そして、陽は闇に包まれる
どうも皆様、泥陀羅没地です。
一週間前に私が始めたゲームを覚えていますでしょうか?。
一週間にどれだけ投稿出来るのか、と言う企画でしたが、その結果は何と"9話"。
個人的には、その2倍は行きたかったのですが……残念な事に、予定外の急用と執筆中にサイトを閉じてしまうと言う凡ミス(バックアップ出来ていない)により、この様な結果に……。
しかし、結果は結果、変えようの無い事実です。
次に同じ事をする時は其の辺を対策して挑みたいと思います。
あの野郎……粋な事をしてくれる……。
「『さぁ、狂宴に募るる幾万の参加者、五匹の客獣、四の騎士……ゲームを盛り上げろ、〝俺〟から言う事はただ1つ……〝好きにしろ〟』」
折角だ……どうせなら、派手な幕開けとしよう♪
ハデスがそう言いながら、声を紡ぐ。
「〝魔造偽龍炉〟……〝起動〟」
その言霊に応じて、ハデスの身体から、莫大な……件の竜王を遥かに上回る魔力が流れ出す……まるで、一時の頂きへ足を掛けたプロフェスの様な、そんな人ならざる魔力の波が。
「〝偽る者、形無き者、虚ろの道化、愚かな王者〟」
プロフェスの魔術は、このイベントにおいて、途轍もない効果を示した、幾万の群れを掃討する……〝混沌の暴威〟でもそれ自体は成せるだろう……時間さえ有ればだが。
「〝我は象る者、再現者、改変者……全と一を併せ持つ者〟」
今回の獣災はただでさえ不確定要素の多い物だ、同一で異なる異形達、裏で糸を引く黒幕とその配下、下手な長期戦はそれこそ不利となる。
プロフェスのあの能力は、本来は別の魔術に用いる腹積もりだったのだろう、全魔力と、数ヶ月の魔力を前借りして放つ術の強化……それが最も効果的なのは単一の魔術、あの様な、量の術では無い。
「〝怨火の十剣、毒水の百矢、病風の千槍、穢土の万斧〟」
だが、アレは此度の獣災の危険度を理解し、その力を、獣災の処理に割いた……後に続く者達を信じて。
「〝影間より来たれり、我が具装よ〟」
幾千の、幾万の、幾十万の魔術の武器として獣災へ放った……。
「意趣返し……いや、少し違うな……パクリ、オマージュ……模倣……〝改造〟……そんな所か?」
その、プロフェスの魔術は、悪意に侵され、その在り方を歪められ、今、人へ刃を向けた。
「さぁ、音楽を鳴らせ……宴には耳遊ぶ歌が必要だ」
指鳴りと共に、魔術の武装が飛翔する、そして。
血を撒き散らした。
肉を砕いた。
骨を擦り潰し、臓腑を切り刻み、悲鳴と恐怖が耳に響いた。
壁の外で厄災を迎え撃たんとした、守護の者は、老若男女、青熟問わず、尽くが屍と帰した。
「クフフッ♪……フフッフハハッ、アッハハハハハハハハハハッ、良いッ、やはり人の恐怖の声は何時聞いても愉快だなぁッ!」
……しかし。
「お前達の絶望はまだ先だ……その悲鳴は、籠の中の鳥が奏でる物だ」
――ブブッ……キィン――ッ――
「『それでは、第二幕の開始に乗じ、ステージを変更しよう♪』」
荒野を、異形の群れが埋め尽くす。
「『人魔入り乱れる地獄に選ばれたのは、王都サクリスク、鳥籠は壊された、安寧は混沌に、希望は絶望に、生は死へ……そして全てを、お前達の総てを蹂躙する、恐れ震え、座して祈れ……お前達の神は、はたして助けてくれるかな?』」
●○●○●○
「此処が……〝聖域〟」
「その通りです、選ばれた者にのみ、立ち入ることが許される聖域、我が神の命により、貴方を連れて参りました」
城壁が崩れる少し前……アーサーは聖皇国の神官に連れられ、大教会の地下を進んでいた。
導かれたのは、白い、それはもう白い空間、其処には金の意匠が掘られた石柱と、大きな女神像、そして地面に描かれた奇妙な魔術陣が有った。
「陣の中で祈り、神へ呼び掛けて下さい、私の役目は此処までです」
そう言うと、神官の男は部屋を出て行く。
「祈り……か、初めてやるな」
戸惑いながら、アーサーは陣の中央に膝を折り、腕を組み祈祷する。
『良く、来てくれました……守護者アーサー』
「ッ!?」
そして、それは美しい声と、思わず膝を付いてしまう程、清らかな力の奔流により妨げられた。
『私は、善神アフラーマ……守護者アーサーよ、良く聞きなさい』
「はい」
アーサーのその声を聞き、善神は曇らせ語り始める。
『今、この地に獣災が起きていることは知っていますね?』
「はい、それを止める為に……ハデスの悪行を裁くために、僕はこうして来たのですから」
『……そのハデスは、悪神アーリーユの命によって、世界の破滅を呼び込もうとしています、このままでは世界が歪み、崩壊してしまうでしょう』
「……」
『守護者アーサー、貴方にハデスの消滅を依頼したいのです』
アフラーマがそう言うと、アーサーの眼前にウィンドウが現れる。
―――――――
特殊クエスト
【ハデス討伐】
世界の崩壊を目論む悪神の手先、ハデスを討伐して欲しいのです、報酬は心ばかりですが用意します、どうか、貴方の手で世界を救って頂きたい。
報酬:???
―――――――
「アフラーマ様、申し訳有りません……僕はハデスに勝てない」
アーサーは悔しそうに口を噛み、続ける。
「ハデスは尋常ではない、化物です……僕の今の力では、勝つ事は出来ないかと」
『安心して下さい、貴方には、私の力の一片を与えます……ハデスに対抗出来るのは貴方しか居ないのです』
アフラーマはそう言うと、アーサーを見据える……そして、アーサーは少し目を閉じ……そして、真っ直ぐアフラーマを見据える。
「……承りました、必ず、ハデスを倒してみせます……!」
『クエストを受諾しました!』
『感謝します、守護者アーサー……では、受け取りなさい』
女神我そう言うと、女神から淡い小さな光が生まれ、アーサーへ溶け込む。
『職業【勇者】が【女神の使徒】へ変化します!』
『新たな能力〈覚醒〉を獲得しました!』
『固有能力〈???〉を獲得しました!』
『新たな称号〈女神の使徒〉を獲得しました!』
『〈女神の祝福〉が〈女神の寵愛〉へ変化します!』
「コレは……凄い……力が溢れて来る……コレなら」
『御行きなさい、貴方の手で、世界を救うのです』
「お任せ下さい、必ず……必ず役目を果たしてみせますッ」
それだけ告げると、アーサーは光となって消える。
『……フフフッ♪』
残ったのは、女神の笑顔を貼り付け、憎悪に燃える醜悪な女だけだった。
○●○●○●
そして、時は戻り……。
「ひ、ギャアァァァッ!!!」
街は地獄と化していた、街に住まう者達の悲鳴、獣の嘲り、身体を八つ裂きにされた男、首を引き千切られた女、毒に侵され死んだ赤子、獣に身を喰われもだえ苦しむ童達……そして、それを見て尚、獣に歯が立たず、蹂躙される守護者達。
「あ、嗚呼……神よ、どうか我等を救い給――」
「嘘よ…こんなの、悪夢だわ……」
良い絶望だ、良い憎悪だ。
「ハデスーッ!」
街道を歩いていると、横から守護者の男性が飛び出す……ふむ、憎悪は良し、装備の質は良い……だが。
「中身が伴っていないなら、話にならんなぁ」
――パチンッ――
「ガァッ!?――ゴッ……」
指を鳴らすと共に、影から触手が現れ男の腹を、喉を突き抉り、そのまま引き裂く……飛び散る血液が石畳を赤に塗り替えて行く。
「あ、悪魔め……貴様、呪ってやる……呪ってやるぞォッ」
「へぇ、それは愉しみだ、是非呪ってみてくれ……それじゃあな」
瓦礫に埋もれ、俺を睨み呪詛を吐く神官に蟲の群れをけしかける……虫の肉を千切る音と、悲鳴が響き渡り……場を離れて5分後に、その悲鳴は途絶えた。
「う〜ん……被害は建物が四割……人間が六割か……」
「……居た」
――キィンッ――
「「……あぁ、久しぶりだな……ニノ?」」
「ん、久しぶり……ハデス……名前覚えてくれてた」
取り敢えず縦に裂かれた頭を戻し、眼前の和装の少女を眺める……アレからだいぶ経つ……随分と強くなったな……コレなら壊れなさそうだ……しかし。
「悪いが、今お前に構ってる暇はない……〝セレーネ〟」
俺が喚ぶと、影から1人の女性が飛び出す。
「応ハデス……急に呼んで何の用だ?」
「雑魚ばかりでは飽きたろう、コイツと遊んでやれ」
「んぁ?……へぇ?……こりゃ良いな、楽しめそうだ」
セレーネが好戦的な笑みを浮かべ、対するニノは顔を冷たくする。
「私は、ハデスが良い」
「それは悪いなニノ、それはまだの機会にしてくれ」
「嫌」
――ギィンッ――
「聞き分けのない娘だ」
ニノの刀を掴み、動きを止める。
「今やる」
「断る」
掴んだニノを、セレーネの方に投げる、そして。
「〝呪印片生檻〟……セレーネ倒せたら来ると良い」
それだけ告げて、俺は大通りの先の、大教会へ向かう。
●○●○●○
「……むぅ、逃げられた」
和装の少女、ニノは暗い闇の奥に消えたハデスを見ながら、頬を膨らませる……そして、観念したのか、赤髪の美女を見据えた。
「あのタラシ野郎、また女たらし込んだのか……節操無しと言うか、無責任と言うか……」
「………貴方」
――ギィンッ――
「ハデスの何?」
「あん?……一応部下だな?」
ニノとセレーネが剣と篭手を打ち鳴らし合い、問答する、するとニノはその答えに、僅かに口角を上げる。
「そう……なら、私が先」
「……何が言いてぇ?」
――ギィンッ――
「私はハデスの友達、部下よりも親密」
「……」
「この差は大きい」
「……成る程、つまりお前は――死にてぇのか」
――ドゴンッ――
ニノの挑発に、セレーネが青筋を浮かべる。
街の大通りに突如現れた黒いドームの中で、美少女と美女の〝殺し合い〟が始まった。
「匂う、匂うなァ…神臭い」
大通りを闊歩する、黒服の仮面を着けた男は、道化の仮面越しに、目を爛々と輝かせ、道の先の大教会の……其処に聳える女神像を睨んでいた。




