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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第一章:獣の厄災と強欲の魔女
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死霊創造と略奪準備

――グチュ…グチュ…――


「良し、中々悪く無いな」


説教明けから少しして、ログアウトし、雑事を済ませてログインし直した現在、俺の手には骨と目玉で出来た四脚の死霊が居た。


「主様、それは?」

「〝観測機〟…戦闘能力と耐久性、機動力を捨てて、隠密性に特化させた小型監視死霊だ……名前は……〝監視者〟で良いか、この監視者の最も優れた点は、〝視野の共有〟だ」

「視野の共有ですか」

「そう、この小型死霊を至る所へ配置し、観測させる、特定の設定を施し条件に合致した個体を見つけると俺へ視界を共有させる、その共有先は選択自由だ」

「死霊術にはその様な使い道が有るのですね……初めて知りました」


俺の説明にベクターが驚嘆の声を上げる……ん?


「いやまて、俺の死霊術って変なのか?」

「世間一般……というより私の記憶に存在する死霊術の文献では死体を死霊に作り変え、動物も死霊に、偵察は小鳥等の小さく機動力の有る物を、最も優れた死霊術師は龍を配下にしたとか」

「………馬鹿だろ、そいつ」


いや、純粋な死霊術だけなら間違い無い、うん間違い無いが、しかしこんな伸び代の有る術を何故研究しなかった!?


「はぁ……ベクター、死霊術の真価は即席の兵力では無い、それは長所だ」


俺は溜息混じりにベクターへ説明する、そうすることで自身の中で明確にその使い方を覚え込む為に。


「死霊術の真価は作成した死霊の〝改造〟に有る、俺がお前を改造した様に、より高次の種族に、より優れた個体に、素材とベースが有ればほぼ際限なく強化出来る……勿論、その改造も多岐に渡る、ベクターには素材をそれなりに入れる事でそれだけの力を満遍なく振り分けたし、俺は明確に強化に使える呪物を取り込んで強化した、〝コイツ〟の使用した素材は人間の目玉と骨……魔石だけだ」

「ッ! では」

「そう、そんな程度では既存の死霊術を使ったとてただの動く目玉程度でしか無い……良いかベクター、力を得るにはそれなりの代償を求められる、ベクターは〝生命の消滅する可能性〟と〝それに見合う強さ〟を、俺は〝俺が消滅する可能性〟と〝呪物の同化〟を、死霊術に限った話ではない、才能、発想、そんな補正は数あれど、皆が何かを得るには相応の対価と代償を求められる、剣を知らぬ者が剣士へ至る為に〝時間〟を代償にした様に、物事の根底は〝対価と代償(ギブ・アンド・テイク)〟だ」


そして手に包まれた目玉を見せる。


「コイツは自己の能力を殆ど捨てて、監視能力だけを得た個体、言うなれば肉の機械だ」

「………成る程、素晴らしい発想です、我が主」

「と、死霊術講義は此処までにして、早速コレを撒く為の死霊を作ろうか」


インベントリから狼の死骸と、人間の腕を取り出す。


「〝死霊作成〟」


瘴気が死体を包み……直ぐに晴れる。


「「「グルルゥ」」」


狼の身体に、二本の腕が引っ付いた狼、単純な構造故にその性能は微細な変化しか無い。


「〝運び屋(ポーター)〟、〝監視者〟を総て各地へ運べ、無くなり次第帰還、負傷した人間、或いは動物が居た場合は殺せ、仕留めきれなければ無視して帰還、オーケー?」


「「「「ワウッ!」」」」


俺は死肉で造った箱にありったけの監視者を入れ、運び屋に載せる。


「〝監視者〟、お前達は配置されたエリアの監視ポイントを見つけ其処で監視しろ、オーケー?」


『―――――ッ!』


「〝行け〟」

「「「「ワウッ!」」」」


四方に散る狼を見送ると次に鳥の死骸を取り出す。


「さ、次だ……〝死霊作成〟……お前は上空から街へ侵入、気配は漏らすな、〝監視者〟、お前達には追って説明する、夜はもう短い、急げ」


「キィ!」



鳥が飛び去る……脚に籠を掴んで。








〜〜〜〜〜〜〜


「オーケー……悪く無い視界だ、主要エリアは……領主館、冒険者ギルド、生産者ギルド、教会、後は……見た所厳つい装備のプレイヤーが居る屋敷か……〝命令、今から送るエリアに重点的に監視者を撒け〟」


命令と同時に続々と監視者が飛び降りる……軽量故に落下ダメージの無いのも監視者特有の利点だな。


○●○●○●



「………〝監視者〟を撒き終えたな、〝帰還(コール)〟……さぁ、ベクター……こうしてある程度目的地の目処は立ったわけだが」

「如何致しましょうか?」

「……現在、東西南北に魔物のボスが1匹ずつ存在する。1、西の廃教会の奥に存在する漠然と存在する森の中に住まう虫の〝女王〟。2、東の平原を進むにあたって道を阻むように存在する〝大猪〟。3、南の湿地帯へ続く道に存在する〝大蛇〟。4、北の山々を住処とする〝大鳥〟……既存の魔物とは比較に成らない存在、故に異界の人間共はその四獣を討伐するに至らない……既に何名もが挑み、朽ちている……其処で、だ」

「その四獣を討伐し、配下にする……と?」

「そうだ、あの四獣は明確に個として存在している、その魂は普遍的な物ではなく、ベクター、お前に近い、自然発生した〝名持ち〟個体、コレを使わない手はない……とは言え、だ」


俺は手を広げて身体を見据える。



「このボロ切れを何時までも着るのは不可能、それがボス討伐ならば尚の事……俺達の装備のグレードを上げなければならない、ベクター……何か意見は?」

「………では、僭越ながら、先程街に放たれた〝監視者〟の視界と、偵察用の死霊鳥を使った所、下水処理の通風口と入口を発見致しました」

「……」

「今晩の丑三つ時に侵入、閉店した生産施設からアイテムを略奪し、生産に特化した死霊を造る……というのは?」

「………フフッ♪流石ベクター完璧な回答だ、時間の指定も間違いではない、今晩俺達は街の設備を幾つか掻っ払う、無論生産者用の機材諸々をな……其の為に幾つか検証して行こう」

「承知致しました」



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[気になる点] "観測機"、戦闘能力と耐久性、機動力を捨てて、機動力と隠密性に特化させた小型監視死霊だ この冒頭部分の機動力を捨てて、機動力と隠密性に......の部分がに矛盾しているのが少し気にな…
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