第六話
柳生宗矩、松永軍が敗北してから一時間後、ようやく起床。
「んあー‥まだ寝たりんな。エクスカリバー抜けなかったし」
腹が減っていたので飯を食いにいくと柳生三厳、宗冬、友矩、そしてストーンボートがすでに食事中だった。
「おはよ。宗矩。あの大騒ぎのなかよく眠れたのう」
「おやじィ‥」
宗矩は半開きの目で、自らの寝癖の跳ね具合を指で確認しながら、ふらりと腰を下ろす。
味噌汁の湯気が、旨い。
「父上が寝ている間、俺たちは大変だったんだぞ」
半ギレ三厳。
「それよりも‥」
友矩が小声で囁く。
「エクスカリバーに触ったらしいですな」
一瞬、場の空気が止まる。箸の音、湯気のゆらぎ、鳥のさえずり。全部。
「……抜けなかった」
「おおお、やっぱりな! 抜けるわけない!ははは!」
「馬鹿言うな、いつかスポンと‥」
ストーンボートがずずずっと汁を啜りながら口を開いた。
「……エクスカリバーは、そう簡単には抜けん。抜ける時ってのはな、血が逆流してるみたいに熱くなるもんだ。夢の中でもわかるんじゃ」
「抜いたことあんのかよ‥」
「ない。けど、夢の中では三回くらい抜いた。四回目は斜めに傾いて、地割れが起きた」
宗矩は眉をひそめ、味噌汁の底に漂う豆腐をにらんだ。
「松永久秀‥所詮この豆腐みたいにやわすぎる男だったということか……」
宗冬が箸で豆腐をすくい上げると、にやりと笑った。
「でも、豆腐は崩れるからこそ味が染みる。父上もそろそろ、しみしみの人生を‥」
「……そりゃどういう意味だ‥この豆腐のように‥」
そこへ、門下生が部屋の外からどたばたと駆け込んでくる。
「申し上げます!足利の軍勢が現れましたァ!」
「何ィ!?」