竹馬レース
「ここをぉ、今日の寝床にしまぁすぅ」
地図の縮尺的に近いと思われた村落だったが、歩いた結果、思いのほか距離があったため、途中の森林で野宿となった。
バッグから三角形の布を取り出し、三つの角についたロープを木に巻き付けて固定する。
これで、布の下は雨が降っても大丈夫。
そして、蚊帳のようなものをさらに取り付けて完成。
「夜飯、夜飯」
少し離れた場所に、トニーがそこらから石を集めて、簡易焚火台を作る。
俺にはさっぱりだが、石の形状を見分ける技術を持っているらしい。
枝葉を集めて、マッチで着火。
火打石より遥かに高価だったが、使えなければ意味がない。
街で買った小型フライパンに、油の代わりになるという小さな種を1つ入れて、満遍なく油を敷いた。
「今日のメシは、干し肉のソテー。かったい黒パン」
「食パンが恋しいですねぇ」
「この世界のパンは全部フランスパン並なんだよなぁ」
干し肉は保存用で、味付けが非常に濃かった。
塩辛すぎ、飲み水を消費しすぎるので、そこそこの量で食べ終えた。
「さ、寝ましょうか」
火を消す前に、獣除けの葉というものを燃やし、就寝。
ものすごい臭いでもするのかと危惧していたが、無臭だった。
バッグを枕に、薄いブランケットのようなものを体に巻き付けて終わり。
「おやすみ~」
「はい。おやすみなさい」
翌日、さっと片付けて村へ。
様々な行先候補から出たサイコロの目。
この村では、なにやらお祭りがあるとのことだ。
「おっととととぉ!」
俺は練習の真っ最中だ。
明日開催の竹馬レース。
優勝賞金は、なんと1000ゴールド!
参加者は1日"ちまき"食べ放題ということで、損をすることは一切ない。
既に客入りは上々。
皆、腕に覚えがあるのか、昔取った杵柄でもあるのか、宿もなんとか取れたくらいだ。
大きな賞金を出してでも、村がにぎわうことで、活性化の効果によってプラスが出るのだろう。
「痛ぇなあ」
昔々に田舎で多少乗っていたけども、大人になって、これほどバランスを要求される乗り物に乗った覚えはない。
前傾姿勢になって、ひたすら前へと進む練習をしたが、転ぶ転ぶ。
幸いにも傷は出来たそばから癒えてなくなる。
僅か100mほどの距離を競争するのだが、数時間やった俺が完走できたのは片手で数えるほど。
正直、優勝には程遠いだろう。




