農作業
どの程度時間が経ったのだろう?
寒い牢屋の中、眠ることもできずに時間だけが過ぎていった。
永遠とも感じられる一人ぼっちの牢屋での時間。
それは地上への扉が開いて、男2人が入ってきて終わった。
「朝食だ。済んだら労働をしてもらう」
格子の少し大き目に開いた場所から、簡素な食事の乗った盆が差し入れられる。
硬いパンに水。
これで終わり。
まあまあ時間が経っていると思われるのだが、俺はそれほど腹が減ってはいなかった。
とりあえずパンを水に浸してふやかして食べた。
僅か3分に満たない食事時間。
「出ろ」
鍵が開けられた。
(今だ!!)
開けた男に体当たりして外へ無理やり出ようとした。
しかし、
「跪け!」
黄色い服を着たもう一人にそう命令され、俺は激痛で倒れこむ。
そのまま俺は足を掴まれ牢へと放り戻された。
「抵抗するな」
痛みから立ち直った俺は言われた通りに牢から出る。
(とりあえず従って様子を見るか)
男たちは腰に動物用であろう鞭を下げている。
おそらく牛や馬へ使うものであろうが、俺に向けて使われる恐れも大いにある。
(あれで打たれるのは死にかねん)
首にロープ付きの枷を嵌められ、男たちに挟まれ、外に出る。
(うぉぉぉ。さみぃぃぃ)
昨日はあまりの激痛でわからなかったが、外は秋か冬かという気温だ。
男たちは防寒着っぽいものを着ている。
しかし、俺の服はボロ1枚。下着すらない。
プルプルと震えながらしばらく歩くと、一面が茶色の穂がついた畑に着いた。
「全部刈りとれ」
落ちていた小さな鎌を拾わされる。
俺はこの麦畑? で作業させられるらしい。
「俺1人で?」
「そうだ」
「あなたたちは?」
「お前の見張りだ」
なんとも非効率だとは思うが、仕方がない。
言われた通りにしゃがんで刈り取りを始める。
男たちは腕組みをして、ちょくちょく指示しながら俺の作業を見守る。
稲刈りは小さい頃にやったことがある。
その要領で日が暮れるまでひたすら作業した。
「今日は終わりだ。戻るぞ」
首の枷を引かれ、連れ戻される。
特に大きなやらかしもなかったようで、激痛が来るようなこともなかった。
牢へと戻され、朝食と同じパンと水を貰う。
労働後の食事は涙がでるほど美味しかった。
用を足し、そして寒い中、泥のように眠った。
「起きろ。昨日の続きだ」
格子の外から棒で叩かれ起こされる。
「要便させてくれ」
「早くしろ」
そうして次の日も、次の日も、次の日も、次の日も、延々と麦畑っぽいところで刈り取りをした。