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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第五章:堕天の悪魔と守護の勇者
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剣と杖と、血と肉と③

「ふぅ……案外疲れたなぁ」


何時も通りの動きをしようと動き過ぎた……あ〜、紅茶うめ〜。


「ん?……Bブロックはアーサーが出るのか……で、聖剣も御覧の通り、前よりは強くなったか?」

『だな、確かに少し出力が上がっている』

「勝てそうか?」

『取り切れんが、遅れは取らんな』

「十分十分、本体スペックは此方が上だ、聖剣はどうとでもなる」


しかし、アーサーの蹂躙を見るだけでは退屈だな……お?


「この男……剣士……いや、魔剣士か……しかも〝無属性〟にのみ特化した珍しいタイプだ」


……少し気になる、見てみるか。





●○●○●○


「――ッ!今、悪寒が……何か居るのか?」


山道を駆けながら、俺は言い知れぬ悪寒に眉を寄せる……少し警戒を上げよう。


「オラァッ!」

「ッ、甘いな」


――ダンッ――


横の草陰から、剣士の男が飛び出す、それを見た瞬間に、俺は距離を取る。


――ブォンッ――


「〝身体強化〟……〝拳の道〟」


足と拳に魔力を流し、強化する……コレは俺が生み出した新たな強化術…〝五道強術〟……本来の身体強化は、身体全体を均等に強化する、トッププレイヤーのダルカンが持つ身体激化は、魔力を生命力に肩代わりさせて出力を上げた、短期決戦型だが、コレは違う……対応した〝型〟の部分に、本来全体に回る魔力を集中させ、何倍もの強化を施す。


「遅い」

「ッ速――」


――ベチャッ――


拳の型は超高速高火力型……俺と同等程度なら、屁でもない。


――ゾクッ――


「ッまただッ……気持ち悪――ッ!?」


――ドゴォンッ――


「だぁ〜……仕留めたと思ったんだがねぇ〜?」

「お前は確か……〝血染歌〟の所の構成員?」

「あったり〜……折角の祭りにゃ楽しんで行きたいだろ〜?……しかも合法的に殺せるなら万々歳だよなぁ?」



土埃を纏いながら、屍人のように痩せこけた不気味な男がのそりと現れる……〝血染歌〟、〝ハデス〟の影響で起きた守護者を〝辞めた〟、反守護者の集団……言わばPKクランだ、血染歌はそんなPKクランの中でも〝黒の崇拝者〟の次程度には有名だ。


「俺は〝闇の狩人(ブギーマン)〟、人と殺し合うのが大好きなロクデナシさぁ、お前は?」

「……シグルドだ」

「へぇ〜、シグルドかぁ〜、良い名前だなぁ?……自己紹介も済んだことだし、遊ぼうぜぇ!」


ニタリと笑いながら凶刃を振るう男、その細腕からは考えられないような剛力が、次々と山々の木々を薙ぎ倒していく。


(相手は装備的には軽戦士か盗人……その上位職の〝暗殺者〟か……だがこれ程までの火力は出せない筈だ)

「考えてるね〜……大方俺の職業辺りの事かぁ?……確かに、軽装なのに無茶苦茶な力してるもんなぁ」

「何だ、教えてくれるのか?」

「良いぜぇ?……俺の職業は〝殺人鬼〟、殺せば殺す程、身体能力が一時的に上がる……気が付いたら成ってた♪」

「成る程…〝剣の道〟」

「おほッ♪」


――ブンッ――


「速え速え!…妙な身体強化だなぁ?……初めてみたなぁ、そんなの」

「……俺だけの使い方だ」

「成る程、じゃあ聞かねぇよぉ……その代わり」


――ガサッ――


「ッ――!?」

「生命置いてけぇ!」


ふと、木陰から鳴る異音に振り向いたその瞬間、其処には今も眼の前に居る筈の、ブギーマンが居た。


――スパッ――


「グゥゥッ!?」

「ビックリしたかぁ?……〝闇の狩人(ブギーマン)〟は何処にでも居る、何人も、何十人も、ブギーマンは暗闇の伝承、悪い子はブギーマンに襲われる…ってなぁ?……俺の手札は〝分身〟さぁ、実体を持った分身……分かるかぁ、シグルド」

「……成る程」


――ガサッ――

――ガサッ――


木がざわめく音がする、それと同時に現れる人影。


「此処ら一帯に、お前の分身が居るって事だろ?」


俺を取り囲む様に、何人ものブギーマンが無表情に現れる。


「ケヒャヒャ、あったり〜……さぁどうするんだぁ、逃げ場はねぇぜぇ?――ッ!?」

「――ッ!」


――ゾワッ――


その瞬間、またしても悪寒がした、先程よりも強く……そして。


『上げろ』


そんな愉しげな意思の声が聞こえた気がする。


「……何なんだコレは」

「今やっべぇ気がしたなぁ……ケヒャッ、ケヒャッヒャッ!……お前か、お前が原因なのかぁ?」

「悪いが俺は無関係だ……多分」


そう言いながら、俺は構えを取る。


「〝身体強化〟……〝拳の道〟」

「殴り合いかぁ、それなら――ッ!?」


――バンッ――


瞬間、ブギーマンの周囲の、分身が破裂する……そして、闇に溶けていく。 


「……はぁ、疲れた」

「マジか……そういう絡繰りかぁ」


何て事は無い……ただ、身体強化の出力を上げただけの話、全身に行く筈の魔力を全て手と脚に回した……だからこそ出来る〝一瞬の連撃〟、知覚するよりも速く、認識するよりも疾く、回避不可能な一撃を相手にぶつける。


「う〜ん……こりゃイカン、〝ボス〟に怒られちまう……逃げよッ」

「ッ!?」


――ドロッ――


「じゃあなぁシグルドぉ……今度は決勝で殺し合おうぜぇ?」


そう言うと、ブギーマンは身体を影と同化させ、瞬く間に消えていく。


――ヒュンッ――


「ッ!?」

「うわマジか、当たったと思ったのに」

「――ッ、ヤバイやり過ぎたな……俺も逃げるか」





その後もBブロックはアーサーが無双し、バディで暴れ回る魔術師剣士コンビが居たり、シグルドが堅実に倒したりブギーマンが殺し回ったりと、そこそこの見所と共に終了した。




○●○●○●


「〝五道強術〟……本来の身体強化を部位に集約させて強化倍率を跳ね上げる技、面白い発想だな♪」


セレーネの〝色鬼〟に似てるが、あくまで魔術による身体強化……、セレーネのそれとはまた別物か。


「後は、まぁ普通だなぁ……特に唆られる物は無し、次に期待だな」



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