悪魔と西の竜
――ブゥンッ!!!――
『GIGI!?』
「形状、性質の変化……靭やかな鞭の様な剣、硬く面で押し潰す重打撃……その上癒えぬ傷を与える……嫌な剣だ、ゾクゾクするな♪」
『余り褒めるな、むず痒くて敵わん』
西の森をフラフラと歩く……道中魔物とプレイヤーを殺しながら……やはり経験値が低いのか中々レベルが上がらないな。
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【ハデス】LV56
【偽屍の悪魔】
生命力:26000
魔力 :26000
筋力 :18000
速力 :15000
物耐 :15000
魔耐 :18000
信仰 :8000
器用 :18000
幸運 :11000
【保有能力】
〈悪魔の眼〉LV:3
〈屍魂の外法〉LV:3
〈呪物作成〉LV:2
〈影魔術〉LV:4
〈体術〉LV:7
〈杖術〉LV:6
〈剣術〉LV:2
〈気配察知〉LV:8
〈魔力察知〉LV:8
〈悪食〉LV:3
〈聖属性脆弱〉LV:8
〈状態異常無効〉LV:MAX
【固有能力】
〈冥現ノ招門〉
【保有称号】
〈禁忌を担う者〉〈外道〉〈殺人鬼〉〈狂気を嗤う者〉〈冥現を繋ぐ者〉〈魔術を拓く者〉、〈悪神の祝福〉
―――――――――
――グニャグニャ――
「「「う〜む……どうにか自己強化出来んものか……?」」」
そう言えば悪魔は人間の魂を喰って強化するのか、リ何とかもそんな感じだったし……魂自体が豊富な経験値を持っているのか?
「「「なぁフェイディア、悪魔の強化ってどうやるんだ?」」」
『せめて元に戻ってから話してくれないだろうか、混乱する』
いやすまんね、コレが中々面白いんだよなぁ○○リ神ごっこ、虫螻を轢き潰すのが爽快でさ。
『全く……悪魔の力の付け方は、大まかに2つ……高位の存在の力を取り込むか、或いは生命から溢れた負の力を吸収するかだ』
「ほう……大体何時もと同じか……負の力、負の力ね〜?」
『主よ、お前は我の素となった玉石を思い出しただろうが、主の現状を考えると薄すぎる……より高濃度の〝負の力〟が必要だ』
「むぅ……そう上手くは行かんか」
――『グオォォォォンッ!!!』――
「ッ!聞いたかフェイディア!」
『あぁ、間違い無くアレが件の面白い奴とやらだろう』
遠くから響く声、いや咆哮……気配察知にも魔力察知にも引っ掛からない程遠いというのに、此処にまでその声が届いている。
「飛んで行ったほうが早いか?」
――ギュチチッ――
――バキッ――
「う〜んと……お?」
――ドォンッ――
空から周囲を見渡す……すると、遠くで砂埃が舞う。
「見っけ♪」
――バサッ――
翼を動かし、猛スピードで森を過ぎる……フフフッ♪
「相変わらず、我ながら堪え性が無くて困る♪」
胸の内に沸き立つ〝悦〟の色に、少なく無い呆れを浮かべて、俺は空を突き進んだ。
○●○●○●
――バキッ……ブンッ――
「グルアァァ!!!」
森の一角で、〝一匹の竜〟が暴れていた……その目に苛立ちを込めて、その爪に殺意を込めて……酷く荒ぶっていた。
「ハッハーァッ、やっぱドラゴンは良いなァ!」
その声と共に、竜が少しよろめく……竜と比較するには余りに小さい存在が、握り拳を固めて口角を歪めていた。
「ハデスの野郎……折角教えたのに全然来ねぇでやんの……折角ドラゴン見せてやろうと思ったのによ……」
そう不貞腐れ、口を窄める赤髪の美女が石を蹴る…経ったそれだけの愛らしい動作、それなのに、飛翔した石は壁を穿ち、凹ませる……。
「グルアァァァァァッ!!!」
「五月蝿えぇぇぇぇぇ!!!!」
目を血走らせて咆えるドラゴン、対しそれと同規模の大きな声で叫ぶ女……その声はぶつかり合い、周囲の木々を軋ませる。
「グルァッ!!!」
そして始まる竜の猛攻、爪が地面を穿ち、尾が木々を薙ぎ倒す、牙は飛翔する餌を食い殺さんとガチガチと鳴り合い、暴風の様に大地へ傷を生む。
「っと、危ねえ危ねえ……やっぱ種族的な身体能力はバケモンだよなぁ、竜って」
その光景を尻目に、笑みながら躱す女が、ふと目を丸くした……木々の隙間から、小さな光が、仄かに光る子供がヒョコリと現れ、まるで竜が迷惑だとでも言う様にコチラを見ていたからだ。
「うぇ、此処〝精霊〟居るのか……そりゃ竜も寄って来るよなぁ」
〝精霊〟、女は過去に見た〝知り合い〟の肩に留まり、バリバリとクッキーを貪りながら喧しく叫ぶソレを思い出し、ふと口を緩ませる。
「ギルネーデなぁ……彼奴にもまだ勝ってないんだよなぁ……ん?」
攻撃を躱しながらそう思い返す女は、ふとその精霊がフヨフヨと揺れ動いているのを見た。
「お〜!また新しいのが来たか!ホレホレ俺特製の焼き菓子だぞ〜?」
『わ〜い♪』
其処には幾匹もの精霊に集られながら、木の枝に腰掛け、コチラを見ながら焼き菓子を精霊に配る……〝ソイツ〟が居た。
「……は?」
「おいセレーネ、それヤバいぞ?」
「グルルォン!!」
一瞬の硬直、居ないと思っていた男の登場に脚を止めた瞬間、それを好機と竜の尾が直撃する……木々を薙ぎ倒しながら吹っ飛んでいく女を、ソレは楽しげにケラケラと笑っていた。
「お〜飛んだ飛んだ、凄い飛んだなセレーネのヤツ……まぁ頑丈だし生きてるだろ……多分、さてと……へい少年少女達、お兄さんちょっとあのドラゴン君を退治しに行くから退いてくれるかな?」
『あのドラゴンさんやっつけてくれるの〜?』
「そだよ〜?」
『あのドラゴンさん僕達の湖を勝手に奪っちゃったの』
『あのドラゴンさん居なくなるの〜?』
『ヤッター!』
「へぇ、そんなに悪いドラゴンさんなのか、それじゃあお兄さんの物にしても良いかな?」
『『『『いーよー!』』』』
膝に乗った少年少女の精霊達を脇に退けながら、その男は木から降り立つ。
『がんばれ〜!』
『がんばって死体さん!』
『良い悪魔さんがんばって〜!』
「何だ、バレてたか〜」
その声援に僅かに目を見開き、瞬間クツクツと笑う男は、その赤い鱗の竜を見て、グニャリと口角を歪める。
●○●○●○
「セレーネの獲物を横取りするのは悪いが……俺も〝ドラゴン〟に興味が――」
「くぉらぁ!!!」
――パァンッ――
『『『『えぇー!?!?』』』』
俺が竜へ脚を踏み出そうとした瞬間、真横からセレーネの拳が飛んで行き、頭を吹き飛ばされる……例えるならアンコの菓子パン人間の様に。
「『おいセレーネ、あの子等の教育に悪いだろ』……ったくなしてそんなに怒ってるんだ?」
「ッたりめぇだ馬鹿野郎!お前のせいでダメージ貰ったんだぞ!?」
「いや立ち止まるからだろうが……ったく」
俺は死肉を〝腹〟から引っ張り出して、セレーネの腕に付ける。
「ほら、コレで直っただろ……後、あのデカいの俺が貰うから♪」
「ハァ!?ふざけんなアレは私の「頼むセレーネ」…ッ、嫌「セレーネ」……クッ……卑怯だぞテメェッ」
俺が顔を近付けながら言うとセレーネの語気が弱くなっていく……フッフッフッ、こういう時無駄に顔が良いと助かるな♪
「また今度埋め合せするから譲れ」
「………絶対だからな?」
苦々しく顔を歪めて、精霊達の方に向かうセレーネを見送り、俺とセレーネの珍妙なやり取りに呆気にとられたドラゴンを〝視る〟。
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【■■■■■】LV:65
【火■竜】
生命力:■■■
魔力 :■■■
速力 :■■■
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『〈悪魔の眼〉のレベルが上がりました!』
「ヒュ〜♪……見事に文字化け、怖いねぇ……知ってたけど」
ふんふん〝嘲り〟、〝愉悦〟、〝侮蔑〟……随分と舐めてくれるなぁ?
「フェイ、切れるか?」
『切れるが、かなり時間が掛かるぞ?』
「切れないよりは十分勝機が有る、十分だ」
――ブンッ――
「お〜怖、速すぎんだろ」
「グルゥ?」
「あ、キレた」
嘘だろコイツ、攻撃外れただけでキレたぞ、メンタルカスだろ。
「ん?……ほほうほうほう……成る程成る程?」
――ズズズズッ――
その竜から溢れ出る〝ソレ〟を見た……〝怒り〟、純粋なまでの怒り、酷く醜い泥の様な負の力……強力な種が放つソレ……。
「種族的な〝特性〟なのか?」
その如何にも悍ましいソレを目にして……今まで大して感じなかった〝欲〟が湧いてくる。
「グォンッ!」
――ブゥンッ――
――スカッ――
「……今まで、空腹感を余り感じなかった……〝プレイヤー〟故の〝特性〟と考えていたが……成る程」
――………――
溢れ出る〝ソレ〟に触れた……途轍もない飢餓感を感じながら、すると、ソレは瞬く間に渦巻き、俺へ入り込む……満ちる空腹感と多幸感……に思わず笑みを零してしまう……だが。
「まだ、まだ足りない」
力が入り込むのを感じる、良い気分だ、だがそれでもまだ、この内に蔓延る〝飢え〟が疼く。
「成る程……確かに〝悪魔〟的だ」
面白くなって来た。
――バキバキバキッ――
〝色〟を喰う……俺にピッタリな力じゃないか♪
「グォォ!?」
「上だよ間抜け」
――ゴンッ――
飛翔し、上から頭を殴る……硬い、鉄板を殴った様な硬さと音がする……ダメージも見受けられないな。
「次」
「グガッ!?」
フェイディアで斬り付ける……初めて痛みに叫んだな、しかし鱗一枚傷付けた程度か、本当に硬いな?
「グオォォォォン!!!!」
叫びと共に爆発的に増える〝怒り〟、確かに美味いが――。
「それじゃない」
フェイディアの形を変える、3つの靭やかな刃が生えて、鱗を引っ掻く。
「グガァ!」
尾が地面を穿つ……地面が隆起し、土が宙を舞う。
「フェイディア…〝合わせろ〟」
『承知した』
竜の血走った迫力ある怒り顔を見据えながら、フェイディアを強く握る。
「『〝想武具象〟』」
フェイディア……〝偽りの魔剣〟、それはニセモノでは無く、〝偽り〟と言う力を宿した魔剣で有る。
「〝悪装:暴拳ノ巨人〟」
剣で在って剣に非ず、ソレの知る汎ゆる武器の形を作り、所有者にその恩恵を与える。
黒く赤い拳として。
「グガァ!!!」
「クヒッ♪」
――ドガァンッ――
竜の尾が上を過ぎ去る、そのまま脚に力を込めて、竜の腹へ潜り込む。
「小さいってのは便利だよなぁ?」
――ズザッ――
――ドゴォンッ――
「ギャォォォン!?!?!?」
「おぉ、柔らかい柔らかい……鱗より、だがな♪」
拳を腹に打ち付ける、頭より柔らかな感触と共に跳ね返される……が、それで良い。
「少しは痛むだろう?」
再度拳を打ち付ける……何度も、何度も、何度も……衝撃、そして微かな痛みに呻く竜、そこから更に溢れ出る竜の怒り。
「まだか……ッ!」
不意に空が晴れた……竜が飛び、隠れていた太陽が晒されただけだが。
「……オイセレーネ、あの動きってアレだよな?」
「………だな、間違いない」
「「ブレスだな」」
空を飛翔し、羽ばたきながら、地を睥睨する血走った眼、それと同時に口から炎がチラチラと見え隠れしている……。
「流石に山火事は洒落にならないな」
死肉を引き摺り出し、術を行使する。
――カァッ――
「『グガァァァァ!!!』」
そして放たれる炎が森へ迫る……その寸前の所で、死肉の壁が進行を阻んだ。
「うわ、何つー威力、ゴリゴリ削られてくんだけど!?」
焼き焦がされた側から死肉を補う、押し出して壁を作っていく、何秒、何十秒か、肉の焼ける匂いが充満する。
「うっわ、今ので千位消えたんだけど……マジか」
「竜のブレスを防げたんだ、寧ろ安いだろ」
「馬鹿か、リソース削られて安いもクソも有るか」
――ギュルルルッ――
「あのクソ竜、まだ飛んでるし」
「まだ撃つ気か?」
――ドッ――
「ッ!?」
「何時まで飛んでんだクソトカゲ」
地面を踏み翼を生やして飛翔する、そして、そのまま竜の顎をカチ上げる。
――ボブンッ――
「お、誘爆した」
口の中の炎が破裂し、竜は口から煙を吐いて落ちていく……しかし。
――ギロォッ――
「だよなァ、あんま効かないよなァ」
落ち行く最中でも俺を睨む火竜を見ながら俺も落ちて行く……。
――ブワァッ――
「激怒モードか……おぉ怖」
さて、第2ラウンドかな?




