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型抜き

「・・・・・・1人30」


 今日の宿は、やたら愛想の悪い親父が受付だった。

 必要最低限の会話をして、金を払い、鍵を受け取る。

 リゾート地らしく、1件1件の住居自体が分かれているタイプの宿だった。

 これまでのは概ね簡易宿泊所といった程度だったので、値段の割にはえらく豪華だ。


「ここはレンガじゃないんだねぇ」

「海辺は塩害とかあるっていいますし、その関係じゃないでしょうか?」

「これでテレビとビールでも置いてありゃあ異世界でも言うことねえんだけどなぁ」


 ベッドに水洗トイレ、シャワー。

 木箱には緑色の瓶に瓶詰めされた炭酸水が入っていた。

 なにやら瓶に文字が入っていたので、トニーに読ませたところ炭酸水とのことだ。


「酒が飲みてぇ」

「じゃあ飲みに行きましょうよ。まさか違法でもないでしょう」

「いや、わかんねぇぞ。賭博は合法、酒は違法なんてのもあるかもしんねぇ」


 鍵と財布だけを持って繁華街へと繰り出した。

 一番端の店先にでているテントを見たところ、


「型抜きあるじゃん」


 型抜きとは、平成あたりの縁日でよく見られたものだ。

 カルメ焼きというお菓子に絵柄が描いてあって、お菓子を割らずに針でその形に綺麗に取れれば景品と交換できるってやつだ。

 失敗してもお菓子として食べられるので大きな損失はない、という手先が器用ならちょっとお得なやつ。


「僕はやったことないですねぇ。ドラマで見たことありますけど」


 とりあえず2つ買って、ついでに瓶ビールの酒も2本買う。

 一口飲んだところ、うっすいジントニックのような飲み口だった。

 せいぜいアルコール度数は5%くらいだろう。

 そして、酔ったやつなら失敗しやすいだろうということらしい。

 俺は針の先を舌で舐めてしめらせ、カルメ焼きをチクチクとつついていく。

 もちろん不正が無いように店員の見てる前でやってくれとのことだった。


「あ」


 円の端が割れてしまった。

 チラリと店員の女の子に目をやるが、手でバッテンのジェスチャーを出された。

 仕方ないので割れたカルメ焼きをしゃぶりながら、トニーが終わるまで待つ。


(すげぇ集中力だ)


 とにかくトニーの集中力はすごかった。

 やったことのある人ならわかるだろうが、少しでも力むと割れる。

 数分後、トニーの型抜きは成功したのだった。


「どうでしょ?」


 店員のジャッジはマルだった。

 抜いたのはウサギ。

 景品は・・・・・・


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