諦めず
瓦礫に膝をつき、荒い息を吐くエステバン。
雨が容赦なく肩を打ち、傷口を冷やす。
視界の端が暗く滲み、それでもその瞳の奥に、炎がまだ残っていた。
(こんなとこで……終わるわけねえだろ……!)
胸の奥で叫び、エステバンは再び拳を握る。
指先に力を込め、立ち上がったその姿を、ワード・ザルガは愉快そうに見下ろしていた。
「しぶとい……だが、その足で何ができる?」
刃の腕が再び振りかぶられる。
だがその瞬間、エステバンは地面を強く蹴った。
雨をはじき、瓦礫を踏み砕き、全身を加速させる。
その動きは、もう読まれたはずの直線的な突進ではなかった。
急角度で滑り込み、ワード・ザルガの背後へ回り込む。
刃が空を切り、わずかな隙が生まれる。
「おおおおおおっ!」
鋼化した膝をワード・ザルガの腰に叩き込み、体勢を崩させる。
続けざまに肘を鋭く振り抜き、敵の顔面をかすめた。
血が飛び散り、雨粒と混ざって闇に溶ける。
ワード・ザルガが短く呻き、バランスを取り戻そうとした瞬間、
エステバンはさらに前へ踏み込んだ。
足元の瓦礫を蹴り上げ、視界を奪い、拳を真下から突き上げる。
強烈な一撃が顎を打ち抜き、ワード・ザルガの頭がのけ反った。
鋼の拳に伝わる重い感触。
エステバンはそのまま、再び渾身の打撃を叩き込もうと拳を振りかぶった。
「……まだだ……俺はまだ、倒れねぇ!」
雨と血にまみれながら、彼の叫びが夜の街に響いた。
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