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攻防

(わかんねぇ・・・・・・)


 手は鳥2、ドラゴン2、人1、盾1、槍1、白1。ツモは馬だ。

 防御するのにどれを残せばいいのかよくわからなかった。

 さっき点数の内訳を聞いておけばと後悔した。


(白髪の態度的に安い上がりだったはず・・・・・・)


 ならば、きっと魚や白は振っても安いと思われる。

 ドラゴンはきっと高いだろう。強そうだし。

 場はよどみなく進行していく。

 テンパイできずに山はあと3つ、6枚。

 すると、トニーからサインが来た。

 手で槍だか剣だかを作っている。

 バレバレのサインだが、この卓で視界に入るのは俺だけだ。


(危険牌は剣か槍。親だが降りだ)


 1向聴イーシャンテンだが、もう厳しいので流す。


「残りは槍だ」


 誰もあがれず山がなくなり流局。

 対面の爺がテンパイ。


「他に居ないかい? なら10ゴールド寄こしな」


 俺を含めた3人は小さいコインを支払う。

 そして、また牌を混ぜて山を組んだ。

 3局目、親は白髪。


(ううむ。微妙だ)


 俺の手は、魚が2枚、あとはバラバラだ。


(国士無双のような手は・・・・・・)


 国士無双というのは、特定の牌を全部1枚ずつ揃える手だ。

 しかし、ルールが書いてあるだろう壁紙にはバラバラの手は乗っていない。


(あくまで3枚ずつか。しかし、ここと次を乗り切れば金は手元に残る・・・・・・)


 俺は相手の手を読むことに専念することにした。

 とにかく振り込まないこと。

 麻雀と言うのはあがれるのは基本1人だけ。

 他の3人は負け。

 つまり、確率の上では、1度あがった俺はしばらく無理でも仕方がないのだ。


「・・・・・・兄ちゃん、ずいぶん慣れてんなぁ?」

「そうかい? コレは初めてなんだがなぁ」


 学生の頃にそれなりに卓を囲んだ経験はあった。

 既に自動卓が主流だったので、積み込みとかはできないが。

 7巡目、爺の番。

 爺のポロっと捨てた盾に白髪が、


「それだ、爺さん。ちょっとたけぇよ」


 白髪が牌を倒す。親の出あがりだ。


「・・・・・・ほれ240」


 白髪と爺の金のやり取りが終わり、次は爺の親番で最終局だ。

 次を乗り切れば、100ゴールドという金を持って抜けられるかもしれない。

 

(なんだ? 牌の流れ方が違う?)


 今までと混ざり方が違う。

 ふと見ると、白髪が表を確認しながら必要牌だけを爺の山に送り込んでいるようだ。

 並みの手さばきではない。プロのそれだ。 


(爺、積み込んだな!?)


 おそらく天和てんほうのような役でもあるのだろう。

 最後の最後に仕掛けてきた。

 しかし気づいたときには山は完成してしまった。 


(無理、無理、無理、無理、無理だ)


 止める手立てなどなかった。

 あとは賽を振られたらお仕舞だ。

 プロが振る賽は100パーセント。間違いなど起きない。

 心臓が喉から飛び出そうだった。

 爺の手から賽が振られ、宙を舞い、場に転がる。


『パァン』


(今だ!!)


 みなの目線がカウンターから落ちたガラスのコップに注がれている中。

 すかさず俺は音もなく賽の目をずらした。

 全員の視線が卓の賽へと戻ってくる。

 

「・・・・・・」


 爺は無言だった。

 白髪も少し顔をしかめたように見えた。

 それだけの出来事だった。

 ゲームは何も起きていないかのように続行される。


「アガリだ」

「・・・・・・8点だな。20の40」


 山を取る順番をずらした結果、俺が有利となり最後もツモあがることができた。

 この結果、全部で190ゴールドを手に入れた。


「あんがとな。楽しかったよ兄ちゃん」


 コインを受け取る。

 意外にも、負けた爺は笑顔で俺を抜けさせてくれた。


「トニー、お前よくわかったな」

「まあ。念のため構えてたんですよ」


 コップを落としたのはトニー。

 でないとあんなに都合よくいくわけがない。

 命を掛けた賭博で得られた金は、札が1枚に、小さなコインが9枚だ。 

 この190ゴールドというのがいかほどなのかはわからない。

 まさか190円相当という訳ではないだろう。

 俺たちはヤラ場から出て、腹ごしらえをすることにした。



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