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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第三章:燃える燃える、骸は燃える
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精霊と悪魔の盟約

「――で、こうやって運ばれてきた訳だが」


アレから暫くして、漸く人の話を聞く様になった精霊王達と茶会を開きながら事の顛末を話す……四人が四人別々の反応をする、緊張に顔を強張らせて、目を閉じ低く唸り、美味しそうに菓子を頬張り、穏やかに茶を啜りながら……流石に驚かせすぎたか?


「どうした、紅茶は苦手か?」

『ィゥッ!?……だ、大丈夫だ、問題無いッ』

「………」

『ハデスさん』

「……ナンダ?」

『……』

「………(スッ)」

『(ニッコリ)』


クソッ、こんなに良く鳴る玩具が有るのに手を出せないとは……俺の悪魔生一生の汚点だ――。


『すまなかった』

「んん?、急にどうしたグリシア」


俺の対面に座る、土の精霊王〝グリシア〟がふと俺を見据えそう呟く、すまなかった……何故謝罪が必要なのか、分からない。


『報告に聞いた、悪魔が火竜を倒してくれたと、あの子達がそう言っていた、なのに私は信じられなかった……悪魔とは欲に溺れ、他を顧みず、我欲を満たすためならばどんな外道にすら手を染める〝悪〟だと、そう決めつけ、目を曇らせていた』

「……それで?」

『ハデス、お前に対して、私はとても無礼な事を考えていた……故に私は謝罪する、すまなかった』

『わ、私も……』


グリシアとミゼアがそう告げる……ふむ……?


「いや、それの何が悪いんだ?」

『『……は?』』


失礼……何故?……無礼?……何で?。


「その認識の何処が間違い何だ?……悪魔は文字の通り〝悪の魔〟だ、人を誑かし、破滅させ、その魂を喰らう、己の欲の為ならば世界すら壊すだろう、そんなロクデナシの腐れ外道が〝悪魔〟と言う存在だ、無論俺も例外無く」


そう言う存在をそう認識して何が悪いんだ?


「善も悪も、所詮は個人の中で裁定される区分でしか無い、そして万人が思う善悪は即ち、社会の大多数が思考し考え、導いた故の結論だ、俺はソレを否定しない……〝どうでも良いからな〟」


善悪賢愚、そんな者は俺が俺のルールで決めれば良い。


「俺は〝俺が楽しいと感じた事〟を〝善〟とする、〝つまらない、退屈だ〟と感じた事を〝悪〟にする、人類の敵と言うがその塵の中に少しでも目を惹く〝宝石〟が有れば拾い上げるし縋り付く〝ゴミ〟は捨てる、それが〝(悪魔)〟だ」

『『………』』


俺の言葉を呆けた様に聞き、見やる二人、残りはマイペースなもんだな。


「人類を滅ぼすのも〝面白い〟と思ったからだしなぁ……つまりは自分の好きに俺を定義すれば良い、否定も肯定もしないし、その定義なんざ知ったこっちゃないがな」


そして、その定義で言うならこの二人は〝善〟だ。


「研鑽を怠らず、種の強さに過信せず、絶えず自身の持ち得る才を拡げる、俺はそんな奴が好きだ、面白いからな……無論お前等もその内だ」


あれだけの力量、そしてソレに退けを取らないだろう3人も、種族としての力と呼ぶには手垢の付きまくったあの形……とても見応えの有った。


「……と、そんな面倒な話は投げ捨てて、お前らって〝龍〟とどんな関係何だ?……〝盟約〟云々って話はリアナから聞いたんだが」

『面倒な話……あ、あぁいや、分かった答えよう……我々〝精霊〟と〝龍〟は〝旧時代〟から互いに協力し合う間柄だった……始祖の精霊王〝ミレーア〟様と龍の始祖〝グルムガンド〟様が夫婦になった事がそれを更に強くしたんだ』

『グルムガンド様は龍達を纏め上げた御方で、その御方の命ならば龍達は大手を上げて果たす、また逆も然り……御二人が〝神〟へ至った後は我々現代の〝長〟が2つの種族を纏め上げ、互いに共生関係を築いている、そして彼等には自然の恵みを、我々は人も外敵も寄せぬ〝安住の地〟を得たのだ』

「ふむ、だからあんな人気のない場所に……しかもあれだけ環境が良ければ竜も寄ってくるか」

『我々が居ることで其処には高濃度の魔力が集まる、竜にとっては最高の環境だろうな……そういう外敵は龍が間引いてくれる……が、最近は龍の者が滅多に現れんのだ』

「ほう?……それまた何で?」

『分からん……龍は強い、竜よりもな、並大抵の魔物等歯牙にも掛けん強さの筈なのだが』

「……へぇ♪」


セレーネ(バトルジャンキー)の口にクッキーを押し込んで、思案を巡らせる……うん、そうだな。


「んじゃあ、俺とも〝盟約〟でも結ぶか?……龍と同程度とは行かんが先の竜程度なら何とか出来るぞ?」

『ッ真か!?それは願ってもな――』

『対価は何ですか?』


いままでニコニコと微笑んでいたリアナが、俺を見据える……その気配は穏やかだが、真剣さも在った。


「お前達は何が欲しい?」

『私達は〝この場所の安全〟と〝精霊の保護〟が欲しい』

「ふむ……つまりこの領域……あの湖周辺か?」

『はい』

「ふむ……じゃあそうだな……お前達〝魔石〟作れるよな?」

『勿論です』

「素晴らしい、それじゃ〝高品質な魔石〟をくれ、そしたら湖周辺に俺の軍を駐屯させておく、並大抵の魔物なら問題無く対処出来るし、竜は俺が潰す、俺が居ない場合でもセレーネとベクター辺りがもうちょい強くなれば問題無い」

『……本当にそれだけですか?』

「まぁな、俺としては強力な死霊を創るのに〝高品質な魔石〟が不足気味だし願ってもない」


今まで死霊を創る際、ネックだったのが死霊に使う魔石の存在だった、俺個人で生成出来るのは一日に3個程、それも性能が並程度の物だ……単純に魔力を圧縮して結晶化させる技術が分からない。


その点、精霊は事魔術においては〝最強〟とすら言える、精霊自体が魔力の塊故に、人間の様な魔力のロスが無く、操作性が並外れて高い。


「この条件で構わないか?」

『……そうですね、コチラとしては願ってもない好条件です』

「それじゃあ、〝やろうか〟」


何の変哲も無い一枚の羊皮紙、ソレに羽ペンで条件を書いていく、そしてリアナ達精霊がそれを確認する。


そして、魔力を込めて、自身の名前を書く。


『〝契約〟……それも簡易では無く魂に干渉する高度な契約式ですか……流石悪魔と言うべきですか』

「下手に小賢しい真似を出来んだろう、コチラの方が何かと都合がいい」


俺は腕に増えた契約の紋章を擦りながら、そう呟く……久し振りにリーアの所へ行ってみるか?


「此方としては単なる偶然だったが……都合の良い取引相手が見つかって良かったよ」

『私も、変り者の友人が出来て嬉しいですよ』

「さて、もう少し茶会を楽しむのも良いが、俺も予定が有る、御暇させてもらうぞ?」

『分かりました』


リアナ達にそう告げると、後ろに木の扉が出来る。


『出口は此方で……濡れて帰るよりは良いでしょう?』

「それは助かるな……おいセレーネ、行くぞ」

「むぐッ!?むごごッ!!!」

「………」


菓子をありったけ詰め込んで駆け寄るセレーネに少しの呆れを抱きながら、俺達は木の扉を潜った。




『新たな称号【精霊王の友】を獲得しました!』


―――――――――

【精霊王の友】

それは精霊の長との友情の証であり、同等の存在として認められた証である。


条件:精霊王にその力を示す

効果:精霊からの心象が上昇

効果:精霊魔術の威力が上昇

―――――――――




〜〜〜〜〜〜



――ピチャッ――

「よし、着いたな」

「いやぁ、まさか火竜を見つけたと思ったら精霊王と会えるとは思わなかったぜ」


俺とセレーネがそう言いながら帰路に着こうとした、その時。


『――ッ!主様漸く繋がりましたか!』

「「ッ!」」


ベクターの緊迫した声が脳裏に響いた。


「話せ」

『守護者達が襲撃してきましたッ!……〝本拠地〟です!』


報告を聞きながら、俺とセレーネは砦へ走っていた。


「被害は」

『低級の屍人は全滅、残りは戦闘員が遅滞戦闘を、戦闘能力の無い者は別拠点へ避難させています、工房の物資は六割程回収し別拠点へ移し、脱出するだけです』

『そのまま全員脱出しろ、最悪物資は燃やして良い、相手の規模は?」

『1000人です、どの守護者も上等な装備をしています』

「成る程、良くやったベクター、良く休め」


ベクターからの通信を切る……襲撃、襲撃か。


「「ワクワクするな」」


本拠地に殴り込みを掛ける規模、しかも相手は上等な装備を使っている……前と同規模だがその戦力差は何百倍も上……クッフフフッ♪


「楽しみだなァ」

「あぁ、楽しみだ」


森の中を駆けながら、俺とセレーネは口角を歪めて笑っていた。

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