ボールレース
「この中を行くのかい!?」
看板はあるが、狭い洞窟の中を通らないといけないらしい。
狭い隙間に体をねじ込み、バッグを引きずり込む。
入口こそ狭かったものの、中の空洞部分は広かった。
マッチをすって松明をつける。
「うぉ。すんげぇ数のコウモリ」
頭上にはおびただしい数のコウモリがぶら下がっていた。
「気を付けてください。噛まれたりしなくても、地面に落ちているフンから病気になることもありますから」
「傷口なんかないし、平気だ、平気」
ヌメリをおびた洞窟を無事抜け、地図とコンパスを頼りに、周辺最大規模の街へと向かった。
「すげぇぞ。文明を感じる!」
碁盤状に並んだ建物。
目を引いたのは、とても高い塔。
30mくらいはあるのではなかろうか?
東西南北、きちんと区画ごとに役割が決められているようで、賭場の区画もあった。
治安の良さそうな場所で宿を取った。
「今日は知らないやつ探すか」
『ボールレース』
トニーが読んだ、そう書かれた店に入る。
人はまあまあ入っていた。
まん丸の、ピカピカに磨き上げられたボール。
それが6つ。
大きさは野球ボールくらい。
ビリヤードの球のように数字が振ってあり、色も白や黒、赤や青に色取りされている。
それを傾斜のついた長いレーンの端に並べ、板で止めて置く。
「さぁ張った!」
電光掲示板のようなところに表示が行われる。
「なんて書いてあるんだい?」
「ボールに対してのオッズですね。コーナーを1度曲がるので、内枠のボールが配当低めです」
客は金網で囲われた投票ブースで、金をチケットと交換している。
どれが一番先にゴールするのか当てるようだ。
「・・・・・・しばらく"見"しよう」
様子をみることにした。
まさか1日に1レースということはないだろうし、無理に賭ける必要はない。
『ガランガラン』
ジャンがなり、今回のレースへの賭けが締め切られた。
ボールを止めていた板が上に引き抜かれ、始まった。
ゆっくりと転がりだしたボール。
徐々に加速して、コーナーを曲がる。
そして抜け出したのは3番。
4枠の3番ボール、真ん中の枠だ。
そのままゴール。
続いて2枠1番、1枠6番がゴールした。
「これ同着とかないんかねぇ?」
「あるんじゃないんですか?」
今回のオッズは2.0倍。
当たった人たちは投票ブースでチケットを換金していた。
そして俺は気づいたことがあった。




