ネズミの入る穴
次は賭場の区画の中でも、比較的目立つ角の店に。
『ネズミの入る穴』
そう書かれた賭博は、カップに入れられたネズミが解き放たれ、初めにどの穴に入るかという、疑似的なルーレットのようなものだ。
穴は全部で20。
穴には数字と倍率が書かれており、ボールレースと同じように掛札を買うタイプ。
周りの賭け額を聞いていても、多くて数百ゴールド。
若い人が多く、少額のライトな賭け事の様だった。
『チューチュー』
鳴き声とともに、ちょろちょろと動き出すネズミ。
妨害できないようにようにだろう、透明なガラス越しに観戦する。
『入ったー! 7番の穴! 倍率は4倍!』
今回は比較的倍率の低い、大きな穴に入った。
(ん? ちょっと待てよ・・・・・・)
気づいたことがある。
「トニー。ちょっと外に出ようか」
「?」
疑問符を浮かべたトニーを連れて店の外へ。
もうすぐ夕暮れだ。
露店で麺をすすりながら、トニーと、さっき気づいたことの話をした。
「ありえますね。やってみる価値はある」
単純に考えるなら20分の1。
カップから、近くて大きな穴に低い倍率が付いている。
もし、穴を人間が選ぶなら、そこが低倍率になるのは当然。
雨の中、わざわざ遠くて狭い洞窟を選ばないように、近くて広いところに入るのが自然。
『入ったのは17番! 20倍だー!』
10ゴールドを、狭い15番、16番、17、18番に賭けること3回。
やはり来た。
「ネズミっていうのはさ、狭いところを好むんじゃないのかい? ヒゲがちょうどはいるくらいのさ」
そう気がついたのだ。
やることはルーレットのようなもの。
しかし、ボールではなく、生き物が絡んでいるというのが決定的に違う点。
19番と20番は狭すぎる。
近い1番から5番くらいまでは気まぐれで入ることもあるだろう。
だが、外敵に襲われない、安心な大きさの穴。
すなわち15番から18番が、もっともネズミの習性と合致している大きさだった。
「こりゃあイケるぞ」
今の賭け額は1度に10ゴールドだが、倍率の最低は15番の18倍。
毎回4カ所に賭けても、4回に1度ほど当てれば負けない。
思った通り、3回に1回は的中するおかげで、金は少しずつ増えていった。
ペースも10分に1回ほど行われる。終了時間まで粘って、200ゴールドほど増やした。




