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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第六章:盲信は鏖殺に帰す
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蠱毒

――グルルルル……――


「お〜、これだけの魔物が揃うと中々壮観だなぁ〜!」


場所は龍の渓谷、イベント開始から1週間後の大地には大小様々な獣畜生が涎を垂らして立ち尽くしていた。


「数は?ベクター…」

「凡そ70万程かと」

「お〜!結構集まったな!」

「いや、全然足りん……大体200万位は欲しかったな」

「ですね」

「「はぁ!?」」


俺の声に、バリットとセレーネが驚きの声を上げる。


「おいボス、アンタ25万位欲しいって言ってたろ!」

「倍以上だぞ倍以上!なのに何で足りねぇって――」

「いや、良く見ろよ、こいつ等初期エリアの奴等も混じってるだろ、こんなもん熟練の冒険者と守護者にとっちゃ雑魚も雑魚だ、群れた蟻みたいなもんだろ」

「「……あ!」」

「脳筋共め……まぁ良い、後1週間でどれだけ集まるかだ、今も此方に集まってきてるだろう?」

「はい、今も続々と第二波が進行中です」

「規模は?」

「凡そ30万」

「……まぁ良い、許容範囲だ」

「「ボス!」」


馬車の方から双子狼の二人が駆け寄る、手には桶一杯の〝何か〟を抱えて。


「夜雲、月華…タラトから貰ってきたか?」

「うん!」

「おいハデス、それは?」

「神経毒、麻痺毒、植物毒、石化毒、幻惑剤……汎ゆる毒物、有害効果のある物を結晶化させた物の塊、タラト命名〝万悪石〟」

「んなゲテモノどうすんだよ?」

「砕いて魔物共に撒き与える」


――バキンッ――

――パラパラッ――


「そして仕上げ……〝我は悪の魔、有らん限りの呪詛を込めて、我は生命を蝕まん〟」


瘴気が獣を包む、それに付随して、土が盛り上がり、獣達を包み始める。


「〝強きは生きる、弱きは死ぬる、獣の法により、淘汰は続く〟」


それは古から今尚知られる、古い呪法。


「〝その姿は変じ、その力は精錬される、その異様は恐怖を呼ぶ〟」


閉ざされた空間で、互いに殺し合い、飢えを満たす為に喰らい合う、常に死の危機と隣り合わせ、その状況により、獣の生存本能は膨れ、進化を余儀なくされる。


人は、その呪法を……〝蠱毒〟と呼ぶ。


「〝大呪〈変異蠱毒〉〟……存分に殺し合い、そして強くなれ」


最たる者が、その蠱毒の王となる。


そして、暗い色の奥で、獣の叫びは響いた。


「さぁ、俺はやる事があるんで、一度単独行動を取る、このエリアに近付く奴は皆殺しにしろ」








●○●○●○



『どうなってるのよ!』


――ガシャンッ――


其処は白い美しい宮殿、その奥で、1人の女性がヒステリックに叫び、調度品を粉々にする。


『この国に……〝私の国〟に魔物をけしかけるですって……何処のどいつよ!?』


その叫びに、1人の〝従者〟が応える。


『は、ハッ……相手は悪神が召喚した〝反守護者〟の様で』

『今直ぐ殺しに行きなさい!』

『『『『『『は、ハ――』』』』』』


そして、従者等が動こうとしたその瞬間。


――ゾクッ――


黒と白が混じり合う。


『残念ですが、それは許可出来ません』

『悪いが、それは無理だのう……』

『ッアンタ、アーリーユ!……アンタよくもッ』


――ギィンッ――


白い女が放った眩い光の剣を、黒い女は手を払い塵に変える。


『相変わらず気の短い奴よのぅ』

『五月蝿いッ、今直ぐその裏切り者を殺せッ!』

『生憎と、神の世界への干渉はそう安々と行ってはならんと、ソナタも分かっておろう?』

『ソレに〝善の〟、貴方は既に幾多も世界に干渉し、〝観測者〟や我々から幾度も警告を受けているでしょう、このままでは世界そのものが崩壊を始めかねません』

『ノアッ、アンタアーリーユに肩入れして良いのッ!?』

『肩入れでは無く、世界の管理者としての警告です、貴方は人に肩入れし過ぎです、控えなさい』

『善悪の偏りは人が魔物を克服したからでしょう!?』

『貴方のソレは克服では無く〝堕落〟です、無論、人が魔物を淘汰する事は悪しきでは有りません、時に均衡が崩れる事は許容できます、しかし貴方は他所から守護者を呼び込み、その力で世界の均衡を傾け過ぎた』

『善悪は常に一定じゃ、一時的な偏りも遠からず抑止力が生まれバランスを戻す、しかし主は守護者のを……〝善の抑止力〟を呼び込み過ぎた』

『世界に有るべき天秤は重しに潰れ、淀みが溜まりつつ有ります、コチラでの淀みの処理にも限界が来つつある』

『ッ〜〜〜!?……五月蝿いッ!私は〝善〟よ!〝善の神〟よ、その私に楯突くの!?』

『……駄目じゃな』『……駄目ですね』

『ちょっと!何処行くのよッ、今直ぐ進行を止め――』

『貴様の都合を押し付けるな、下郎……貴様は最早善の神ではない』

『私から〝彼〟へ何かを抑制する事は有りません、少なくとも今は、ですが』


冷めた目で白い女を見る二人の女性は、その瞬間消える。


『精々足掻け、アレはお前を標的に定めた』


その声を残して……。


『私を……この私、〝善神〟を狙っている……?』


――ゴゴゴゴゴッ――


神殿が揺れる、白い女の……〝善神アフラ〟の顔に憤怒が宿る。


『ふ、フフフッ………良いわ、見てなさいあのクソ野郎共……彼奴等の手駒を、この私を狙う身の程知らずを無惨に殺して、その首を世界中に晒してやるんだから……』


――ドンッ――


「今直ぐ〝探しなさい〟!」

『『『『『『ハッ!』』』』』』



白の宮殿から、従者の影が消える、白い光が世界に隠れ潜む、暗い〝闇〟を探し始めた。



○●○●○●


「フンフフ〜ン……右よ〜し、左よ〜し、360度半径1キロに人影無し!」


――ズブズブズブッ――


「お〜良々、連れてきたぞ〜、それじゃあ此処は〝任せたぞ〟?」

「―――」

「宜しい♪……定期的に見に来るから、何か有れば言うよ〜に」

「〜」

「ん?……そうだな、殺されないように〝力を付けろ〟、で、極力守護者を刺激するな」

「――」

「オーケー、それじゃあな、期待してるぞ」



最後の〝仕込み〟を終え、俺は龍の渓谷に転移する。




――ピカッ――


「日差しが強いなぁ……で、一回目の蠱毒は……宜しい、概ね期待通りだな」


うんうん、ちゃんと5万程〝生きてる〟な……で、此処の蠱毒の王者は……君か。


「やはり竜は格別の強さを誇るな〜……うん、能力も悪く無い、概ね期待通りだな……それじゃ――」


――ザクッ――

『――――ッ!?』

「大丈夫大丈夫、死にはしないとも……少なくとも今は、ちょいと怠さは有るだろうが、コレでお前は此処の長だ」


さぁ、ジャンジャン集めて、ジャンジャン強くしようか♪



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