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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第六章:盲信は鏖殺に帰す
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聖戦は転じ狂宴と成る

竜が炎を纏った……それが何を意味するのか。


「厄介なッ!」


三郎丸が投げた石がグズグズに溶ける……竜が大地を踏む度に砂は硝子となり、石は赤く赤熱する。


「息吹を吹くことは無くなったが、変わりに纏った炎が厄介極まるのうッ!」

「グルァ!」


そして、暴れる竜のその腕は更に速度を増す。


炎を纏った一撃はそれだけで致命傷と成り得る力を持っていた。


「さて、どうするか……」 


三郎丸はそう呟き、竜を見据える……。 


(厄介じゃのう……あぁも強い炎を纏われると剣が溶けてマトモに斬れん……全然止まる気配も無いしのう……)


――ドガンッ――


(相手は遥かに強い肉体、儂は武器がなければマトモに戦えん……武器が要る、それもあの炎で溶けず、あの竜の鱗に傷を付けられる物が……)


――……こ……――


「ッん?」

「グガァッ!」


――ドォンッ――

――こ……だ……――


「何じゃ……アレ?」


竜の纏う炎の中、とある一点……恐らくは竜の心臓部に、赤色では無い、仄明るい光が見えた。


『此処だ、死運びの担い手よ』

「アリャぁ……剣かッ!」

『我を抜け』


その言葉を聞き終えるより早く、三郎丸は駆ける……。


(喋る剣ってのも気になるが、今はどうでもいいわッ!)


今必要なのは、竜の熱で溶けず、竜の鱗を切れる刃。


――ジュウゥゥゥッ――


「ぐぬぅぅッ!」


竜に近づくに連れ、竜の攻撃は激しさを増し、熱気は熱に変わり、三郎丸の身を焼く……そして。


――ガシッ――


「掴んだッ!」


竜の心臓から剣を引き抜き、飛び去る三郎丸……その瞬間。


――ブワッ――


竜の放つ魔力が、より一層強くなる、炎は真紅に染まり、大地を溶かして行く。


「何じゃ何じゃッ!?急に強くなったのう!?」

『当然だ、竜、龍の心臓は魔力の制御器官であると同時に魔力を生み出す炉心だ、我が心臓を貫き抑えていたのだ、居なくなれば竜の力も開放される。』

「抜いたのは不味ったかのう?」

『あのままでは何れ戦線は滅びよう、遅いか早いかの違いだ、そして滅びは早まったが、それにより勝ちの芽も出来た』

「それより貴様何じゃ、喋る剣等見たこともないわ!」

『我は〝悪神の剣〟より分かたれし力の一欠片……そして、悪魔〝ハデス〟の生み出した〝聖剣〟の一振りよ』

「聖剣ン?……アヤツが?」

『そうだ、死運びの担い手、我は悪魔の祈りより生まれた……〝魔を殺す剣〟として』

「それも気になるが死運びの担い手ってのは何じゃい?」

『言葉通りだ、死を運ぶ、その担い手……我が創造主の目的により選ばれる、6人の勇者』

「儂はそれに選ばれたのかのう?」

『そうだ、そして貴様には我が与えられた……〝無形の聖剣〟である我が』

「グオォォォッ!」


力を取り戻した竜が高らかに吠える……その感情を表すように、炎は猛り、そして、三郎丸に迫る。


『我は貴様の意思で在り方を定める、形無く、故に型取り、その在り方を変えられる……故に望め、貴様の願いを』

「なんじゃ、要はアレかい」


――ゴォッ――


炎が三郎丸を包み、荒野を飲み込む……ソレを炎の竜は静かに見ていた。


――ズオォォォッ――


その時、炎が動いた……まるで引き寄せられるように。


「名前が欲しいのか?」


その中心には人影が有った……身体に煤を着けた、白髪の鬼が。


「儂は良く斬れる刀がアリャ良いんだが……そう言うならば付けてやろう」

(ふぅむ……そういえば昔、振ってみたい刀が有ったのう……確か……)

「……〝村正〟言うたか?」


――ドクンッ――

――キィィンッ――


その言の葉を聞いた刹那、聖剣が脈打つ、そして〝聖剣〟……いや、〝村正〟はその形を変える。


それは持ち手を殺す刃、持ち手を狂気に誘う厄刀。


どの刀よりもドス黒い血を纏う、呪われ刀。


「おぉ〜…形が変わった…それに」


――ヒュッ……――


「良き刀じゃ、振りやすく、軽い」


軽く炎を払う……竜の炎を巻取り、刀の中へ吸い取られる。


「何じゃ、炎を食うのか」

『主があの炎を煩わしいと思ったのだろう、それ故の力だ』

「カッカッカッ!結構結構ッ!……つまりあの竜の炎を無視できるって事か!」


――ブワッ――


「なぁら、話は早い……あの竜野郎、炎なんぞ纏おって……斬ろうにも斬れんかったこの恨みィッ」


途端、老鬼の纏う気配が膨れ上がる、先程までの静かな闘志を掻き消し、荒れ狂う大鬼の様な、暴力的な戦意を見せる。


「晴らしてくれようぞ!!!」


そして竜と鬼が駆ける……炎を裂きながら、纏いながら……そして。


爪と刀が火花を散らす……炎が弾け、爪と刀の応酬が始まる。


大地を砕く竜の爪を、尾を躱しながら、剣鬼が曲芸の様な動きで竜の身体を踏み、そして斬る。


「お前さっきより固くなってないかのう!?」

『進化を果たした故に、アレの鱗も硬く進化したのだろう、しかし』

「うむ、斬れぬ程ではないッ!」





●○●○●○


「グルルルァァァッ!!!」


身体に走る線の痛みが心地よい、己の攻撃が尽くを外されるのが不愉快だ。


炎が効かない、今追い込まれてるのは〝俺〟だ。


それが堪らなく楽しい。


強くなった俺を、その更に上へ駆け上るこの男と、戦っている今が愉快だ。


まだ行ける、まだまだ行ける。


もっと細かく、もっと丁寧に、一撃一撃に殺意を込めて……。


「グオォォォッ!!!!」

「カッカッカッ!」


腕が飛ばされた、羽が切り飛ばされた、尾は細切れにされ、鬼は止まらない。


まだ、もっと……死んでも生きるッ!



そして……勝つ――。


「鬼月流……刀術……」

「ッ――!」


来る、コイツの本気が、全力の一撃が……コレを耐えれば――。


――………?――


天地が、裏返った……そして、耳元で、男の声が響く。


「首取一刀」


そして、見える……俺の身体が……首のない身体が……。



俺は……負けたのか。


力が抜ける……確かに、全力で戦った、持ち得る全てを使い、そして利点を潰してでも殺そうと足掻いた……その末路がコレか……何とも、諸行無常で……〝甘美〟な。


『満足行った様で何より』


〝黒の王〟……アンタもコレを探しているのか。


『さぁ?……それが何なのか、俺には〝分からない〟』


……そうか、だが、求めていると分かる、己の生が、終わる時を。


『其の為の下準備だ、この聖戦(茶番)も、今までの〝ゲーム(試練)〟も……そして、其の為に、盛り上げる駒が必要だった……』


それが俺か……全ては自分の為……だが、俺の望みも気にかけてくれていたのか。


『それはそうだ、己の為とは言え、ゲームな以上、俺の選んだ参加者には相応の報酬は必要だろう?』


……律儀な男だ。


『代償には対価を、善意には報酬を、悪意には報いを……己の定めた〝律〟に従っただけさ……さぁ、戦の竜、炎の王よ……お前の物語の〝後日談(アフタートーク)〟は終わりだ、そろそろ眠れ』


……そうだな、一足先に逝かせてもらう。


『次の輪廻で、縁があればまた逢おう』


嗚呼……だが、〝後1つだけ〟……礼をさせてもらうぞ。


『……何?』




「グオォォォッ!!!」

「ッぬぅ!?」


竜の一声が、大地を轟かせる……遠くの大地で、歓声を上げる人間達は、その声に呆け……そして。


――バサッ――


首の無い竜の……〝必死の突撃〟を許してしまった。


「なッ、不味――」


――ガチッ――


「グウゥゥ……」

「貴様……チィッ!」


駆け出そうとした、三郎丸の脚を、竜の首が噛み付き留める……呆けた人間を無視して、竜は城壁へ飛んで行き。


――ドカァァァァンッ――


そして、爆ぜた……膨大な魔力を燃やし尽くして、城壁へ、巨大な……それは大きな穴を開けた。




「……やってくれたなッ」



――パチンッ――


「『さぁッ、第1幕の終わりは上々、竜の最後の足掻きにより、国の盾は無惨に崩れた』」


空を、飛ぶ鴉の身体から、悪魔の主催者が声を上げる……それは、実に愉しげに。


「神より使わされし人の守護者よ、世界にへばり付く正義の泥よ、第1幕は〝ビターエンド(後味の残る結末)〟だ、それがお前達の選択だ――では」


――ゾワッ――


声はそう言う、その瞬間、大地を黒が覆い尽くした……大地全てが影となった様に、明るい太陽の下に影が生える。


「第二幕開演と行こうか……タイトルはそうだな……〝悪魔の狂宴〟としよう、チープだが、これ以上無いタイトルだろう?」



影から、竜が飛び立つ、狼が駆ける、蛇が這い出て蟲が群れる……そして、そのどれもが。


先の、獣災を上回る……怪物の集まりだった。


「主催は俺、参加者は〝四の騎士〟、〝招かれた五の客獣〟……そして、〝君達(食事)〟……さぁ、歌って踊れる〝仔豚達〟……宴の準備は出来てるか?」


獣の群れの、先頭で、悪魔は頬を釣り上げ、歪に笑んでいた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 果てしなく今更なんですけどぉ……この主人公やってる事エグ!
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