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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第五章:堕天の悪魔と守護の勇者
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守護の勇者、夜明けの悪魔①

「『さぁ!休憩もそこそこに予選終了!各4ブロックで幾百の猛者を淘汰し、決勝に勝ち上がった24名による本戦トーナメントが始まるぜーッ!?』」

『ウオォォォッ!!!』

「……ハッハッハッ♪盛り上がってるなぁ♪」

「早く、殺る」

「……」


予選試合の全工程を終えて数十分の休憩の後、実況が次の工程、即ち本戦への移行を告げる、すると割れんばかりの歓声、咆哮が響く。


「『でだ、本戦トーナメントの試合方法だが、一対一の〝決闘(タイマン)〟だ!』」

「『本戦でのマッチアップをお知らせしますッ!』」


――ブォンッ――


二人の声と共に半透明のウィンドウがデカデカと移される。


「『まぁ待て、そう早るなって!……ンンッ、さぁ、今から空白の箇所に、マッチアップする選出がランダムで選出される……これに関しては何の操作もしていないことを予め明言しておくぜ?……それじゃあ――』」

「『ルーレットスタート!』」

「『またぁ!?』」


――ピ、ピピピピピピピッ――

――ブゥンッ――


「『第1試合、〝一撃破壊(ワン・ブレイカー)〟の〝ノーマン〟と、〝風脚〟の〝テスト〟!』」

「『絶大な一撃を持つノーマンさんと、素早い連撃が魅力のテストさん、コレは中々面白いカードになりましたね!』」


――ブゥンッ――


「『第2試合、〝老鬼〟の〝三郎丸〟と、〝金剛〟の〝ガチタン〟!』」

「『三郎丸さんの老獪さの有る攻めと圧倒的な硬さと守りの上手さを持つガチタンさん、盾が勝つのか矛が勝つのか、古今からの強さ比べは、果たして何方が勝つのか見物です!』」


――ブゥンッ――


「『第3試合、〝剣乙女〟の〝ニノ〟と、〝影襲〟の〝ジャック〟!』」

「『老鬼三郎丸さんの技術を体得し、凄まじい剣戟を見せたニノさんと、音を殺し、敵を殺す事に長けたジャックさん、この試合はどう転ぶのかわかりません!』」


――ブゥンッ――


「『第4試合、〝変態紳士〟の〝ラヴァー〟と、〝暴虐〟の〝カイン〟!……何だコレ?』」

「『へ、変な格好と変な二つ名ですが実力のあるラヴァーさんと、圧倒的な力量を見せつけたカインさん、熱い戦いに成るでしょう』」



――ブゥンッ――



「『第5試合、〝不可視〟の〝ヨイチ〟と、〝追跡者〟の〝フリッカ〟!』」


「『第6試合、〝五道師〟の〝シグルド〟と、〝恐話〟の〝ブギーマン〟』」


「『第7試合、〝聖騎士〟の〝アーサー〟と、〝糸葬〟の〝アリス〟』」


「『第8試合、〝裁定者〟の〝ユミネ〟と、〝獣呼〟の〝リガル〟』」


「『第9試合、〝道化〟の〝フェイカー〟と、〝戦仕〟の〝リエナ〟!』」


「『第10試合、〝魔導技師〟の〝レベス〟と、〝独槍〟の〝李書文〟!』」


「『第11試合、〝鎌刈〟の〝プルート〟と、〝毒殺〟の〝ケニック〟!』」


「『第12試合、〝土竜〟の〝ドグラ〟と、〝戦王〟の〝ダルカン〟!』」


「『以上24名12試合が本戦の序章、勝ち上がった12名から再度ランダムで選出されるッ!』」

「『誰が勝つのか、誰が優勝するのか、楽しみですね!』」

「『それからそれからァッ、本戦から何と賭けが開放されるッ、別の意味で敗者と勝者が現れるのも見どころだぞぉ!?』」


『ウオォォォッ!!!』


「『それじゃあ第1試合の準備だ、選手達は控室に退出してくれぇ!』」






「俺は4試合目……相手は妙ちきりんな二つ名持ち……ラヴァーとやらが如何な敵か楽しみだ」






○●○●○●


――ザッ……ザッ……――


「『さぁさぁ、第1試合、本戦の開始を告げる狼煙に選ばれた二人を紹介しよう!』」


その声と共に二人の男が現れる。


「………」

「『軽やかな身の熟し、冷静な視野より隙をつき、その身に似合わぬ強力な一撃ッ、正に浪漫な機械仕掛け、絡繰り義手の男、〝一撃破壊〟のノーマン!』」


『ウオォォォッ!』


「……」

「『対するは、その動きは正に風の如し、繰り出される脚激は空を裂き、肉を裂く、鋭い斬撃と化した脚は果たしてノーマンに通じるのかァッ、〝風脚〟のテストォ!』」


『ウオォォォッ!!!』


舞台に立つ、二人の男……歓声を聞き流し、二人が言葉を交わす。


「その義手渋いなぁ、やっぱ一撃必殺は浪漫だよなぁ?」

「……連れの趣味だ」

「嘘付け、アンタも随分ノリノリじゃねぇか」

「……」

「ハッハッハッ、まぁ…なにはともあれやり合おうぜ、派手に派手に……本戦の頭を貰ったんだ、ド派手に盛り上げようッ!」

「……だな」


「『位置に着いてェッ!』」


――ザリッ――


途端に静寂が支配する、重い緊張の糸が張り巡らされ、二人の選手の、その気迫が観客の口を塞がせる。


――ゴクリッ――


「『……レディ……ファイ――ッ』」


――ドォォンッ――


始まりの合図、その瞬間、ステージに大きな土煙が舞う、土塊が雨の如く降り注ぎ、観客の度肝を抜く。


「うへぇ……コリャやべぇ…〝食らったら〟お陀仏確定だなぁ」

「……外したか」


「『こ、コレはァーッ!?開始と同時に起きた爆発!土煙の中には、巨大なクレーターの中央で立つノーマンと、それを見下ろすテストが居るッ、な、何が起きたァーッ!?』」

「『お答えしよう』」

「『――ッ!?あ、アンタは守護者の――ッ』」

「『そうとも、私は守護者のプロフェスと言う、実は本戦前に冒険者ギルドと生産者ギルドの連盟から依頼が有ってね、〝想定以上に守護者の戦闘が激しく実況解説が追いつかないかもしれない、だから守護者の戦闘についての解説役を頼みたいと〟……まぁよろしく頼むよ御二人共』」

「『あ、あぁ……それよりもプロフェスさん、この一瞬の攻防は?』」

「『うむ、まず開始と同時にノーマン君が動いた、彼の左腕が赤熱している、このクレーターはノーマン君の一撃だ、そしてそれに対してテスト君は瞬時に〝反応(リアクション)〟、すぐさま回避し無傷で凌いだのだ』」

「『今の一瞬でそんな攻防が……』

「『実に凄まじい一撃だった……しかしその分代償も有る様だ、見たまえ、ノーマン君の腕から血が垂れている……威力の反動に身体が耐えきれないのだろう、私の予想では後2、3発が限界と見たね』」


「……流石の見識だな、全く」

「おいおい……ド派手な一撃決めてくれると、その後の俺が地味になるだろうが…全くよぉ」


――シュンッ――


「――ッ!?」

「立つ瀬がねぇ」


――ドゴォッ――


その瞬間、テストの姿が搔き消え、同時にノーマンの身体が曲がる。


「〝風脚〟ッてのはカッチョイイが、所詮はただ脚が疾く、脚での攻撃のみに特化しただけの事、お前みてぇに馬鹿げた爆発だのは何も無い、〝ただ速く、ただ重い〟、それだけさ」

「成る……程……脅威的、だな」

「爆音爆発だけが派手じゃねぇぜ?」


「『こ、コレはッ、一瞬でノーマンに詰め寄り、反応すら許さずに足蹴りを放ったテストッ、風脚、正に風の如き速さッ、コレはノーマン選手厳しいかッ!?』」

「『どうだろうね、テスト君の言う通り、火力自体はノーマン君の数段劣る、加えてノーマン君は万能に振った戦闘スタイルにあの機械仕掛けの左腕で絶大な火力を生む、テスト君が喰らえば即死だろうね』」

「『つ、つまり、一見テスト選手が上手に見える戦いですが、実際はまだ五分五分だと?』」

「『その通り』」




●○●○●○


「……ふぅ」

(テストの長所はその速度と反応速度……俺の攻撃は火力の代わりに遅い、どうにかしてブチ当たるには…やはりその速度がネック)


「……」

(ノーマンの火力は俺を確実に葬る、相手の勝機は其処しかない、だから彼奴は必ず俺を捕まえたい筈だ)


「絶対打ち抜く」

「絶対打たせない」


「『……どうやらこの一撃で決着を着ける様だね』」

「『さぁ、最終局面、勝つのは破壊の左腕か、それとも風を越える瞬脚かッ!』」



――………――


震える実況者の声の余韻が消え行く、そして……。


――ドゴォッ――


一瞬の攻防を制したのは、テストの右足だった。


「『な、何と言う刹那の早業ッ、テストの右足が、ノーマンの機械義手を蹴り壊した!』」

「『……』」


――ガシッ――


「ッお前」

「……捕まえた……〝抑装解除(リミッター・パージ)〟」


――ガシャァンッ――


「なッ!?」

「『なッ!?』」

「『何と……まさか今までの〝攻撃〟が、〝全力〟では無かったのか』」


「この機械義手は俺の連れが作った……好き物の変人が、ただ単純な物を作る筈がない……最後の最後の最後……〝意表を突いた〟、〝相打ち覚悟の大馬鹿火力〟こそが、この義手の本懐」


――〝白崩拳〟――


「持ち主の事などお構い無しの、〝必殺〟……耐えた方の勝ちだ」

「……生き生きしてんなぁ、おい?」


――ドッ――


音を消す、実況の歓声も、打つかり合う音も無く……その暴力の塊はすべての音を呑み込み、天を登った。


左腕から上半身の左半分を喪った、ノーマンを残して……その場にはテストの屍の一つも無かった。


「『――ッ!……ま……か、まさ……の大逆転ッ!大会本戦初陣を飾ったのは、〝一撃破壊〟のノーマンッ!!!』」


『ウオォォォッ!!!!』


「………アカネに、義手を新調して貰うか」

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