表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:狂い堕ちるは堕天の穢れ
62/479

天を驕る者

――カツッ……カツッ……――


道をただ進む、目新しい事の無い、瘴気に汚染された空間を只管に。


――バキンッ――


壊れた魔動機の腕を踏み潰しながら、或いは脚か、何方にせよ、俺の前に存在する、ガラクタを壊して進む。


――カツッ……カツッ……――


『ウアァァァッ』


色濃い瘴気から、怨嗟の声が響く……在りし日の惨劇、その残滓を〝喰らい〟ながら、その道中を進んでいく……すると、開けた場所に出た。


――カツッ……カツッ……――


巨大な鉄の扉……其処から漏れ出すドス黒い力の流れ……人の狂気の果てが押し込められた檻の扉に手を掛ける。


――パキンッ…パキンッ……――


扉に触れた直後、扉全体に刻まれていた魔力の鎖は容易く砕ける……何百年の産物なのだ、力も殆ど失っていたのだろう。


――ゴゴゴゴゴッ……――


瘴気の濁流が俺へ迫る……その先には。


――………――


〝童〟が居た、四肢は白銀の機械、背に白い片翼と、機械の片翼を持ち、心臓部に白い〝杭〟が刺さった童が。


「確かに、見た目は〝天使〟と言えるな」


見た目の美しさは芸術作品の様な雰囲気を纏っている、童の顔も、この世の物と言えぬ程美しい、だが。


「ソレの内に押し込められた〝色〟は悍ましいと言えるが――」

「ケヒャヒャッ!」


俺が言葉を紡いだその時、不意に上から声が響いた。


「殺ス殺ス殺ス――」

「随分と活きの良い悪魔だ……それも〝狂ってる〟」


瘴気に取り込まれたのか、悪魔の癖に取り込まれるとは笑い者だな。


「……ふむ、少し試してみるか」


狂い悪魔の腕を掴み、天使の方へ投げ付ける。


――ジュウゥゥゥッ――


「ギギャァァァ!?!?!?」

「――ほぉ!瘴気を出しながら〝聖属性〟も使えるのかッ!」


それもあの悪魔がダメージを受ける程の……成る程。


「〝闇属性〟と〝聖属性〟の2つを持った兵器……確かに、互いの弱点を補える兵器、しかもコレだけ強力な瘴気を発せられるなら確かに国を滅ぼすのは簡単だろうなぁ」

「ガアァァァ!!!」


無策に突っ込んでくる悪魔を掴み、そのまま天使の身体にぶつける、焼ける音を響かせながら、悪魔は絶叫を上げる。


「ギ、ギギャァァァッ!!!……ヤメ、ヤメロォッ……溶ケル……コノ我ガ……〝知食〟ノ〝セイラ〟ガァァァ……」

「ん、何だ、完全には狂い切って無かったのか……このまま魂も浄化して磨り潰すのは勿体無――」


――グシャァッ――


「……あ?」

「『遂ニ……遂ニ時ハ満チタリィ!』」


俺の腹を貫き、序に悪魔の頭蓋を消し飛ばしながら、童はゲタゲタと笑う。


――ジュウゥゥゥッ――


「チッ、封印出来てないぞアイル・バーンッ!」


――ボタボタボタッ――


血肉の塊が地面に落ちる……腹に空いた穴は、聖属性により焼け爛れ、赤く光を放っていた。


「『永ラク待ッタ……〝我〟ノ封ヲ……押シ込メテイタ檻ガ砕ケルノヲ……ソシテ、我ノ為ノ供物ヲ』」


そう言うと、その童はゲタゲタと笑いながら、俺の血肉を喰い始めた。


「『良イ……良い力だ……悪魔風情が持つには余りあるなぁ?』」


片言だった言の葉が、収まり、その声が鮮明に響く……俺の肉を喰った……つまり。


「俺の力を掠め取ったか……鼠が」


血肉を喰らう……ソレは魔物にとって最も手早く力を増す手段だ、竜の死骸、その一欠片でも食えば、どんな雑魚でも劇的な力を得られる……魔物が命を食うとはそういう事だ……そして今、コイツは俺の血肉の欠片を喰った。


「コソドロが、随分と品のない真似をする」

「『誰に向かって言っている』」


声が響いたその刹那、童の姿は搔き消え……俺の眼の前に居た。


「『去ね』」

「ッ!」


右腕の白銀が輝く……聖属性の攻撃に、ギリギリで躱し、飛び退く……厄介な物だ。


「触れただけで身体が溶ける……〝致命の一撃〟を通常攻撃のノリで放つのは反則だろうが……」

「『……何だ貴様?』」

「……あ"?何が?」

「『〝浄化〟は悪魔にとって毒であろう……なのに何故笑っている……〝不愉快だ〟』」


指摘され、初めて頬を触れる……血の匂いが鼻に届く、赤い指は、歪んだ口の端を、しっかりと触れていた……。


「本当だな……何故笑っている、何故笑っているのか……俺には分からん……ただ」


眼の前の、新しい〝玩具〟が、俺の知らない何かを持っている……ソレが堪らなく楽しいと思う。


「『狂人が』」

「狂人……あぁ、それで思い出したが、お前〝誰〟だ?……ユアネスだったか……その童の身体に誰が居るんだ?」

「『………ふむ、良かろう、世界を〝統べる(喰らう)〟我が名を教えてやろう』」


尊大な態度で俺の事を見下ろしながら、少女の皮を着た化物は告げる。


「『我は〝狂気の淀み(アーテ)〟…精神を蝕み、侵食し、世界を破壊する……〝狂気〟そのもの』」

「〝意思〟だけの存在ねぇ……随分と大層な事をほざく」

「『貴様等の道理で測ろうなど烏滸がましい』」


成る程、〝淀み〟ね……何かの比喩だと思っていたが、まさか〝自我を持った感情〟だとは思わなかった。


(しかし取り込む……ねぇ)


「……狂気と謳う割に、随分と清い力を持っているな?」

「『この〝檻〟のせいだ……我を押し込め、剰え我の力を"浄"の力に変える等……全くもって不遜である』」

「……ほぉ、〝変換〟だと?」

「『然り……我本来の力を奪い、檻に入れ、この肉人形に操らせようとしていたのだ……我を操る事など、誰一人出来んかったがな』」


ソイツはそう言いクツクツと嘲笑う。


「『しかし、我本来の力を取り戻すには〝不浄〟の力が必要だった……そして、漸くその時が来たのだ』」


そう言い気色悪い顔で俺を見据えるアーテ。


「『さぁ、今すぐ我に、その身を献上せよ、貴様の血肉を喰らい、この〝檻〟を〝器〟に変えてくれる』」

「断る」

(檻を器に……身体の構成は機械と人と天使の片翼と狂気の本体、聖属性を操って居るのは肉体、狂気本体が触れれば――)


――ドシュンッ――


(まず間違い無く溶ける、あの身体が檻なのは天使の力が狂気本体を上回っているから、だから動かせはするが、その性能はあくまで制限された物、本来のスペックを失った俺がこうして渡り合えていることから、守護者共がレギオン組めばそれなりの犠牲で倒せる程度)


「……」

「『ほれ、ほれッ!ほぉれ!逃げよ逃げよ、一時の余興に付き合ってやろう』」


攻撃を躱す、躱す……ギリギリで、その度に地面は抉れ、壁は削られ、轟音が木霊する。


(本体は狂気……〝生命持たぬ意思(主の居ない感情)〟……膨大な瘴気の塊……つまりは〝俺の捕食圏内〟だが……〝対悪魔・死霊〟に特化した〝聖属性〟の身体がその狂気を覆っている……直接触れようにも触れた途端に俺がダメージを受ける)


つまり、俺とアレは相性最悪だ。


(――攻撃チャンスは〝アレ〟しか無いか)


俺の想定と違った方法なら完全な詰みだが、しかし、最も可能性の高い勝ち筋だ……糸を針の穴に十本連続で通す様な、そんな〝完璧な操作〟を求められる。


――ゾワッ――


「〝面白い〟」


イージーゲームも、ソレはそれで楽しみ方が有るが、こういう高難易度なゲームと言うのも中々唆るモノが有る。


その為に今は………〝無傷で時間を稼ぐ〟。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ