煙草
「君は何者?」
「何者って、娼婦でしょう? この青の花柄の服はそうに決まってるじゃない」
そんなことを聞かなくてもわかるでしょ?
というような表情を浮かべる女性。
彼女は凝った装飾の青い花柄ワンピースを着ていた。
「そうなのか? あと、君は魔物とは違う?」
「この角のことを言っているのなら、そもそも人口の2割くらいは純粋な人間とは違うわ」
「でも、俺は少し旅をしてきたけど、今まで君のような容姿の子は見たことがない」
「たまたま見かけなかったんじゃない? 私たちは少し前までマトモに外で生きて来なかったから」
彼女は会話の途中から胸元のあたりをゴソゴソしていた。
秘密のポケットでもあるらしい。
そこから細い煙草のようなものを取り出して、さらにでてきた簡易的な組み立てキセル状のものに刺した。
指先で煙草をなでると煙があがった。
(俺も煙草吸いてぇなあ)
うらやましそうに見ていたのに気づいたのか、彼女は吸い口を渡してくれる。
煙を吸い込むと、体が慣れていないのか、盛大にせき込んでしまった。
フィルターもなにもない状態はきつかった。
ちなみに味はイチゴ系の甘い煙だ。
体に合わなそうなので、キセルを彼女に返して、質問を続ける。
「今使ったのは?」
「意味がわからないんだけど? ああ。魔法よ魔法」
省略しすぎた。
「私も質問いいかしら?」
「どうぞ」
「"あなたは何者"?」
「それは・・・・・・普通の人間だろ」
ここまでの経緯を彼女に話してみるか逡巡したが、やめた。
「でも、あなたは人造に間違われるほどできている。綺麗すぎる。私たちと同じくらい」
彼女のいうことは大正解だ。
世のトップスターを真似、さらに非の打ちどころのないくらい盛ったから。
「この話題は止めよう。気に障ったのなら謝るよ」
「あら残念」
こちらが金を払っている分なのか、彼女はあっさりと引いてくれた。
「話は全然違うんだが、これからの旅費が心もとなくて。身分、身元に関係なく金を稼げる方法、知らないか?」
「それならば"冒険者"っていうのが普通ね。自分の身一つで依頼をこなす。そんな人間が集まる場らしいわ」
いわゆる定職ではないような、日雇い扱いのような仕事があるらしい。
「なぜらしいと?」
「私たちの敵だったからよ。私たちは国と冒険者連中との戦争に負けて、お情けで生かしてもらってるわけ。個人的な付き合いはあっても、中身までは知らない」




