2人と1枚
「すいません、おトイレいいでしょうか?」
トニーが逃げようとしているらしい。
2人いっぺんにトイレは不自然だろうから、俺は黙っている。
若い男がリーダーらしい男に目配せしたのち、トニーと男が部屋から出ていく。
「すまん。わかんねーんだ」
俺は両脇を固められ、絨毯を触らせられる。
かなりの剣幕で怒鳴られているが知ったことではない。
金は無いのだから。
「どうも。ちょっとサムと相談します」
トニーはカバンから地図と鉛筆を出し、そこに日本語で書いた。
『トイレでは逃げられなさそう』
俺は頷く。
「オーケー。じゃあさ、買う前に試乗したいんだけど?」
「どれか、だって」
「そこのあんたが踏んでヘタってるやつ。売りもんじゃないんか?」
リーダーっぽい男が足元の絨毯をこれでもかと踏んでいたので、そいつにした。
ペラペラの黄緑色した絨毯だ。
「1万でいいそうです」
「イヤ、乗ってから決めらぁ」
1万と言われても持ってないのだ。
男はヒモで絨毯をぐるぐる巻いて、それを持って俺たちと外へ出る。
「普通に乗ればいいそうです」
「ふ~ん。便利なもんだな」
渡された絨毯からヒモを解いて、地面に広げる。
即座にトニーに目配せし、2人で絨毯に乗って、
「いけー!!」
俺たちはペチペチと絨毯を叩いて合図する。
直後、絨毯は俺たちを乗せて空へと舞い上がり、とんでもねぇ速度で村を後にした。
「なんとかなるもんだな。っておいどうした?」
絨毯の高度がみるみる下がっている。
結局砂漠より少しマシな野原へと着地した。
「よくやった。お前はどっか行っていいぞ」
地面に胡坐をかいて座って絨毯に声を掛ける。
「そんなの通じて・・・・・・る!?」
絨毯は俺に向かってフワフワと近寄ってくる。
そして巻き付いて首を絞めてきた。
「・・・・・・!!!!」
ギブアップとばかりに絨毯を叩いたら拘束を解いてくれた。
そして、クルクルと丸まってトニーのカバンの上の空いてるとこに入った。
「着いてくるんかい。せっかく自由にしてやったのによ」
俺たちはまたサイコロを振って次の行き先へと、仲間を1枚増やして旅することになったのだ。




