闘技場イベント、開催!
――ブツンッ、ツーッツーッ――
「『あーあー、マイクテストマイクテスト、オーケー聞こえてる?……うん、聞こえてるね、ンンッ!』」
静けさの中、ファウストの街の大きな、それは大きな闘技場の中で、観客と、出場者は静かに、静かに音に耳を寄せていた。
「『さぁ!紳士淑女?否!老若男女問わねぇ戦い好きのロクデナシ共!今日、この時、この瞬間から、神の使徒、守護者最強を決める祭りの始まりだァーッ!!!』」
『『『『ウオォォォッ!!!!』』』』
大気が震えんばかりの歓声が、熱が、圧力が街全体に響き渡る、マイクを持った男がその光景にこれ以上無いほど楽しそうに笑っている。
「『今日、この一大イベントを取り仕切るはこの俺!冒険者ギルド随一の解説屋ァ、マルクスとぉ!』」
「『は、は〜いッ!生産者ギルドから何故か駆り出されましたッ、解説補佐のニルマです!』」
「『そしてェッ!この大会は何とゲストに〝各国〟の王、女王が観戦に来ているゥッ!!!』」
声と同時にスポットライトが闘技場の、最も豪華な場所に差し込まれる。
「『まずはこの人!〝ゲーデルツ帝国〟現帝王にして、〝炎帝〟の名を持つ元Sランク冒険者ァ、〝ルキウス・イル・ゲーデルツ〟』」
「おぉ!」
「『続いてぇ、美しき森の民、清き精霊と共に生きる、麗しの美魔女、森王国〝フォスタ・テセル〟の統治者、〝リーゼル・フロリナ!〟』」
「ウフフッ」
「『お次は、力強き気高き戦士、獣の顔は勇猛の印、小細工なんざ使ってんじゃねぇ!〝ブォルバダ獣王国〟、獣王であり、コチラも元Sランク冒険者、〝獅王〟、〝オードスト・グランツハイム〟』」
「うむ!」
「『続いて続いて〜?……じゃん!若き賢王、古き悪習を根絶し、民により良く施しを与える、優れた才を持ちし偉大なる王、〝ドルダナン王国〟の長、〝キルト・シス・ドルダナン〟」』
「ハッハッハッ、よろしくね」
「『本当は後2カ国にも招待状は送ったのだが……生憎と都合が合わないらしい……まぁそんなこんなでゲストの紹介終了!』」
――パチンッ――
「『さぁ、そろそろ予選を始めてぇよなぁ、ッて訳で予選会場を茶の間床の間の皆々様に御紹介!』」
「『フッフッフッーッ!予選会場には生産者ギルドの錬金術師と魔術師の皆様が技術の粋を集めて作られた〝大規模隔離心象結界〟を用います、予め設定された結界の地形の中で、各ブロックの出場者に競い合ってもらいますッ、出場者は各ブロック4つにつき6人、勝ち残り、生き残り、そして大いに盛り上げて下さ〜い!』」
『『『『ウオォォォッ!!!!』』』』
『「予選開始は今から十分後!万全の準備をしておけよ!?」』
そして、闘技場の開会式は幕を下ろした。
○●○●○●
――カチャッ――
「う〜ん、やはりリーア嬢の作るアップルパイは美味ですねぇ」
「ありがとうございます!」
「……ふむ、中々頑張っている様で」
客の居ない喫茶店で、私はアップルパイを食べながらリーアを、より言えばリーアの周りに薄く見えるソレへ目を向ける。
「まだまだ魔力が足りなくて1日に3秒位しか逢えませんけどね」
「その若さなら十分逸材でしょう、私の様な例外を除いてですが」
「何時かはテスさんを殺せる位強くなりたいですね」
「それは……フフフッ、恐ろしい事です」
リーアの赤い視線を受け、思わず心が喜んでしまう。
「何れ、その時を楽しみにしていますよ、御二人も、何れその殺意の刃が私に届く日を、待ち望んでいます」
リーアに金を渡し、喫茶店を出る。
――カツッ……カツッ……――
「……はぁ、君達は本当にうんざりするよ、何度言えば分かるんだ、何度殺せば理解するのだ?」
――カツッ――
歩きながら、人混みの各所に俺を見る眼を睨む……面倒だ。
――ドンッ――
「お?」
「何だ何だ?」
空を光の玉が翔ける、空へ、宇宙へと……やがてその速度は空を中程まで突き破り、そして――。
――パァァンッ――
色取り取りの光を散らし、爆ぜた……ソレを一瞥して路地裏へ入り込む……少し人が居ないような気もするが構うまいよ。
――グチュッ……グチュッチュッ――
「ンンッ、良いね……ちゃんと〝下がってる〟」
倦怠感を身体が襲う、身体が重い……この身体を〝奔る〟ソレのお陰でだがな。
「コレなら守護者とも良い戦いが出来そうだな……っと」
――カリカリカリッ――
壁を削る〝短剣と長剣〟を腰に、インベントリから手鏡を取り出し観察する。
「うん、見た目も文句無し、ハデスと見間違える事もあるまい……声は少し変えるか……あ〜……ア〜……〝あ〜〟、コレだな」
何時もより更に低い声に喉の形を変え、好戦的な風貌に牙を覗かせ、路地裏から出る。
「ハデス…否、〝カイン〟のお披露目と行こう」
フフフフフッ、フハッハハハッ♪
●○●○●○
「アレが、〝守護の勇者〟……確かに、聖剣を持っているな」
「えぇ、ソレにもう一人、守護者の中に〝勇者〟が居ました……しかし」
「うむ……どいつもこいつも大した玉じゃねぇな、素人では無いがベテランでも無い、まだまだケツの青いガキ、不老不死のせいか更に甘いな」
ファウストの闘技場にて、街の守護者を眺める四人の王が居た。
「………僕はあの方が気になります」
「アヤツは……三郎丸か、確かに、鍛え抜かれた技術と、途轍もない研鑽を持っているな」
「私は彼ですね……並外れた知力、ずば抜けた探究心、天性のセンス、非常に優秀な魔術師ですよ、彼は」
「俺は三郎丸の横の娘だな……ありゃ弟子か、動きは三郎丸よりも未熟だが、良い目をしてる」
「守護者の中にも面白い奴は居るようだ……退屈せずに済むな?」
「願うならばあの〝狂人〟共に対抗する切り札にでもしたいのだがな」
「それは〝協定〟に反しますからねぇ」
「そう言えば件の〝悪魔〟は居ないのか……話に聞けばかなり悪辣で鬼畜な腐れ外道だと聞いてたが」
「余興好きの悪魔…〝ハデス〟ですね、未だ目撃情報は有りませんが、必ず居るでしょう」
「その時は、俺達で殺してやれば良い、今は祭りを楽しむのが優先じゃ」
「「「(だな・ですね)」」」




