意外な提案
「なぜらしいと?」
「私たちの敵だったからよ。私たちは国と冒険者連中との戦争に負けて、お情けで生かしてもらってるわけ。個人的な付き合いはあっても、中身までは知らない」
この奴隷紋の発動条件さえはっきりすれば、縛りの少ない冒険者とやらもいいかもしれない。
「私なんてまだいいもんよ。外国に売り飛ばされて、奴隷、なんてのよりはね」
奴隷。
その言葉に反応しそうになったが、気づかれなかったようだ。
「ママが、喋れるのならばウチへ来なさい、って引き取ってくれなかったら、私はこんなに自由じゃなかったかも」
「そうかい」
俺と同じような境遇の彼女。
彼女は飼われ、籠の中にいることで、生きていた。
「あなた、やっぱり訳ありなのね? ちょっと魔法の反応があるじゃない」
光る手をかざされ、何かを探られた。
おそらく奴隷紋が反応しているんだろう。
もしくは魔法の才があるとかだ。
「金を稼ぐんならね、私たちの元締めはいつでも募集をかけているわ」
「お客の?」
「違う。客をとるほう。あなたも見てくれはいいから男娼として需要があるわよ」
男娼か、考えたこともなかった。
「実は顔を知られるのがまずいんだ。無理だな」
「娼館なら問題ないでしょう? ここも大きな街だけど、もっと内陸ならバレやしないわ」
言い訳を取り繕った。
しかし、すぐにやめた。
「悪ぃ。そういうのは趣味じゃねぇ」
「じゃあ、その体を賭けてギャンブルでもしてみない?」
意外なところから待っていた言葉が聞けた。
「元締め・・・・・・ママのところで裏レートのヤラ場があるのよ。 ヤラ場ってわかるかしら?」
「わかる。やってみてぇ」
「そう。掛け金の代わりに、自分の体も担保にできるの。もちろん"コッチ"の仕事ね」
トニーに言わず勝手に決めるのもどうかと思ったが、この話を蹴るほどバカじゃない。
「私はミィコ。紹介料は300ゴールド。どうかしら?」
「受けようと思う、けどもよイカサマしてないのかい?」
「立会人がいるし、金は必ず払われる。魔法を検知する魔石もあるし、かき混ぜるのも立会人。まずないわ」
「わかった。やる」
どのみち追手に捕まれば奴隷。
勝とうが、負けようが、似たような境遇になっていくのは明白。
(なら、俺は強くやっていきたい)
彼女への連絡場所を聞いて別れた。
2日以内に確実にやるということだ。