第四話
松永久秀は一瞬怯んだが、すぐに狂気の笑みを浮かべた。
「ククク……やるじゃないジジィ。人間花火もいいが、あんたみてぇな生きた火種も悪くねぇ……!」
ストーンボートはあくびをしながら
「……ワシはなァ、まだ眠たいんじゃよ……お主らが来なければまだ寝れてたのにのぉ……」
実際この時、肝心の柳生宗矩は二度寝していた。
「さっさと殺されてくれるかの‥早くふかふかお布団に帰りたいんじゃ」
ストーンボートは松永に斬りかかる。
ストーンボートの一撃は、まるで老いを感じさせぬ重みと鋭さを孕んでいた。斬撃が空を裂く音すら、眠気混じりで悠長だ。それでも、松永久秀は紙一重でかわす。
「そのボロ切れがこんなに切れるとはなァ……! 老害の皮かぶったバケモンめ!」
松永は即座に懐から数珠つなぎの火薬玉をばら撒いた。火薬玉は宙で転がりながら、甲高く笑うかのように火花を散らす。
ストーンボートはため息ひとつ。
「うるさいのう……黙って死んでくれんかの……」
次の瞬間、彼の剣が風と同化し、火薬玉の全てを寸前で斬り払った。火花は舞うが、爆ぜることはない。
松永の狂笑が止まる。
「……ジジィ~‥」
ストーンボートは一歩前に出る。
「ワシは……ただの眠たい爺じゃ……。眠りを妨げる奴は敵じゃ」
その言葉とともに、彼の剣が閃く。
松永は一歩も退かず、体に巻き付けてある爆薬に火をつける。
「上等だよォ……この命、火薬とともに派手に散ってやる……!!」
なお柳生宗矩はこの時、三度寝に突入していた。