ダーツ
「ここは会員制なので、店用の階級証明を作っていただきます。どの店舗でも証明が必要となりますので、無くさないようにお願いします」
カウンターで賭けダーツをしたいという旨を伝えると、こういう話になった。
適当に投げて、ただ勝ち負けで金をやり取りしているのではなかったらしい。
「お2人とも別の店舗で作ったりしてませんよね?」
「ああ。初めてだ」
横のトニーも頷く。
「でしたら・・・・・・ココにこれで血を1滴落としてください」
免許証くらいの大きさのカードが4枚。色は全面灰色。
それに剣山のようなものが出てきた。
どうするべきか迷っていると、
「すいませんね。痛いのはイヤでしょうが、1度やれば一生使えますので」
俺が迷ったのはそんなことではなかった。
気になったのは、ゲームの個人認証システムのように、名前や職業のようなものが出てしまった場合、奴隷だとバレて何かされるのではないかという懸念だった。
「ほら、はやくやんなさいよ。傷口には薬あるから」
エルフのリーチェは上着のポケットから小瓶を出してヒラヒラ振っていた。
仕方がないので、剣山に人差し指を当て、プツっと出た血をカードに垂らす。
横にいるトニーも同様に垂らした。
血がカードへと吸い込まれる。
するとカードが虹色に輝き、真っ白になった。
「こちらにもお願いします」
2枚目のカードにも同様に血をつける。
「はい。薬」
「いいよ。勿体ない。なめときゃ治る」
俺はリーチェの差し出した薬を断って、自分の人差し指をしゃぶった。
「僕もいらないです」
トニーも断った。
下手に傷を見せる必要はないだろう。
もう治っているのは不自然極まりないだろうから。
余計な情報を与えたくない。
「ふ~ん。まあいいわ」
リーチェはポケットへと小瓶を戻した。
俺たちにせっかくの厚意を断られたのにも関わらず、リーチェは薄く笑顔だった。
「お二人は初めてなので、白磁等級となり、掛け金は最小10ゴールド、最大で1000ゴールドまでになります」
「さあ早くやりましょう。私はこの100ゴールドを倍にして帰らなきゃならないんだから」
「・・・・・・まぁ今のは聞かなかったことにして、順番待ちですね。空いている席で練習でもして待っていてください」
番号の書かれていると思わしき札を1枚、それに金属のケースに入ったダーツの矢を10本貰って、ブースへと向かった。
ダーツブースにはテーブルとソファがあって、横のブースとは細かい目の金網で仕切られている。
「こりゃあ危ねえわ」
ケースの中には金属の矢部分に、木製の持ち手、尻の部分には鳥の羽と思われる羽が付いていた。
こう書くと、弓矢で使う矢のような感じがするが、大きさは手のひら大。
矢部分の先端が非常に鋭い感じで、触れただけで指が切れてしまいそうだ。
ブースの床には白いラインが引かれていて、そこが立ち位置らしい。
「よぅし。トニー、練習しな」
「わかってますよ」
トニーが的に向かって投げ始める。
初めは手首のスナップだけで投げていたが、やはり的が遠いようで、真ん中よりだいぶ下側に刺さっていた。
「そういやダーツって真ん中が満点じゃねぇよな?」
「たしかそうですが、的に書いてある点数的に弓道と同じような感じですね」
5本投げ終えて、トニーは的から矢を引き抜いて戻ってくる。
「ねぇ、あんたたちって随分と仲いいけど、アレなの?」
リーチェは親指を立てる。
「ちがわい」
「じゃあなんなの?」
「・・・・・・旅の仲間ってやつだ」




