伝説の騎手
「週に1度、大体日曜日にグレードレースっていうレベルの高いレースが行われます。このエイチホメで年に一回しかないグレードSの"コノミ記念"、このレースがもっとも盛り上がります」
「レースにはグレードという階級があり、E、D、C、B、A、Sという格付けがなされています」
「Eには未勝利の馬が入ります。1度でも勝つとD。なので大概の馬はDランク以上ということになります」
「そりゃそうだよな。上から順に抜けてくんだから。そのうち勝てるわな」
「そのあとは雌雄、年齢、タイム、獲得賞金。これらで出場できるレースが決まります」
日本競馬にもタイム基準は足切りがあった気がするが、そう見ないような記憶だ。
「コノミは、勇者としてこの地へ降り立ち、類稀なる騎乗技術で戦場を駆け、魔物を倒した女性です」
〇国無双の主人公かな?
「現在もお子さんが騎手として活躍しています」
「いるんだ。子孫」
「はい。その方がキャビン騎手です」
それなら勝率が高いのも納得がいく。
身体能力以外にも、なにか力を持っている可能性がある。
「で、ですね、高いグレードのレースに出るような馬は騎手自身が買い取る場合があります」
「はぁ!? じゃあそいつらが競ってるだけじゃあねぇか」
「そうですね。騎手が一番お金持ちです。それが許されているのは、当然、命にかかわる事故の発生があるからです。自分の信頼できる馬でしか出ないぞ、ということ」
「まさに人馬一体。グレードSにしか騎乗しない騎手も存在します」
「すげぇ」
人生を競馬に賭けてる。
「生涯獲得賞金額こそ1位ではないのですが、上から数人はSでしか騎乗しない方々ですね」
「1位は違うのか?」
「伝説となっている"ユキオ"騎手。彼は現役、毎開催、半分以上のレースに騎乗。現役引退までの45年間、1度も怪我や病気、騎乗停止となるトラブルも起こさず、騎乗し続けました」
「その人も名前的に勇者だな?」
「そうだと思います。彼は殺生を好まず、戦うことをしないで世界に貢献したいと言っていたそうです」
そりゃそうだよな。
大抵、訳も分からず転生召喚されているはずだ。
世界を救う意思があるかどうか、本人のことは関係ないだろう。
たまたま馬に乗る天才が呼び出され、活躍したということ。




