった七つのカードキーを握り締めて走り出す。
超能力者の基本は身体能力の超人化。限界を超えた反射神経、筋力、耐久力。
さらに、個人ごとに固有の異能が一つずつ目覚めている。
それは炎であったり、鉄であったり、植物であったり――人間を超えた戦闘手段だ。
「核ミサイルの発射場はすべて偽装してある。」
人類側の司令部はそう告げた。民家や工場を装った施設が、実際にはミサイルサイロへと繋がっている。
電波や遠隔制御は使えない。理由は単純だった。
エイリアンは未知の技術で、あらゆる通信を妨害してくる。だから、唯一有効な発射手段は、物理的なカードキーをその手で差し込むことだけ。
発射成功の合図は決まっていた。
――タッチダウン。
その言葉が司令部に届いたとき、人類はひとつの塔を突破したことになる。
四つすべてを突破できれば人類の勝利だ。
だが人類は知らない。エイリアンは「四本の核ミサイルが打ち上がった時点で、人類側の勝利で構わない」と思っていることを。
その情報は、彼らの黄金の瞳の奥に隠されたままだ。
エイリアンたちは余裕に満ちている。
彼らは言った。
「貴様らの七人に何ができる? 我らの狩りは、貴様らの涙と悲鳴で彩られる。」
そして――今、地球上の各地で塔の周囲に戦場が広がり、七人はそれぞれ走り始めている。
そのひとり、ナイジェリア・アブジャの街で。
雨を切り裂くように、一人の女が走り出す。
彼女の名はリワン・オケケ。
自分の固有能力の真価をまだ知らないまま、胸に誓いを刻む。
(どんな怪物だろうと、私は止まらない……走り抜けてみせる!)
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