◆第二章⑨ 矢文鳥 その2
ジョナスの酒場に矢文鳥が飛んできて、店の入口の看板の上に留まった。
「ジョナス! ジョナス!」
その声を聴いて、ジョナスがドアを開ける。カランカランとドアのベルが鳴る。
「はいはいはい……と。誰からの矢文鳥だ?」
「ブラダ! ブラダ!」
そこに、ハーディーが到着した。
「ジョナスさん!」
「おっ、ハーディーか。パトロールは終わったのか?」
「あぁ、でっかい獲物が獲れましたよ。それよりその矢文鳥、俺にも聞かせて下さい。何か、嫌な予感がします」
「嫌な予感……あぁ、それなら私もだ……ブラダからの連絡だ。一緒に聞いてみようじゃないか。鳥さん。こっちにおいで」
矢文鳥は送り主と受け取り主の言う事を素直に聞くようにできている。ジョナスが腕を出すと、矢文鳥は素直に腕に留まった。
ジョナスがハーディーを店内に招き入れると、酒場の客の視線がハーディーに集まる。ハーディーの事を快く思っていない者もいるのだ。それは彼へのやっかみである。
傭兵団『シルバー・ウルヴス』で最年長のロンバルトがハーディーを睨みつける。髭を生やした屈強な戦士で、こめかみに目立つ傷がある。
「これはこれは『ファルコン・ハーツ』のハーディーさんじゃねぇか」
『ファルコン・ハーツ』とは、ハーディー一行のクラン名として登録されている名称だ。彼はハーディーの事が気に入らないようだ。彼の仲間の女魔法使いのメリッサもハーディーを見ているが、全く違う感情が籠められた熱視線。そういう事もあり、気に入らないらしい。
「チッ」
ロンバルトは舌打ちをした。
ハーディーはそういった視線は気にも留めなかったが、銀色の鎧兜で身を包んだヴィルヘルムの事は気になり、チラッと見た。ヴィルヘルムもハーディーを気にしていた。
ジョナスがハーディーを店の奥にある事務室に通し、矢文鳥を止まり木の上に乗せる。矢文鳥は指示があるまで静かにできるのだ。
「どうぞ話して」
ジョナスがそう言うと、矢文鳥からブラダの声が響き渡る。
「パパ! 三日月遺跡でレイリアが倒れたの! 助けて!」
「な、何だと……⁉ 何で三日月遺跡なんかに……こうしちゃおれん……!」
ジョナスが立ち上がるも、ハーディーが手を出して止めた。
「待って。ジョナスさん。これは危険な任務になる」
「そ、そんな事はわかっている! だが……」
「さっき倒した獲物は魔狼です」
「な⁉ ま、魔狼だと……どうしてそんなヤバい魔物が……」
会話中、矢文鳥が再び叫ぶ。
「パパ! 三日月遺跡でレイリアが倒れたの! 助けて!」
「鳥さん、メッセージは届いたよ。お帰り」
ジョナスがそう言うと、矢文鳥はただのリモンペリコに戻って、窓から飛び去って行った。それを見届け、ハーディーが緊張した面持ちでジョナスに語りかける。
「何かが起きてるんですよ……。行商から聞いた話ですが、最近、この辺りを悪名高い『蛇』の連中がうろついているらしい。そいつらが魔人……そして魔界との関わりがあったとしたら……」
「魔人に……魔界だと……」
ジョナスは怯えた顔で冷や汗をかき始めた。
「まさか……、ターゲットはレイリアか……?」
「あぁ、その可能性も否定はできないすね……」
「ど、どうして……」
「それがわかれば苦労はしないすよ。とにかく、今のジョナスさんのレベルじゃ無理ですから。ここは俺達でどうにかします」
ハーディーは生意気な事を言っているようだが、事実なので反論の余地はない。ハーディーの強さはハイマー村、いや、この大陸でも屈指の強さだ。それは疑いようがない。
「わ……わかった。今の私が出向いても、足手まといになるだけかも知れん……。それより、『蛇』の連中がうろついているなら、村の防備を固めないとな……私は村長に掛け合う事にするよ。早速新しい依頼書も作らなくては……」
「それがいい。俺は早速、捜索に出る事にしますよ」
「あ、あぁ。頼むぞ! 気を付けて行ってくれ‼」
ハーディーが事務室を出て行こうとしたが、振り返って戻って来る。
「どうした?」
「霊薬あります?」
「仕方ない。今回はタダでやるよ! ラスイチだ」
「あんがとっす!」
ハーディーはジョナスから霊薬を受け取り、駆け足で飛び出して行った。
「こうしちゃおれん!」
ジョナスは慌てて酒場に戻って、客に事情を説明した。
「おぃ、何であの野郎……ハーディーに任せっきりなんだ? 依頼書を出してくれよ」
傭兵団『シルバー・ウルヴス』の赤髪の女戦士、マイラが食い気味に言った。尖ってツンツンとしたボリュームのあるショートの赤髪だ。
「……しかしな、ブラダとレイリアの事を君達はよく知らんだろう?」
ジョナスは知っている。彼女達の実力がハーディーの足下にも及ばない事を。それに、街から派遣されて来た傭兵達には三日月遺跡までの険しい道程は厳し過ぎるのだ。そして何よりも、レイリア達の足跡魔法を追う事ができないから足手まといになるだけだった。そのため、捜索よりも村の防衛に回した方が良いと考えていた。
「あたしらだって少しは力になれると思うけどな……」
マイラだけでなく、客の傭兵達は不満そうだが、『ノーマッズ』の3人はあまり気にも留めていない。
ヴィルヘルムは壁にかけていた武器を持ち、金を置いて無言で店を出て行った。
「とにかくすまんが、今日はもう閉店だ!」
ジョナスは店の入口の看板を、この地域の文字で『閉店』を示す看板に変えて、村長の邸宅に急いで向かう事にした。
最終的には縛りがありつつも、【主人公が圧倒的な強さで無双する物語】です☆
ゲームやアニメのアニメーション経験者ならではのアクション描写にご期待下さい!
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