転生
俺は死んだ。間違いなく。
普通に生き、そして27歳で不慮の事故で死んだ。
しかし、現在俺は次の人生を決める空間にいるらしい。
目の前には美人の女神を自称する女性がいる。
「あなたは次の生き方を選択することができることになりました」
だってさ。
俺は現世に未練はあった。
そりゃあるでしょ。27歳だぜ? 生まれ変わりはもう一回人間だ。
そんで今は生まれ変わった先の容姿を決めるところだ。
「あなたの前生きていた世界よりずっと遅れた文明。そこに記憶はそのまま、あなたの好きな容姿で、そして新たな能力付きで生まれ変わって生活できます」
こう言われて断る人間などいるのだろうか?
生まれた瞬間から何の心配もなく最高の状態が約束されている環境。
俺は何も考えずに二つ返事で承諾した。
(もちろん顔はこれでもか、というくらいのイケメンだな)
ゲームのキャラクリエイトの要領。
福笑いみたいな感じでパーツを組み合わせて、次の俺になる顔を決める。
(待てよ・・・・・・女になるのもありか?)
少し思案したのちに、
(イヤ、せっかく記憶を保持できるのなら男でいこう)
そういうことで、時間にして数日くらいじっくりかけて色々いじくった結果。
金髪で肌は白く、青い目に細身で高身長。
目鼻立ちもはっきりしていて見るからにモテそうだ。
ゴリマッチョ系も考えたが、やはり万人受けするタイプの感じにすることにした。
(よし。これが俺の新しい身体だ)
前は平々凡々の容姿だったし、どれだけ欲張ってもいいのだから限界まで格好よくだ。
ひとまず俺の考えられる中で文句のつけようのないできだろう。
というか、ほぼ若かりしブラッ〇・ピッ〇になった。
「容姿はそれでよろしいですか?」
タブレットを後ろから覗きこまれて、女神にそう問われる。
「ええ。これでいいです」
「他の部分も好きに選択してください」
そう言われて、俺は他にもたくさん選択できる項目があることに気づく。
声、髭の濃さ、歳をとったときの変化などなど。
(声も大事だよな。全然印象が変わるし)
今、選択していることは、すべて現代で使われているタブレットのようなものでゲームのキャラクリそのままのことをしている。
声もなぜかサンプルが用意されている。
(少し低めのさわやか系の声だな)
しっかり抑揚のついた、さわやか系のお手本のような声。
これを少し低めに調整して好みの声にした。
こういった細かい調整を複数行って、できた俺はこんな感じだ。
『映画で主演ができるような金髪碧眼色白細身高身長で声は低音さわやか系髭は生えず年をとっても見た目はほぼ変わらない男』
完璧だ。これ以上ないくらいに!
「では新しい世界へ転生する前に、この中から能力を決めましょう。次の世界は、あなたの居た世界でいうところのファンタジーゲームのような場所です」
タブレットに大量の能力が表示される。
(どれを選んでもチートクラスの能力だ・・・・・・)
無限の魔力に、あり得ないほどの怪力、使いきれないほどの金持ち、周りでどんなことが起きても死なないような幸運、他。
正直どれでもいいくらいだ。
結局選べなかったので女神にオススメを聞く。
「どれがいいすかね?」
「そうですね・・・・・・あなたは前世でどんな未練がありました?」
「事故で死んだので、次は寿命で・・・・・・」
「それなら豪運ですかね。とても運がよくなります。理不尽なことはまず起きません」
「じゃあそれで」
という感じで、ついに次の世界へと旅立つときが来た。
「記憶を保持するため、あなたは20歳の状態で転生召喚されます。そこからは自由。勇者として各地を旅してもよし、僻地でスローライフを送ってもいいです」
もっと幼い年齢で神童と呼ばれるのも悪くないが、まあ20歳でも構わないだろう。
「それと、ちょっとやそっとのことでは怪我をすることもない程度には体が強化され、飲食も少なくて済みます。あなたの次の人生が良いものでありますよう」
その言葉が終わると共に視界が暗転する。
すると、足元の感覚が冷たい石畳になった。
足元の床には赤い染料で紋様が描かれている。
俺は全裸の状態で魔法陣の真ん中に召喚されたようだ。
周りには黒いローブに身を包んだ人間が数人いる。
更にその周りには一般人だろうか、安っぽい麻の服を着た人間が多数いた。