アジィのつまみ食い
「シャーッ……?……ッ♪」
僕の名前はアジィ……見ての通り蛇の魔物……種族は【黒毒幼蛇】って言うらしい、御主人が教えてくれた。
――パクッ――
何時も通り庭で遊びながら虫を食べたり、鼠を食べたり、毎日幸せな生活をしてるんだ……ダイエットは嫌だけど。
――パリパリッ――
今日も鍛錬が終わった後の事……ベクターさんが相手だったから余計に疲れた……じゃ無くてその後、何時も通り屋敷に入ってきた虫を食べたり、御飯をメイドさんから貰ってた時だった。
――フワッ――
「ッ!――キシャ!?」
ふと僕の鼻に美味しそうな匂いが漂って来た……昔飲んだ御主人の血みたいな、甘くて美味しそうな、力を貰える様な匂いが。
――ススススッ――
匂いの元を辿ると……其処は〝御主人〟の実験室からだった……此処は御主人とヴィルさん、ベクターさん以外は滅多に入らない場所、メイドさん達は『入ると死にかねないから入らない』って言ってた……御主人は『強過ぎる魔力は身体を壊しかねないから、メイド達は入れない』って言ってたかな?……取り敢えずそんな場所だった。
――スルスルスルーッ――
エ?何で入ってるのって?……美味しそうな匂いがしたからだよ!……危険?…ふふん御主人も言ってたよ!『危険だと分かっていても溢れ出る激情は理論を制してしまう』って!意味は分からないけど前に僕みたいな事してベクターさんに怒られてたから間違いないね!
――キィッ――
「キシャッ♪」
扉を開けた瞬間、美味しそうな匂いが僕を包んだ……まるで御主人の作るクッキー、ベクターさんが作るサンドウィッチ!とても美味しそうな匂いがする!
「シャー?――ッ!」
匂いの先には……有った、赤黒い結晶が、魔石かな?
――スルスルッ――
『殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺』
「――ッ?」
鼻で突付いてみると変な声がした……何だったんだろう?
「キシャァーッ♪」
取り敢えず、いただきまーすッ♪
――パクッ――
――ドクンッ――
ッ!?……こ、コレは……や、ヤバいッ!?
――ドクンッ――
「キ、キ、キ……キシャ〜♪」
お、美味しい!凄く美味しいよコレ!?御主人の血を飲んだ時位美味しいッ、ソレにコレ――。
――ポロポロッ――
僕の身体をちょっと大きく成った!ヤッターッ、コレでスレイから『ちびっ娘』扱いされないかも!
「ん?……何で扉開いて――アジィ?」
「キシャッ!?」
ギャーッ!?御主人!?や、ヤバい御主人の部屋の物摘まみ食いしたのバレる!誤魔化せ――無理、ムリ!だって一個しかないもん、絶対バレる!怒られる!
「……〝食ったな〟?」
「キ、キシャ〜?」
いやいや、食べて無イヨ?そもそも何を?僕は確かに机の上に美味しそうな物がある気がしたけど!ちょっと舐めただけだから!
「……」
「――ッ!」
ご、御免なさい!ぐ、グリグリは嫌だー!!!
――ポフっ――
「―――……キ、キシャ?」
「【黒小竜蛇】か……思ったより早くに適応出来たな、アジィ」
あ、あれ?怒らないの?
「ん?……何でそんなに怯えて――あぁ、摘まみ食いして怒られると思ったのか?」
「キ、キシャ」
「元々お前が成長した時に、それを補助する為に作ったモンだからな、お前がソレを食えたなら俺の設定した基準を満たしたって事だろう?……結構結構、コレでより強く成れたなアジィ」
ほっ……怒られなくて良かった〜。
――ムニッ――
「また肥ったか?」
「……キ、キシャ―ッ!!!」
じょ、上等だコノヤロー!?れ、レディに体重の話は御法度でしょうがァァ!!!




