◆第二章㉘ 乗り越えた先へ
俺達は崩れた岩の陰からベルセルクの亡霊を見ていた。
「あの青白く光る文字が刻まれた石碑がある場所は、安全地帯なのかと思ってた……」
「確かに、結界石には強力な魔除けの魔霊石が使われておるから、魔物を寄せ付けないはずじゃ。しかし、亡霊は別……という事じゃな。トロールのような人型の妖精タイプも入って来れるかも知れんが、幸い岩が崩れて入口が狭い。中までは追って来んじゃろう」
「ビ、ビトは亡霊の倒し方、わかるの?」
「倒し方……倒し方か……今はない」
「えっ⁉」
「ワシの目的はあくまで探す事。倒す方法と呼べるのかわからんが、封印する手段をヴィルヘルムが持っておる。要するに、ワシは探りに来ているだけなのじゃよ。兎に角、ここを通らないと、出口には行けん……どうする?」
その時、「ハッ‼」と、ビトが目を見開いて振り返った。俺達も振り返る。
ドスンドスンドスン……
トロールが近付いて来る音が響いてきた。
「マズいぞ! 見つかる‼」
ビトが小声ながらも叫ぶように言った。
「ねぇ、この先が出口なんでしょ⁉」
「そうじゃ‼」
「走り抜けよう‼」
なんと、ブラダが驚くべき提案をしてきた。
「え⁉ え? 本気⁉」
「亡霊は攻撃して来ないかも知れないけど、トロールは絶対に攻撃してくるよ」
そうだ。ブラダは以前のレイリアと共にトロールの襲撃を受け、恐ろしさを痛いほど味わっていたのだ。
「俊敏魔法を使おう」
俺が提案し、2人とも頷く。
「風の精霊よ……、大地の束縛を断ち切り、風の衣の紡ぎ手となりて、疾風の躍動を我が身に宿せ! ヴァロア・ソーマ‼」
俺は俊敏魔法『ヴァロア・ソーマ』をみんなにかけた。ポゥッと朧げな光に包まれる。
「よし……、覚悟を決めるのじゃ。行けそうか?」
俺とブラダはコクンと頷く。ブラダがアルルを抱きかかえた。
ドスンドスンドスン……
「グォウゥオウゥ……‼」
後ろから迫るトロールが唸り始めた。気付かれたかも知れない。
フロア内のベルセルクの亡霊は静止している。
「よし! 行くぞ!」
ビトのかけ声と共に、ベルセルクの亡霊がいるフロアを一気に駆け抜ける‼
ビト、俺、アルルを抱えたブラダは俊敏魔法『ヴァロア・ソーマ』で身体が軽くなり、フワッと風のような軽さで一気に奥の通路に走り抜けようとした。
まだベルセルクの亡霊は静止している。
その時、トロールがフロア前の崩れた扉から顔を覗かせ、何か叫んでガンガンと叩いたが、崩れた扉から入る事ができずにいた。
「グゥルルルルルルルルル……」
ベルセルクの亡霊がトロールに気付き、ゆっくり歩いて行くように見えた。しっかりと脚を使って歩いている。
「良かった……向こうに行った! 今のうちに……」
と思った矢先、ベルセルクの亡霊は振り向いて、ライオンのような咆哮を上げた。
「ガオォオォッ‼」
全員、目を真ん丸にしてビビり散らした。
「ヤバいッ‼ 逃げろッ‼」
俺は思い切り叫び、ブラダの手を引いて一気に走り出した。その時、ビトがベルセルクの亡霊に立ち向かおうと構えた。
「ビト‼」
「ビトさん!」
「良いから、先に行け‼ ワシが食い止める‼」
「ビトさん‼」
「ブラダ! 行くよっ‼ ビトさんの気持ちを無駄にしちゃダメだっ‼」
俺は再びブラダの手を引いて一気に走り出した。
ビトが大きなナイフを抜き、構える。しかし、ベルセルクの亡霊は、ビトに目をくれず、突風が吹くような「ゴォッ‼」という音を立て、俺達を追って飛んで来やがった!
「何じゃとっ⁉」
虚を突かれたビトは逆にベルセルクの亡霊を逆に追う形になった。
「きゃぁああぁあああぁ‼」
ブラダが絶叫を上げた。
もはやベルセルクの亡霊の脚は炎のように燃え、「如何にも亡霊!」といった形だ。
ベルセルクの亡霊が大きく口を開き、鋭い牙を見せつけ、爪を振りかぶって俺に狙いを定めて来た‼ 「何で俺なんだよぉおおお⁉」と心の中で叫んだ。
「うわぁあああああああ‼」
俺は恐怖で思わず目を瞑って叫びながら、自分自身が使える最強の魔法、中級火炎魔法『エルド・ヴラム』を無意識的に無詠唱で発動した。
ゴォオオオオォッ‼ エルド・ヴラムの火炎が燃え盛る。
「うおぉっ⁉」
ビトは慌てて横っ飛びして避けていた。ごめんなさい‼
幸い、エルド・ヴラムは上から覆い被さるように襲ってきたベルセルクの亡霊を狙って、〈斜め上〉に撃ち出されたため、追ってきたビトには当たらなかった。
――通常のエルド・ヴラムと、エルド・ヴラム・スフェイラは発動した時の形状が異なる。後者のスフェイラは、球状になった炎の塊だ。火炎弾を撃ち出すため、ピンポイントでの攻撃力が高い。一方、通常のエルド・ヴラムは火炎放射に近い。的を絞り切れない時に効果的である。
エルド・ヴラムの火炎放射は、トロールが悠々と通れる程の高さのある天井まで届き、天井にまで張り巡っている木の根や蔦を焼いてしまった。
それはつまり、ベルセルクの亡霊に直撃しなかったのだ。
それとも亡霊には効かないのだろうか?
しかし不思議な事に、ベルセルクの亡霊はそのまま消えてしまった。
「ど、どこに行ったの? 隠れられたり、回り込まれていたら、厄介だな……」
俺は周囲を見回した。
「ふ~む……何故だかはわからんが、ベルセルクの亡霊の気配は消えた。隙を見て襲ってくるという事もなさそうじゃ……」
ビトがナイフを鞘に納めながら、ゆっくりと近付いてきた。
俺はいつも以上に力を発揮し、明らかにこれまで以上の高威力の火炎魔法を発動していた。もしかして焼き尽くしてしまったのだろうか? しかし、全く手応えはなかった。この場にいた全員が、エルド・ヴラムの火炎放射の勢いに驚き、その瞬間に亡霊は消えていたのだ。
そもそも俺は目を瞑ってしまったしね……テヘッ。
「よもやよもや……じゃったのう……。怪我はないか?」
ブラダが「は、はい。大丈夫です」と言った。
「ごめんなさい……さっきはエルド・ヴラムを当てそうになって」
俺は手を合わせて頭を下げ、謝罪した。
「良い良い。しかし、もし直撃していたら、レベル差に関係なくダメージを負うところじゃった。素晴らしい火炎魔法じゃったぞ」
「すみません……」
「レイリア、さっきのエルド・ヴラム凄かった! あんなに凄いの初めて見たよ⁉」
ブラダはそう言ってくれた。つまり、以前のレイリアより強力な魔法を発動できたって事か……? 火事場の馬鹿力ってやつかな?
「ン~! ン~!」
アルルも興奮して飛び跳ねている。
「おい。不幸中の幸いってやつじゃ。そこを曲がれば、もう出口じゃぞ」
そう言えば、「ザァアアアアア……」と、水が大量に流れる音が聴こえるし、通路の奥はほのかに明るい。外が近いんだ。
「ほれ見ろ」
通路を曲がった先、そこは滝の裏側だった。滝の裏側に隠された通路。出入口か。
「外だ‼」
俺は興奮のあまり、みんなを置いて滝の裏まで走った。
「ブラダ~! アルル~! 早く早く~っ‼ ビトも! ほらっ‼」
俺は子供のようにはしゃいだ。他のみんなにとっては当たり前の光景なのだろう。俺だけが異常にテンションが上がっていた。
それはそうだ。俺は初めてこの世界の外に出る。遂に、俺の真の冒険が始まるのだ。
最終的には縛りがありつつも、【主人公が圧倒的な強さで無双する物語】です☆
ゲームやアニメのアニメーション経験者ならではのアクション描写にご期待下さい!
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