豪華な昼食
「昼飯こんなに豪華なのか!?」
白いテーブルクロスの敷かれたクソデカイテーブル。
後ろに大きな暖炉のある、お誕生日席にバノーレは座っている。
俺たちは離れて左右に分かれて座っている。
そして給仕の人間がどんどこ来る。
1皿目。
「まずは酢漬けでございます」
野菜と小魚の酢漬け。
魚は丁寧に骨も取られ、鷹の爪っぽい赤い香辛料が散らばっている。
(酸っぱいの苦手なんだよなぁ)
しかし、出されたものを残すということはしない。
そう育てられた。そう生きてきた。
(うまい。酸味も全然気にならない)
頭で考えていたよりも酢がきつくない。
とてもマイルドで、濃い味だ。
「スープでございます」
2皿目。
透き通るような黄色のスープ。
味はトウモロコシ。ついでにフランスパンのような噛み応えのあるパン。
通常ならばポタージュスープにするところだろうが、贅沢に濾して汁だけだ。
「お肉。牛肉になります。赤身と脂のバランスのいい部位でございます」
3皿目。
分厚いステーキ。
当然ナイフとフォークで食べる。
(なんだこれ。うんめぇ。でも米欲しい)
高級和牛並のうまさ。
今まで食べてきたこの世界の肉は赤身しかないか、脂身しかないかの肉ばかりだった。
「代々、ウチは飼料の売買で財を成してきた。その過程で、最高の牛肉を生み出した」
肉について、長々とバノーレが話始める。
それを適当な相槌でスルーしつつ、すべて残さず平らげた。
「卵のシャーベットでございます」
4皿目。
これはこの世界で初めて食べるものだ。
味は非常に甘い。というか凍らせたミルクセーキだ。
「最後にデザートでございます」
5皿目。
食べても食べても、次から次へと違う味、食感の物がどんどん出てくる。
しかし、ついに終わりがきた。
薄く切った果物の乗ったパンケーキ。
果物も様々で、リンゴ、バナナ、ブドウ、キウイ? 桃、が乗っていた。
自分でハチミツを壺から掬ってかけるやつだった。
「すべてそのあたりの店ではでてこなかろう? 生きていられる時間は有限。つまり、食えるものも有限。毎日の食うものに金をかけるのは当然!」
料理で品数を出す、というのは料理をしない人間にとっては大したことではないように思えるが、実際には違う。
注文から数分で仕上げる、というのは実際には事前の仕込みができている前提。
厨房では少なくない人数が腕を振るい、各自がプロとして料理を管理しなければできてこない。
ここまで書けば、ただ座って食べている者がどれだけ楽をしているのか伝わるだろうか?
昼食を終え、1時間の休憩を挟み、午後1時半。
「さぁ、再開しようぜ」
「くそぅ。2打負けを取り戻さねば」
「焦ってもどうにもなりませんて、ね」
敵を励ますトニー。
バノーレは負けず嫌いらしい。




