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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
終章:悪神討つ英雄譚
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進む者、遡る者

――カッ――


強大…否、強大過ぎる故にある種の〝悍ましさ〟すら覚える程に濃密に蠢く〝魔力の光条〟がオレの身に迫る。


――ガチャンッ――


「開け〝銀の扉(シルバーズ・ゲート)〟!」


その魔力の光条を、〝空間〟に生み出した〝扉〟へ押し込めて対処する。


「ハハハッ、良いぞ良いぞ面白いッ!」


前々からそれなりの〝戦意〟や〝覚悟〟は有ったが、時間切れが目に見え始めた今、その〝必死さ〟は段違いだ。


――ダンッ――


「ハァッ!」

「ヤァッ!」


ガレリアの〝息吹〟を遮蔽に、オレへ2つの刃が迫る…黒と白の〝刃〟が。


「開け〝銀の扉〟――〝重ねて命じる〟」

 

オレの言葉に〝銀の扉〟が現れる。


――キィンッ――


「〝扉を分かて〟」


――その出口を〝二つ〟、クオンとミアへ向けて。


「「ッ!?」」

「さて、どうする?」


二人はその銀の扉の〝先〟を見て、その身体を反射的に守りで固める…その直後。


――カッ――


「「ッ〜〜〜〜!?」」


二人を〝ガレリアの息吹〟が襲う…その息吹は分かたれて尚余りある魔力で影すらも消し去り、二人を包み込む…。


「「ッ――カハッ…!」」

「――おぉッ、まさかの生存か、塵も残らず消し去られると思っていたが、存外鍛えているな!」


その結果は、予想外にも二人共その原型を留めて〝生きていた〟…しかし流石に満身創痍か、そのまま地面へ向けて落ちて行く。


「トドメは――」


――ブンッ――


「させんハデスッ」

「――クゥッ、重いな、腕が痺れる」


トドメを刺そうとその手を二人へ向けた瞬間、真横から凄まじく重い〝一撃〟がオレを襲う。


「今だ〝リリー〟よ、我毎やれ!」

「はいッ――〝灰燼ノ蒼〟!」


そして〝龍〟の特徴を多分に纏った人型…所謂〝龍人〟の姿と成ったガレリアがオレの身体を掴み、リリーが放った〝蒼〟へ投げ飛ばす。


――ボムッ――

――ジュウゥゥゥッ――


「――ハハハッ♪…熱い熱いなッ、だがまだ足りない!」


――カチッ――


「〝肉体加速(フィジカル・ブースト)〟…」


――グチュグチュグチュッ――


「「「■」」」


屍肉の身体を蒼炎で焼かれながら、オレは無数に生やした〝口〟と膨大な魔力、そして〝肉体の時間〟を加速させて〝高速〟で詠唱を紡ぐ…その速さは、俺の発する声が〝理解不能な一言〟であると錯覚させる程だったのだろう。


――バシュンッ――


「え!?」

「――ハッ、リスキーだが使えるな…ゲホッ…熱で喉が焼かれてしまったか――まぁ良いッ」

「ッリリー〝落ちろ〟!」

「ッ!?」


炎が消し飛び、リリーは呆気にとられてしまう…その瞬間動くオレの行動にガレリアが叫び、その声にリリーが反射で下へ落ちる。


――シュッ――


「っぅッ!?」

「――良いね、近接戦の不得手もかなり改善されている…やはりお前を選んで良かった♪」


見上げるリリーを見下ろしながら、リリーの顔を掠めた腕を振り降ろす。


――ズパンッ――


「ッ!…日も浅いと言うのに良くやるッ」


しかし振り下ろされた腕はその思惑とは裏腹に宙を舞い、鮮血の〝紅〟では無く腐り果てた〝黒〟を空に零す。


――ガッ――


「フンッ!」


そしてその腕を飛ばしたガレリアはオレの腕を掴みその手と反対の腕を強く握り――オレへ叩き付ける。


――ドッ――

――ベキベキベキッ――


たった一撃、その一撃がオレの身体の骨という骨を砕き、臓腑と言う臓腑を破り潰す…つくづく、龍と言う生き物は出鱈目だ―。


――ベチャッ――


「――ゲボッ…!?…ゴホッゴホッ…危ない危ない〝死に掛けた〟…!」


――ヒュッ――


「そう簡単に首はやらんよ♪」


――ガッ――


地面に叩き落され早々に、オレを狙う刃を掴み止める…其処には飢えた獣の眼をした〝三郎丸〟と〝ニノ〟が居た。


「「チッ…〝今〟!」」

「ほぉ?」


その二人の刀を止め、そのまま拮抗するその最中、三郎丸とニノが舌打ちと共にそう叫ぶ。


――ズドォォンッ――


その瞬間〝空〟から、大地から〝三つ〟の攻撃がオレを穿つ。


「――成る程、成る程…〝三郎丸とニノ〟でオレの手を抑え、その背後と上空から〝ガチタン〟、〝ダルカン〟、〝ガレリア〟が〝挟撃〟…見事な〝波状攻撃〟だ♪」

『ッ!?』


――ハッハハハッ♪――


愉快だ、面白い、心地良く、〝満ち足りない〟…。


――ハハッハハハッ♪――


煮え滾る黒血が腐れた肉の中を巡る、冷たい心臓が鼓動を打ち、心臓に秘めたる〝衝動〟が…。


――ゾワッ――


『ッ!?』

「〝肉体加速〟――〝精神加速〟――」


〝暴れ狂え〟と叫んで止まない。


――ブチッ――


「「「「「■」」」」」


増やした〝口〟で、呪詛を紡ぐ…氾濫する瘴気と呪詛がオレを中心に吹き荒れる。


「『チッ…引き離された…!』」


〝音〟が聞こえる…酷く遅い、酷く緩慢な〝音〟…その場所へ目をやる…〝居た〟…。


全てが遅くなった世界で、〝オレ〟だけが並の速度で動ける世界で…オレは〝駆ける〟…。


――叫ベ――


〝呪詛〟と〝祝詞〟を吐き連ね折り重ねながら。


――壊セ――


緩慢に動く〝奴等〟を、その希望を己の力で。



―― ――


「ッ!?――消―」


――ブンッ――


彼等にすれば、きっと…オレは〝消えた〟様に見えたのだろう…違う。


〝ただ彼等の認識よりも早くに動いただけだ〟


まだまだ、まだまだまだ〝足りない〟…。


更に〝速く〟、もっと〝速く〟…。


四肢の〝負荷〟をゴリ押しで修復しろ、同時並行で呪詛と〝詠唱〟を続けろ。


もっと、もっとモットモットモット――。


問題無イ…〝オレ(化物)〟ナラバヤレルダロウ?…。



●○●○●○


――コオォォォォッ――


「――全く…〝狂ってる〟にも程が有るだろう?…」


遥か遠くの〝戦場〟…ただ一瞬一瞬にチラリと映る〝影〟の存在を見ながら、プロフェスは呆れを紡ぐ。


――カチカチカチカチッ――

――キュィンキュィンキュィンキュィンッ――


「――良し…〝出来そうかい?〟…〝グリモワール〟…〝レーテ〟?」

『キヒッヒヒヒッ!――無論、無論であるッ、しかし面白きかなッ、まさか時を超越したこの狭間、かの〝屍神〟の恐ろしき〝理法〟が、我々にとって〝都合が良い状況〟へ転ぶとは!』

『此方は何時でも、しかしまさか…あの〝化物〟の術が思わぬ影響を与えてくるとは思いもしなかった』

「確かにそうだが急ごう…もう〝時間〟が少ない…〝時間の無い世界〟で時間に追われるのも妙な気分だがね」


プロフェスはそう言い、目を閉じて〝陣〟へ入り言葉を紡ぐ。


「〝我は真理を拓く者〟、〝魔の根源を垣間見た者〟」


――キィィンッ――


吹き荒れる魔力が天を轟かせる…明確な異常はしかし、ハデスの目に映ることはない…。


――……――


その魔力を覆い隠す様に、強大な〝魔力〟を放つ〝(ガレリア)〟が居るが為に。


「〝我は今、人ならざる〝法〟を以て〟…〝禁忌を侵そう〟…〝狂乱ノ魔導書よ〟…〝その禁忌を唱え〟」

『■■■■■■…』

「〝世界ノ記書よ〟…〝その遥か昔を遡れ〟」

『■■■■■■…』

「〝かつて人と神が交わりし時代より、我が身へ宿れ〟…〝偉大なる黒白よ〟」


そうしてプロフェスは言の葉を紡ぎ――。


「〝人柱憑依〟――〝■■■■〟、〝■■■■〟」


〝禁忌の術理〟の、名を紡いだ…。

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