まともな仕事
火の灯った街灯が並び、帰り道は明るい。
俺たち以外にも帰りの人間はたくさんいた。
その表情も様々。
急に立ち止まって頭を抱える者。嬉しさのあまりスキップしていたりする者。有料馬車を使って帰路につく者。
「変わらんなぁ」
「? 何がです?」
「いや競馬場近くってどんな世界でも変わらねぇなって。チャリンコのやつがいないくらいだわ」
俺の勝ち分は150ゴールド。
トニーはマイナス80ゴールド。
230ゴールドの差。賭けられる額は1日100ゴールドしかない
このためよほどのミスをしない限り、土曜日は固く賭け、逆転されそうなら日曜日に勝負する。
ただし、土曜日のレースでキャビンとかいう騎手が乗るレースがあるなら、厚く張る。
「とりあえずな、賭け方、教えといてやるよ。収支が負けで終わるのだけは避けようや」
宿代一人30ゴールド。
これは回収しなければならない。
競馬でなくても、木曜金曜に別のあてを探して稼いだ方が確実だろう。
「賭場、なかったんだよなぁ」
「見当たりませんでしたよね。ウラ開催している奴は流石にわかりませんけど、明日明後日どうするか」
「たまには肉体労働でもしてみるかい? 日雇いのやつくらいあるだろ」
というわけで翌日。
「頭が蒸れるねぇ」
鋼鉄製のヘルメットを被って、木と鉄でできた槍を持ち、腕章を付けている。
何をしているのかというと警備だ。
"まず何も起きないけども一応は人の目が無いといけない"という、街中の門の横に立つだけのお仕事。
門番補助とかいう、健康な男女なら可という募集要項の日雇い。
万が一が起きない限り、超楽勝。
立って、何なら少し門に寄りかかっていても大丈夫。
(位置情報はとっている、とだけ言われたから、おそらくメットか槍に何か仕込まれてら。勝手にほっつき歩くのだけ厳禁なんだよな)
「なんにもおきねぇ。そっちは?」
「おんなじですねぇ」
わずか20分の昼食休憩。労働基準法なんてないからな。
俺たちは門の表裏に配属されていた。
「これって、誰もやる人いなかったらどうなるんかね?」
「どうなるんでしょうね? まあフウラ君みたいな冒険者っていう人達がやるんじゃないですか?」
昼食終了。
食ったのは濃い味付けの汁なしうどん状の麺。
野菜の炒めたやつとかがたっぷり乗っていて美味しかった。
お値段4ゴールド。約200円。(水1ゴールド別)
「お疲れ様です。こちら日当になります」
「1、2、3、4、5、6、7、8。確かに80ゴールド」
暗くなり、交代の時間。
借り物を返却し、職安っぽいところで給金を受け取る。
受け取ってその場で金額を検める。
宿へ戻り、しっかりシャワーで汗を流し、翌日。




