カネの価値
「うおお、どれもこれも美味そうだ」
まともな食事は数か月ぶりだ。
路上にテントが張られ、そこに屋台がいくつも並んでいた。
「肉に魚に野菜、なんでもあんぞ!」
「ふむふむ。3つ選んで5ゴールドなんてところもありますよ」
どれもこれもが異国情緒あふれる。
さまざまなスパイスの香りが混ざりあい、食欲をそそる。
「看板とか読めねぇから、注文はお前に任せるわ」
「わかりました」
ということで、気になった食べ物を買っていく。
まず買ったのは串焼き。
肉と魚、野菜の串。葉っぱの器に包んで渡された。
次に豆と、から揚げ。これは竹のような容器に入っている。
そして果物ジュース。
これはヤシの実にした。
買ったものを木製のテーブルへと置いて食べ始める。
「満腹じゃあぁ~」
「これで小さなコイン2枚。16ゴールドでしたね」
すべて食べつくして満腹になった。
日は暮れているが、いたるところに明かりが灯っていて全然暗くはなかった。
そして、買い物をしてわかったのは、小さなコインのお釣りには、さらに色の違う小さなコインがあったことだ。
「あとは寝る場所があれば完璧じゃないか?」
「そうですね。・・・・・・すみません宿ってどこにあります?」
トニーは食事のゴミを捨てるついでに、宿の場所を聞いていた。
「値段までは把握していないそうですが、街の外れに安い宿があるそうです」
「よぅし。そこへ行こう」
そうして歩くこと10分少々。
着いた宿の値段は全室20ゴールド。
おそらく観光地であろうに、とても安い。
と言っても、格安宿だけあって本当に寝るだけの部屋だ。
当然異世界にエアコンなんてものは無いし、トイレも共用だった。
「これ、鍵かからねぇじゃんか~。大丈夫か、おい」
「まあ牢屋のほうが安全ではありましたね」
部屋の鍵は壊れていて、無施錠状態。
旅館などにありがちな金庫なんてのも当然無い。
仕方ないので、現金はズボンのポケットの中だ。
「死ななきゃ平気だ。また鉄砲すりゃいい」
「次は僕がやりましょうか?」
「いや、いい。お前が死んだら俺が困る」
特に何もなく、翌朝。
粗末ではあるが、服屋で清潔そうな上下を中古で揃えた。
首元の奴隷紋を隠すため、茶色のストールも買った。
お金を入れておくための巾着も2人分買った。
そしてバッグ。
サイコロも1つ。
「もし、追手がいるならば逃げるのに合理的なことをしていると思うはず。だから、あえて天に身をまかせて旅をしようと思う」




