表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:狂い堕ちるは堕天の穢れ
59/479

大喰の泥蛙

「良く考えたら俺死霊だから聖属性使えないじゃん」


さて、駆け抜けながら初歩的な見落としに頭を抱えつつ、漸く森を抜けた訳だが。


「ヒューッ、南は沼地か?……湿地以上に地獄だなぁ……」


萎びた速度を再度加速しつつ、沼地を突っ切る……うん。


――バチャバチャッ――



バチャバチャと服に染み付く泥に言い知れぬ殺意を抱きつつ、適当に湧いてくる蛙の魔物……泥毒蛙マッド・ポイズン・グロッグを踏み潰して殺す……お、コイツの毒は蛇よりも強いのか。


「麻痺毒、神経毒……泥で足は取られるし相手は毒で遠距離から攻撃してくるし、本当に不快なエリアだな」


沼地をふっ飛ばしてやろうか……無しだな、魔力が足りんし、多分リポップする、無駄だ無駄。



「毒はタラトの土産にでもするかぁ……彼奴ならヴィルと何か作るだろ」


――グェッコッ!――


「蛙はなぁ……死霊術で使うにしても利点が薄い、小さいし遅いし……毒を持たせた暗殺用なら使えるか、でもソレは蛇の方で事足りる……舌の先に棘でも付けて使えば行けるか?」


『ボスエリアに侵入しました!…【大食泥牛蛙ジャイアント・マッド・カウグロッグ】……〝飢泥のバクチャ〟と戦闘を開始します』


「っと、今度はあんな間抜けな死に方はしな――」


――ベチョォッ――


「……あ"?」


戦闘開始のアナウンスと共に俺へ纏わりついた桃色の、粘液を纏ったソレ……と同時に俺の身体が引き寄せられる。


――ブチッ――


ただでさえ不愉快なマップにストレスが溜まっていたと言うのに、その上蛙畜生の舌が俺へ纏わりつく、臭い、汚い唾液……そんな事をされたならば、誰だってブチ切れる。


――バツンッ――


「上等だよクソ蛙ゥ……お前には俺の考える最悪の方法で、尽くを侮辱し、殺してやる」


舌を引き千切り、クソ蛙を睨む……千切れた舌から青い液体を流し、痛みに暴れる蛙……だが、まだ足りない。


「まず、逃さない様に足を奪うか」


暴れ狂う蛙の頭を死なない様にブン殴り、泥の沼に沈める。


――ガシッ――


「まず一本」


――ベキベキバキバキブチィッ――


足を掴み身体の方へ向けて引き千切る、骨が騒音を鳴らし、筋肉を押し潰し、引き千切っていく。


「二本目」


今度は逆足だ……コレでコイツは逃げられない。


「後は……ん?」


――ネトォッ――


「……つくづく不愉快な畜生だなぁ?」


身体中から染み出るコレを掬い上げ、視る。


――――――

【大喰泥牛蛙の油毒】

毒性を帯びた蛙の油液、危機に瀕した際に体外へ放出されるそれは、下位個体よりも更に強力で、身体に纏わり付く。

――――――


「……油ねぇ?」

「『グェェッ!?』」


俺は蛙から離れ、蛙に向けて一つの"玉"を投げ付ける。


「〝起爆〟」


――カチッ――

――ゴォッ――


コレはヴィルが守護者の創ったアイテムを模倣し、改造した物……〝猛燃玉〟、前の〝爆破〟タイプでは死霊用の素材集めに向かなかったからな――ッ!


「『グ、グェェッ!!!』」

「ッ……やるじゃないか」


この焼き蛙……俺に体当たりしやがった……随分と賢い畜生だ。


――ジュウゥゥゥッ――


「熱苦しい、不愉快だ……しかし、今の一撃は気に入った♪」


まぁもう燃えてしまった訳だし、出し惜しみは不要だな?


「遠慮なく潰してやるよ」


――ベコォッ――


未だ燃えた身体に呻く蛙の腹を殴る……それは周囲の水を弾き飛ばして、蛙を遠い、マングローブに叩き付けた。


「まだまだッ」


――ドスンッ…ドスンッ…――


「まだまだまだッ♪」


拳で、殴り続ける……手応えが薄いまま、斬ったほうが早いと理解して尚。


――ドスンッドスンッ――

――ベキッ……メキッ……――


「フッフフフッ♪フハッハハハッ♪」


ただ、衝動に身を任せ、破壊する、コイツの最も得意な〝土俵〟、〝高い物理耐性〟を真っ向から否定する、破壊する……ソレが今は、堪らなく楽しい。


「『グェッ、グェェッゴォッ!?』」

「逃がすと思うか?」


蛙が逃れようと、千切られた脚を暴れさせる、ソレを踏み潰し、殴り続ける……。


――ゴリッ……ブンッ――


蛙の口から青い血液が吐き出される……一撃毎に、その量は増し……遂には――。


――ドスンッ!――

――ボキャアッ――


「『――ッ!?!?』」


蛙の腹を突き破り、腸を掴む……そのまま、それを引き摺り出し、身体の臓腑を全て潰し、抉り、引き抜く。



『〝飢泥のバクチャ〟を討伐しました!』


「―――ッ……もう死んだのか」


最後の臓腑を投げ捨て、俺は死骸を影に沈めた。



「ん〜……取り敢えず出るか、着替えたい……残す所も後一個だけだし、ソレ終わらせてからベクターに洗浄してもらおうか」


幸い服の予備は有るしな。








○●○●○●


――ピピッ――


『地上に不浄存在を感知、魔力スキャン……基準達成、魂魄強度スキャン……評価S……捕縛難易度…〝(高い)〟……捕縛可能と判断、強制誘導システムを作動し――作動し――作動――さど――』


――ピピピッ……ガーッ――


『ミツケタ、ミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタッ!……〝■〟ノ器ガ、アノゴミヨリモ更ニ強イ器ガ……漸ク時ハ満チタッ……コノ〝檻〟カラ漸ク出ラレル』


『――強制誘導システムを作動、S級〝鎮圧魔動機〟を編成します』





〜〜〜〜〜〜



――ガサガサッ――


南の沼地から東へ向けて疾走していた今日此の頃。


「――ンッ?……何だこの匂い……甘い?……薬臭いな……何かの毒……効かないから無視しても――」


ふと沼地では嗅いだことのない、奇妙な甘い香りが俺の鼻を突いた……その香りを無視して走って居た、その刹那――。


――バカンッ――


「ッ――!?」


穴が開いた……何の前触れもなく、だだっ広い大地にポッカリと。


「落し穴?――む?」


身体を拡張し、翼を創ろうとした時……その違和感が如実に現れた。


――グニュ……――


「身体が……いや、魔力が回らない?……あの〝匂い〟か……いや、それよりも……」


浮遊感と共に落下が始まる……明らかに〝意図的に俺を狙った罠〟……フフフッ♪


「何が待ってるんだ?」


湧いたワクワクを胸に、落下に身を任せ、到達を待つ……そして。


――ベチャッ――


十数秒後、大地に熱烈なキスをして、俺は潰れたトマトに成った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ