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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第六章:盲信は鏖殺に帰す
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策謀と警告

「此度は、お集まり頂き感謝する」


〝円卓騎士団〟の根城…〝鉄の砦〟にて、眼鏡を掛けた、学者然とした姿の男……プロフェスはそう言う、視界の中には、ダルカン、アーサー、ユリネ、ハットリと、名だたるクランの長達が一同に会していた。


「早速だが本題に入ろう、聖皇国の防衛案を募る、相手はFAW始まって以来、今尚最強の〝反守護者〟……否、〝悪魔〟として君臨する道化の魔王〝ハデス〟だ」

「やはり罠を張り巡らせて戦力を削るのが妥当では?」


〝忍者連合〟の頭脳、ハットリがそう告げるとプロフェスは首を横に振る。


「ハットリ殿も分かっていて聞いたのだろうが、それは厳しい、勿論、通常の獣災ならばそれで問題無いだろうが、相手が悪い」

「……」

「今回の獣災には明確な悪意を持った〝頭〟が居る、そしてアレは前回の獣災でさえ、我々を凌駕した能力を示した、前回の様な罠の類は間違い無く対処される」


アレの悪辣さを知る者達は皆口を噤む、そして場は気不味い空気に満たされる。


「……それじゃあ、落とし穴でも掘るか?」

「……ふむ」

「落とし穴なら相手の陸戦力を潰せるだろう、ハットリ、獣災の進軍ルートは?」

「そうだな……聖皇国の南西方面に存在する、〝龍の渓谷〟からと推測できる……のだが」

「諜報は壊滅したと?」

「うむ、聖皇国の全方位を捜索したのだが、このエリアだけ侵入しようとした途端に視界を潰され死んでしまった」


「つまり、相手は南西からの一方向から進軍するのか……ふむ、では落とし穴も効果的だな」

「俺の所で壁と追加でやっておこう」

「助かる黒鉄殿」


「次に対獣災についてだが……コレは〝真理の開拓者(コチラ)〟と――」

「〝僕達(円卓)〟が担当しよう」

「資材各種については〝アラリア商会〟が支援してくれる運びとなっている――」


そして、会議は続いて行く……。




「――ベクター」

「ッ!?」

「〝下げろ〟……向こうにコチラの情報を与えていないのだ、コチラも向こうの情報を探る必要はない」

「そりゃ相手の偵察が悪いだけだろ?」

「それでもだ……折角、コチラへプレゼントを用意してくれてるんだ、下手に探って期待を下げたくない」

「……御意に、我が主」

「宜しい、それでは――」


――ズオォォォッ――


「主様?」「ハデス?」

「これはこれは……何時もよりも派手な招待だな」


――ブツンッ――



●○●○●○



「―――で?…今回はまた随分と派手に連れてきてくれたな?」


甘い花の香りが漂う、楽園の様な空間で、俺は招待した本人達を見やる。


『急な連行お詫び申し上げます、ハデス』

『カッカッカッ、許せ!』

「………ふむ、成る程」


俺の眼の前の、美女達が纏う、吐き気を催すような白い力……〝聖属性〟だな。


「片割れとの対話は不可能だったらしいな」

『―ッ、相変わらずの観察眼ですね』

『ここまで来るとあれじゃの……キモイ!』

「五月蝿え……で、今回の俺のイベントにブチ切れた善神が、何かやらかしたか?……いや、〝俺〟か」

『えぇ、アレは貴方を標的に定めました』

『そりゃのう、自分の目を掛けた国が壊されそうになっとるしなぁ』

『アレの次の動きは恐らく、今回のイベントを壊すことかと』

「ふ〜ん……まぁ、好きにやらせたら?天使でも何でも呼び寄せると良い」

『……随分と余裕だのう?……主でもそう簡単に倒せる物ではないぞ?』

『そうですよハデス、〝天使〟はアレの力の一部を宿した、上位種です、下級神を制圧出来る程度には力を内包しています』

『下級神……下級神ね〜……〝守護者〟も下級神と言えばそうだろう?』


俺の言葉に、二人は目を見開く。


『何故それを?』

「いやまぁ、そりゃそうだろうよ、この世界とは別の場所から来たとは言え、俺達の元は此処と何ら変わらない、寧ろ、此処より更に弱いんだぞ?」


何せレベルアップの概念やら、進化、職業の補正なんて概念は皆無な世界だからな。


「守護者は善神に召喚された、呼び込まれた、どうやって?……〝祝福を与え、世界と世界を渡らせた〟んだろうよ、ご丁寧に〝不老不死の肉体〟を用意してな」


そして守護者の成長速度は異常だ、1日も此処に入れば下手なボスすら狩り殺せる。


「それの上位種が天使……〝あの程度〟の上位種が天使、慢心?……否、油断?……否」


守護者の上、それだけだ、たったそれだけの生命が……俺への刺客とは笑わせる。


「それに、彼奴等がマトモに戦ったのは何時だ?」


何百、何千?……今の今まで天使や神を脅かす脅威は存在しなかった……つまりは。


「長い間戦わなかったんだ、無論訓練はしたのだろうが、実践は久しくしていまい……ならば殺すのも容易い」


問題は〝時間〟だ……天使よりもそれが問題だが。


「まぁ、何はともあれ、新しい玩具の来訪は歓迎だ、それが俺を狙って四六時中飛び回っているなら更に良い」


ソレに……ククッ♪


「〝先ず〟は天使から先に仕留める、その次に〝善神〟だ……愉しみだなぁ……〝神殺し〟」

『『ッ……』』


おっと、いけない………ふむ、話はこれだけか。


「それじゃあ俺は帰るぞ……あぁ、今日は菓子を切らしてるな、また今度持ってこよう」




○●○●○●



「―――良し」

「主様、お戻りになりましたか」

「あぁ……セレーネは?」

「うちのエレノアと遊びに行ったぞ?」

「あん?」


影から抜け出ると、其処は俺の城の中、そしてベクターに問答していると、ふと俺の前から声がした。


「何だガレリア、居たのか……甘いものは?」

「随分な言い草だな……頂こう」


――カチャッ――


「おぉッ、コレがエレノアの言っていた〝けーき〟か――うむッ、美味い、この白いのはアレか!牛の乳だなッ、これは……柔らかいパンッ!これ程までにふんわりとしたパンは食べた事無いぞ!果物の酸味も実に合っている!」

「お気に召した様で何より……それで、俺のとこまで来た目的は?」

「おぉ、そうだった……ムグッ、親父と母上がお前に会いたいと言っていたのだ!」

「……龍神と霊神が?」

「そうだ、〝もう来ているぞ〟?」


――ピキッ……――


ガレリアがそう言った瞬間、世界が割れた……いや、割れた様に見えた……その瞬間、俺の前に、悪神と比肩して遜色無い気配の二人が居た。


『むぅ……ガレリアよ、そう簡単にバラすのはつまらんだろう』

『フフフッ、初対面で悪戯はどうかと思いますよ、貴方?』


ベクターは……厳しそうだな。


「申し訳……有りません」

「構わん、コレを前に跪かなかっただけ大した物だ」

『そうだぞ若いの、〝(オレ)〟を前にそれだけで済んだのが凄いな!』


ベクターを〝外〟に送り、改めて、俺の前の〝二柱〟に目を向ける……うむ、美しいな。


『しかし、流石〝アーリーユ〟殿の知己、我を前に冷静、と言うより毛程の動揺も見られんな』


一柱、金髪に蒼い瞳の、途轍もない美貌を持った、白装束の似合う男……〝龍神グランガルム〟。


『ソレに……フフフッ♪……とても〝変わった形〟をしてるわ♪』


そして、白衣に緑の、植物の紋様を刻んだ、水色の髪をした美しい女、〝霊神ミレーア〟。


「随分な過大評価だな、コレでもそれなりに緊張してるんだぞ?……俺に〝殺せるのか〟どうか、未知数で……フフフッ♪」

「ハデス!?」

『ほぉ……』


――ビシッ――


俺の言葉に、龍神の口角が吊り上がる………空間が揺れ、蝋燭の火が荒ぶる。


『もうッ、結界内とは言え力を出し過ぎですよ、またノアちゃんに怒られるわ』

『小僧……いや、ハデスよ……この我を殺せると申すのか?』

「俺は出来無い事を口には出さん……とは言え、見込むはそれこそ低いが……そうだな、大体勝率は2割、俺の土俵で2割五分と言った所……うん、やってやれないこともない」

『……クククッ、成る程……道理で、悪神の気に入る訳よ、〝純粋な悪意の化物〟よ』

「それで、俺へ会いに来た目的は?」

『何、我が息子等の悩みを解してくれた礼をしようとな』

『私の子達とも仲良くしてくれてる様だし、私も何か上げようかしら?』

「ふむ……では有り難く頂戴しよう」

『うむ、では受け取れいッ!』

『えいッ♪』


二柱がそう言うと、俺の魔剣が光り、俺の眼の前に金色の鱗が現れる。


「ふむ……」


――バクンッ――


『新たな称号〈龍神の友〉を獲得しました!』

『新たな称号〈霊神の友〉を獲得しました!』


鱗を喰らうと同時に、俺の力が増す……そして、フェイディアの力も爆発的に増えている。


「ふむ、これは……中々」

『本当はもう少し話でもしたいがあまり居座るとノアにどやされる、ハデスよ、精々励み、我を殺せる迄に至るがいい!』

『また今度、ノアちゃんとアーリーユちゃんと一緒にお茶会でもしましょうね?』


そう告げると、用が済んだのか、二柱の神が世界から消える……室内に色濃い魔力の残滓を残して。


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