障害物レース
『ジャンプ! 最後のコーナーを曲がって、直線! 先頭駆けてきたのは7番!』
複勝が的中。
3番人気だったはずだが、締め切り直前に大口の買いが入ったらしく、最終オッズは1.1倍
になってしまっていた。
「1.1倍ですって」
「ガミはねぇんだ。1点買いだから」
しかし、想定オッズの1.3倍と1.1倍では払い戻しに大きな差がある。
賭けていたのは10ゴールドと少額だが、金額が大きいと落胆も大きかっただろう。
何があるかわからないので、さっさと換金。
「ほれトニー」
「あ、どうも」
浮いた分に少し足して、瓶のビールを買った。
気温は27、8度といったところで、残念だがビールは常温、仕方がない。
「なんかの能力が発現して、馬の声が聴こえたりしないかい?」
「そんなものがあったら全部的中させてますよ」
「だよなぁ」
次のレース。
『ジャンプ! おっと!! 態勢を崩して落馬! 9番のフルサウンド、落馬です!』
「おいおいマジかよ」
ダントツ一番人気が落馬。
騎手が馬から落ちて、失格。
しかし、俺は買っていない。
今回のレースは12頭立て。
外の枠だし、あっても3着だろうと踏んでいた。
『ゴール! 波乱の決着、なんと7、5、8番人気です!』
「これはヤバイ」
「どのくらいになるんですかね?」
「中央競馬なら3連単100万馬券だな」
今回ばかりは俺の予想も的中とはならなかった。
かすりもしない。
障害戦、残りの2レースは固い決着で俺もトニーも単勝、複勝的中。
「そこそこ増えたな」
単勝を当てたおかげで40ゴールドほど浮いた。
ついでに端数の食券クーポンが手に入り、昼食へ。
そこで目の前のテーブルでおっさんが食らっていたもの。
「おお、競馬場名物モツ煮込みがあるじゃん」
モツ煮込み。
大体の公営賭博場にあると思われる食べ物。
味が濃く、500円くらいだった気がする。
豚や牛の腸をよく洗って、ぶつ切りにしたものを、味噌や醤油のスープで煮込んだもの。
刻んだネギが散らされ、他の具は大根、豆腐、ごぼう、人参、こんにゃくが多いかな?
「初めて食べるかもしれません」
「そうか! 勝ってるときに食うもつ煮がいっちゃん美味いな!」
スプーンとフォークで食べるのには慣れないし、鳥出汁のもつ煮込みも初めてだが美味かった。
「人多いな。これからは一緒に席を立つのはダメだな」
「わかりました。交代でトイレとか馬券買いに行きましょう」
5レース目が始まり、終わった。
俺は馬連単的中。20倍。
表と裏を買っていたので投資は倍だが、十分だ。
『そこから追えないなら辞めちまえ!!』
『4着は死ねよおまえ!!!』
「おおう、賭場らしくなってきたねぇ」
ゴール板前の喧噪。
初心者はビックリするかもしれないが、罵声が飛ぶのは日常茶飯事。
小競り合いが起きたり、危険なことも多い。
そのために警備員の数も相当なものなのだ。




