勇者の血
「みんなそのくらいの歳で戦うのか?」
「ううん。僕は所属の中では最年少なんだって。勇者様たちの血を引いてるからどうのって、若くてもいいんだって」
「へぇ、特別なんだ」
「このカード、まっさらなこれに血を1滴たらして、自分の強さ? が浮き出れば子孫なんだって」
フウラは銀のカードを取り出して見せてくれる。
それをトニーが読み上げる。
名前に・・・・・・体力、力強さ、魔力、などなど、そこに通知表のように数字が並んでいた。
「原理はよく知らないけど、僕が強くなれば、数字も増えていくんだって」
「ホントにゲームだなあ。これって、魔力がゼロっていうのは?」
「魔法の才能っていうのは生まれつきの問題らしくて、僕の場合は無いんだって。代わりに背負ってる剣、あのくらい軽く振れるよ」
見た目だけでも金属バットをまとめたくらいの重さがあったであろう剣。
フウラはパワー型。
もしかしたら、大魔法使いなんてのもいるのかもしれない。
「僕の話はこれくらいでさ、兄ちゃん達の旅を聞かせてよ」
「いいともよ。何から話すかな・・・・・・」
思えば、奴隷として働いていたのが遠い昔に感じる。
実際には1年ほど前の話なのだが、もっと前のようだ。
「まずな、俺は家長になりたくなくて家出したんだ」
トニーが眉を顰める。
そりゃあそうだ。この世界の話ではなく、これは俺の過去の話だ。
「そんでよ、出たのはいいものの、文字も読めねぇバカなので、金もすぐになくなって、たまたま、泊った牢屋みてえな宿で、同じように家出したトニーと出会ったんだ」
「僕は家出じゃないですよ。身一つで旅してみようと思っただけです。ちゃんと家族も知っています」
話を合わせてくれるトニー。
「で、どこ行くにも、当面の金が要るっつって、無一文なのに、ヤラ場って賭場で勝負して金を作ったんだ。あれから、俺たちの稼ぎ方は決まったね」
「そこからは、毎日、サイコロを振っては、行先を決め、着いたところで賭博をし、金を作って次へ行く。その繰り返しだ」
「自由でいいじゃん。僕も大人になったらやってみようかなぁ」
「やめとけやめとけ。ちゃんと稼いだ金で、彼女と旅行に行く程度にしな」
ここで、鱒の塩焼きがテーブルへと運ばれてきた。
注文したのは俺だ。
魚をフォークとナイフで食べるのはいまだに慣れないが、仕方ない。
兄ちゃんたちも冒険者やれば・・・・・・サムはダメか。依頼表も読めないんじゃ、ねえ」
「まあいいのさ。俺たちはコレで」
そこから飯を食べ終わるまで、俺たちの道中の話をフウラにしてやった。
これからも続くであろう、旅の話。
「兄ちゃん達の話、面白かった。そんじゃ、またいつか」
俺たちは握手をして別れた。
フウラにも彼の生活がある。俺たちにも、一所に留まれない理由がある。
このまま3人で旅もいいなぁ、なんていうのは夢物語でしかない。
宿で1夜を過ごし、またサイコロで行き先を決めるのだった。




