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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第五章:堕天の悪魔と守護の勇者
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月夜の報復

――ゴゴゴゴゴッ――


凄まじい、それは凄まじい地揺れに、村の人間達はワラワラと家を出、そして見た。


「――ッ!?村が!?」


村を囲う様に競り上がる土塊の壁が、天変地異で無い、意図的な何かの所業を。


「やぁ、やぁやぁやぁ♪どうも〜人間の塵共?」


愉しげに、不愉快そうに、矛盾を含ませるその声色に、村の者達はその声の主を見た。


「あ……悪魔」

「イエ〜ス、破滅の呼び人、誘惑の道化、地獄の住民……その悪魔が、お前達の前に居る、お前達のその罪科を回収しに、なぁ?」


悍ましい羽、竜の尾、鬼の角を生やしたそれが、目を細めて人を見る。


「罪科、俺達に何の罪が――」


――ズバンッ――


「ただの人間如きが、悪魔の領分に脚を入れた、それが罪である」

「キャ「〝黙れ〟」――ッ!?」


言葉を放った男の口から、脚まで、長い槍が貫かれる、ソレに悲鳴を上げる女子供を、男は一言で黙らせた。


「〝無垢な童〟を穢したのだ、理不尽に、憎悪を込めて、罪なき子へ酷い仕打ちが与えられた、屍肉の匂いを纏うソレは、〝(悪魔)〟を呼び寄せた」


男は淡々と語る、その言葉に、村の者達は酷く顔を青くさせる。


「貴様等が理不尽に罰を下したならば、我もまた理不尽に罰を下そう」


――ゴポッ……ゴポポッ……――


影から這い出る、黒い狼が、紫の目を月夜に光らせて、十を超える数が村の民を睥睨する。


「〝ゆっくりと味わえ、牙を突き刺して抉り、肉を少しずつ裂き、苦痛の叫びを月夜の贄にせよ〟」


狼が駆ける、産み落とした主の言葉の下に、残虐で、惨たらしい、その夜が、愚かな者達を襲った。







そして約30分が過ぎ去る、血塗られた大地に屍肉が引きずられ、未だ息のある者は脚から少しずつ食い殺され、苦悶に歪む顔で、己の愚行を悔いていた、子供も、大人も老若男女の区別無く、尽くを殺したその後……俺は〝最後の女〟の前に立つ。


「どうだ、痛いだろう、苦しいだろう?……お前の童はその何倍も苦しんだ、何倍、何十倍もだ、この程度で狂ってもらっては困るのだ、余興は楽しく、長く続くべきだろう?」

「ぁ……あ……」

「しかし、幾ら屍に時は不要と言えども、俺個人にとって時間は有限なのだ……だから、クッフフフッ♪」


――『ウアァァァッ……』――

――グチュ……グチャッ……――


「俺の腹の中で、無限に苦しんでくれ♪」


――バクンッ――

――ズズズッ――


瘴気を、血肉を、魂を食らう、喰らう……悪食の犬が、暴食の猪が、蟲が、血肉を、家々を貪り、影が飲み込む……そして。


――……――


土塊の壁が崩れ去ったその場所は、〝何もなかった〟、叫び惑う人も、人の住まう家も、血も、肉も、草木すらも無かった。


「ン〜ン〜……プッ、不味い……ま、屍肉の補充程度には成るか」


蒼く、青く光る月……現実でも滅多に御目に掛かれない、美しい蒼月。


「月夜の原石……さて、どうなるか」



















○●○●○●


「ん……んん」

(此処は……何処、温かい)


暗闇の中、温かな場所で、少年は目を覚ます。


「壁………壁?……アレ?――」

「……ん、お兄……」

「――ッ!?」


聞き慣れた、妹の声に反射的に目を向ける、其処には……昔見た、いや昔のように美しい、僕の妹がいた。


「な、何」

「んん……んぅ……ぅぇ、あ、れ?……此処は」

「お目覚めかね、狼の双子」

「「――ッ!?」」


妹が目覚めた、それと同時に僕達に声が掛かる、飛び起きた際には……1人の男が居た。


「半死半生からものの数時間で回復とは……随分とまぁ、高い治癒能力を持っているなぁ」


黒い、黒い綺麗な服を着た、紫の目の黒髪の男が、僕達を静かに、愉しげに見ていた。


「疑問も有るだろう、俺が誰なのか、此処は何処なのか……まぁ、取り敢えずだ、ホラ」


――ゴポポッ――

――フワッ――


男の言葉と共に、黒い影が蠢く、そして


「腹減ってるだろう、飯でも食おうか、デザートも有るぞ、俺特製のな♪」

「「――ッ!?」」


見たこともない、美味しそうな匂いのする御飯が眼の前に現れた。



●○●○●○


――ガツガツガツッ――

――モグモグモグッ――


(良く食うなぁ、凄い食いっぷりだ)


口に肉を運びながら、凄い勢いで皿を平らげる二人を見る……銀髪の赤眼の男子と女子、顔立ちは似ているがその性格は案外似ていない。


「美味いか?」

「ッ……(コク)」

「ッ美味い!」


少年の方は、かなり素直だ……と言っても警戒心は有るらしいが、対して少女の方は……口数は少なく、警戒心の高い……フフフッ。


「うん、そうだな……良し、お前は〝月華(げっか)〟、お前は〝夜雲(やぐも)〟だな」

「「……?」」

「名前だよ、何時までも少年少女呼ばわりは面倒だ」


静かな月の様な、美しい華を持つ少女、月華。

月を守る様に隠す雲の様な少年、夜雲。


我ながら良いネーミングセンスだと思わないか?思わない?あっそう。


「不満かね?」

「「……名前」」

「……宜しい、でだ疑問があるなら、デザートの序に応えるが?」

「……何で助けたの?」

「お前等が〝使えそう〟だから、暇潰し、そんなとこだな」

「誰?」

「ハデス、しがない悪魔だよ」

「……使えそうって言うのは?」

「俺の部下にする、異論も抗議も受け付けない、コレは確定事項だからな」


……もう無いか?


「ま、今は休め……あぁ、それと」


――ペチンッ――


「コイツ等がお前等の世話係兼護衛兼部下兼暫くの鍛錬相手だから、でベクター」

「コチラに」

「「――ッ!?」」


俺が霊騎士共を呼び、ベクターを呼ぶと双子が目を見開く、相変わらず意地の悪い奴だ。


「当面コイツ等磨いてやれ」

「畏まりました」

「俺はちょいと寝る――」

「あの!」

「――ん、どうした?」


席を立ち踵を返すその時、夜雲に呼び止められる。


「助けてくれてありがとう!」

「……ありがとう」

「……フッハッハッハッ、礼は働きで返せ、精々強くなって俺を楽しませてくれよ?」


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