メインレースと収支
『1-5-6、20.6倍』
「来た来た、足し算馬券」
「足し算馬券?」
4レース目。
こういう足し算、引き算、掛け算のような数字の並びになることがよくある。
3連複を3ゴールドで、61と食券クーポン。
「さぁて折り返しだ。今の勝ちはっと、80ちょい。お前は?」
「マイナスです。30」
レースはよどみなく進み、メインレース。
『さあ、カッパー特別賞、出走馬の紹介です』
「いやー、発汗が気になるなぁ」
1番人気の馬はすごく汗をかいていた。
これは良い調子のときでも、悪い調子のときでも現れるサインだ。
「今日は暑いですし、その影響では?」
「う~ん、どうかなぁ。俺は切るぜ」
「じゃあ僕は賭けますよ」
『本日のメインレース、勝ったのは4番トクール号。人気は2番人気でしたが、道中好位置、直線で内から伸びて・・・・・・」
「よおし、的中! 30を単勝で4倍! 120ゴールド!」
「僕も3連複当たりです。安いですけどね」
「プラスになったかい?」
「10ゴールドほど」
「よしよし。あとは最終も当てて、マイとうまい飯食って寝るだけだな!」
最終レース。
「こっちの最終のが簡単そうだぜ」
「どうしてですか?」
「こういう2強のはな、こっちが一着だとこっちは来ない展開の脚質分布だ」
「それだと予想が増えて負けますよ?」
「ところがだ、それを打開する簡単な買い方がある」
そういって、俺は席を立ち、馬券を購入しに行く。
「俺は・・・・・・単勝、2頭買った。どっちか来ればプラスだ。どっちかが確定で外れるのは本来よくない買い方なんだけどな。確実に勝つのも腕前だ」
両方が2倍を超える単勝倍率のとき、かつ、どちらかだけ勝つというときに使えるリスク分散の買い方。
ギャンブラーならどちらかに絞って買え? うるせぇ、プロの博徒はこうするんだ。生活が懸かってたらこうなるんじゃ。
というわけで。
「カンパーイ!」
俺たちとマイの3人は、街のちょっぴり豪勢な食事ができるレストランにいる。
「勝ちに勝ったぜ、400も!」
「すごい! 競馬の還元率は80パーセントと言われているのに、一週間でそんなにプラスになるなんて!」
「まあ僕は微マイナスなんですけどね。サムがすごすぎるだけですよ」
(80パーセントと言われている?)
ここでの支払いは負けたトニー、というところだが、流石にレベルが違いすぎてかわいそうなので、俺も半分出すことにした。
マイの言葉に引っかかりを覚えたが、特に追及しなかった。
この1週間で起きた出来事、主に競馬のことで盛り上がり、すっかり夜も更けたころ。
「いいなぁ。世界を旅して好きなことして生きていくなんて」
「そんなに良くはないぞ。自由にも限りがあるんだ」
「それでもいいですよぉ。私なんて、はやく婿を見つけて店をつげって・・・・・・」
「まあ人生は人それぞれですからね。マイさんにも良い生活っていうのがいつかできますって」
「そうですかねぇ。いつか、いつか世界中を回ってここに戻ってくることがあったなら、世界の競馬について話してください」
「もちろん。約束すんぜ」
酔ったマイを家まで送り、俺たちは明日の旅立つ支度を始める。
「買い忘れとかないか?
「あ、靴下穴あいてます。換えたいかも」
「明日の朝イチに買ってでようか。さ、サイコロ振るぞ」
宿の床板にサイコロを転がす。
6。
一番遠い場所になった。
「明日はすごい歩くなぁ。頑張んねぇと」
「ですね。おやすみなさい」
「おう。おやすみ~」
こうしてエイチホメの滞在が終わったのだった。




