1打の重み
「俺たちならできるぞ」
「頑張りましょ。ところで、ゴルフって相手のプレーを褒めたり接待しますよね? やりますか?」
「そんなもんいらねぇだろ、アイツは敵だ敵」
素振りをしているバノーレ7世を横目に、俺たちはコソコソと話し合う。
そして始まった真剣勝負。
1ホール目。
第1打、俺。
「パーは3打です」
(まずは軽いやつだな)
パー3というのは、3回で穴に打ち込むとスコア0ということだ。
規定よりマイナス1打ならマイナス1点、プラス1打ならばプラス1点加点され、多くマイナスを稼いだほうが勝ちになる。
(長い芝に入れると出すのが大変だ。砂地は論外。なら当然・・・・・・)
短い芝、フェアウェイというもっとも王道の道。
地面を転がすしかないパターゴルフ。
第1打はまっすぐ前に、確実に穴に近づけた。
ちなみに穴はスタート地点から左側。
砂地を挟んでいるので、斜めに打って直接カップを狙うことはできない。
また、右に膨らむことで、少し距離が出ても大丈夫になるので、力強く打つことができる。
(まあまあ、悪くない)
打った後、ボールの地点に目印を置いて、ボールをどけた。
次。
「ここだっ」
トニーは砂地ギリギリに打ってしまった。
迂回しないと穴には入れることは厳しい。
(今回は俺がいかないと・・・・・・)
バノーレは俺と近い場所に打った。
結局、俺とバノーレは3打。パー。プラマイゼロ。
トニーはプラス2。
「トニー、お前器用なタイプじゃなかったのかよ?」
「運動系は全然得意じゃないんですよ。手先だけです」
これでは期待できない。
次、2ホール目。パー3。
今度は逆に穴めがけて直線に打つと、砂地へ突っ込んでしまうので、左右のどちらかへと打つ必要がある。
「これ、左は微妙か? いや逆に砂地が足元のほうが楽か?」
俺は右利きなので、立ち位置はボールの左側に立って打つ。
いわゆる野球でいうなら右打ち。
ボールの左側が砂地、もしくは深い芝、どちらの方が打ちやすいかを考えていた。
「足が砂になっても平気じゃないですか? 芝で足を取られるのがイヤじゃないですか?」
「・・・・・・そうだな。右側に打とう」
打った球はドンピシャ。ちょうど切り返さないといけない地点のちょっと前まで行った。
トニーの球は手前すぎて、もう1打かかる感じだ。
バノーレの球は、行き過ぎて、深い芝まではいってしまった。
(チャンス!!)
俺は深呼吸し、残り10メートルほどを打った。
・・・・・・コロン。
音を立ててカップに入った。
マイナス1点。
「よっしゃああ! リードした、リードしたぞぅ!」
「まだまだ。あと18ホールある」
バノーレは芝から出すのにてこずりパー。トニーもパーだ。
そうして、様々な配置のホールを10個周り、午前が終わった。
俺は、その1打のリードを守り切りマイナス1。
バノーレはプラス1。
トニーはプラス8。




