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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第三章:燃える燃える、骸は燃える
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魔剣

――ドクンッ……ドクンッ……――


「いや〜創ってみる物だなぁ……なぁヴィル」

「ふぅむ……確かに壊れちまった物を集めたがよ……主、何だアレ?」


さて夢から覚めた俺は翌日、ヴィルに頼み壊れた武器を実験場に運び込んでいた……そして、実験場の先には、1つの異物が有った。


――ドクンッ…ドクンッ…――


脈打つ肉塊、人間の手が塊蠢く様な醜いソレは、周囲にドス黒い瘴気を放っていた。


「いや何…先刻、あの勇者から面白いヒントを得てな、ソレの為に態々用意した呪物だよ……視てみろ」

「見た目からして碌な代物じゃねぇだろ……ッウゲェッ」


渋々と見たヴィルの顔が、心底不愉快そうに歪む……予想よりは軽いな。


「何だ、吐いてのたうつと思ったのに……つまらん」

「五月蝿え馬鹿……んだよあの糞の塊は……気持ち悪ッ」


さて、そろそろ種明かしと行こうか……鑑定。


――――――――

【不穢之呪玉】


ソレは癒えぬ苦痛である、ソレは満ちぬ飢えである、潤わぬ渇き、伸ばせども掴めぬ幸福への絶望である……光喰らうはより大きな闇で有る。


―――――――――


「人の持つ負の感情、怒り、悲しみ、飢え、渇き、絶望、恐怖、殺意、憎悪、執着……あの劇場で生み出された人そのものの純粋な負の力、その〝塊〟……それがこの呪物、死して尚生きて恨み、怨嗟を呼び込む不浄の塊だよ」

「それで、そんなモンをどうするんだよ?」

「コレからやる……が、念には念を入れる……少し待ってろ」


俺は目を閉じ、強く意識する……さぁ、答えろ〝悪神〟。


――………――


そして、目を開くと……其処は懐かしの花畑、茶の席に腰掛け、艶のある笑みで俺を見据える、悪神だった。


「貴様から我に呼び掛ける等、珍しいのう?」

「まぁな、ちょっとした用事が有る」


俺は対面に腰掛け、アーリーユを見る。


「お前の肉を寄越せ」

「ブフッ!?……貴様何を――」

「……はぁ?……お前(悪神)の肉を寄越せって言ってんだよ」


俺は吹き出された紅茶を避けてアーリーユを見る……何でコイツはそんなに驚く?


「聖剣に対抗する武器が欲しくてな、其の為に色々と準備はしたが、念には念を入れ、お前の肉を素材に使いたい」

「――な、何じゃ……そういう事か……」


俺の言葉にワタワタと喧しい悪神の動きが止む……が、何だその冷たい目は。


「……取り敢えず、前に言ってたケーキ、後でノアにもくれてやれ……それで、お前の答えは?」

「有り難く頂こうかのう……で、妾の肉じゃが……まぁ、良かろう……くれてやろうぞ」


アーリーはそう言うと腕を引き千切り、俺へ投げ渡す。


「クッフッフッ♪コレで妾はソナタに傷物にされた訳じゃな?」

「茶化すな阿呆……まぁ貰えた事に感謝はしておくよ」

「うむ……しかし、主よ……随分と派手にやったのう?」

「そうか?……確かに術自体は派手で強力だが費用と実利を考えるとそうでも無いな……八割俺の責任だが」

「余興としては良い物じゃったがのう」

「クフフ、そりゃどうも……さて、俺は帰るぞ?」

「うむ……またな」



そのまま目を閉じ、帰還を強く意識する。


「……コレで良し、ヴィル、俺は何時までこうしてた?」

「あん?……何時までって一分も経ってねぇよ」

「ふむ……時間経過は気にする程でも無いか……必要な物は手に入ったし、早速創ろうか」


〈呪物作成〉を使いながら、俺はインベントリを開く。


――ズルッ――

――ブワァ――


取り出した瞬間、〝ソレ〟は恐ろしい気配を放ち始める……ヴィルは顔を真っ青にして、震えながら指を指す。


「お、おい主……何だァ?その腕?」

「〝悪神の右腕〟、正真正銘本物の、採れたて新鮮な奴だよ」

「は、ハァ!?そんなモン聞いて――」


ヴィルの叫びを無視して、壊れた武器の山と、呪物の入った瘴気の渦にソレを投げ入れる。


「〝我は悪の魔……有らん限りの呪詛を込めて、我は神の装を創造せん〟」


瘴気は蠢き、暴れ狂う……それに構わず詠唱を続ける。


「〝それは幾百の刃、幾千の槍、幾万の矢で有る、燻る戦意はやがては濁り、猛り咆える狂戦へ変わる……血を食み、肉を食み、それは脈打つ凶刃で有る〟」

「〝悪神アーリーユの忌呪を糧に、それは神話を喰らう化物へ至る……我はお前に名を与えない、己で示せ〟」

『俺は…偽りの魔剣…〝フェイディア〟』


ソレと同時に、瘴気の渦は収縮する、俺は瘴気に手を入れ、それの柄を握る。


「フェイディア……良い名だな」


それはただ黒い剣、黒い柄をした黒い刃を持つ……影をそのまま剣にした様な黒い剣だった。


―――――――

【偽■魔剣フェ■■ィ■】


ソ■は、悪■■創っ■■、■■■■■■――


―――――――


「ふぅむ……流石に悪神、神の名を関した素材故か、俺でも見れないな」


まぁ、それは追々調べれば良い……先ずはコイツの力を見たいな。


「おい、フェイディア……お前は何が出来る?」

『俺は虚の剣……持ち主の望む形に姿を変える、其処に俺の意思は無く、ただ所有者へ俺の力を貸すだけだ』

「ふぅん……で?」

『現段階でお前が俺を十全に使い切る事は出来ない……いや、俺自身が己の力の全容を把握仕切れていない、下手に強力な力を引き出せば俺が壊れて力が失われるだろう』

「俺の、記憶は覗けるか?」

『可能だ』

「では問おう、お前は聖剣に勝てるか?」

『不可能では無いが分が悪い、相手は長年の時を力の蓄積に費やした古い聖遺物、対してコチラは神の力の一部を宿した武具とは言え出来て間もない、抵抗は出来るが勝ち切るのは困難、良くて相打ちだろう』

「ふむ……できたてほやほやにしては上出来だな……お前の機能は?」

『標的に〝呪傷〟を与えられる、浄化……聖属性の力でなければ治せない傷を与えられる……そして形を自由自在に変えられる、剣でも、槍でも、弓でも鞭でもな』

「斬れ味は?」

『何でもは斬れない、人と、皮鎧なら斬れるが強化された鉄鎧等は厳しい』

「よろしい、自身の強化の目処は?」

『より強力な個体、或いは武器を取り込む事で、ソレを解析、分析し最適化出来る』

「十分だ……それじゃあ早速、試し切りでもしようか――」

「主様、報告に上がりました」


そう言い、椅子に手をかけて力を込めた瞬間、ベクターが横に現れる。


「ベクター……分かった、聞こうか」


俺は立ち上がってから座り直し、ベクターの資料を受け取る……其処には転写された写真と細かな情報が有った。


「1つの都市に監視死霊を集中させました……そして、守護者含む多数の住民の盗聴をした結果、1つの団体が可能性に上がりました」

「〝黒の崇拝者〟……?……どっかの宗教団体か?」

「1週間程前から周囲の街で騒動を起こしている集団で、街の重要施設を爆破しようとしたり、街の壁を攻撃する等を行う〝集団〟ですね」

「ほ〜ん……で、何で崇拝者何だ?」

「事件現場に〝我等が神ハデスへ捧げる〟と言う落書きを残す事……そして僅かな目撃情報で全員が黒装束に身を包んでる事から〝黒の崇拝者〟と呼ばれる様になったとか」 

「……マジ?」


えぇ、勝手に神にされて勝手に崇められてるの?……何それ気持ち悪ッ。


「街の裏に潜む人間も主様の被害に遭っている事からも、この集団が主様の劇場に不法侵入した異物の可能性が高いです」

「良し殺そう、直ぐ殺そう」


あの野郎共、人のゲームに勝手に介入して茶々入れやがって……あれ、でも案外面白い結果になってたか?


「……ま、良いか人間だし、サクッと殺そう」


どうせ狂信者を抱えても先走って碌な事にならんしな、そうなる前に資源に変えてやろう。


「引き続きその〝黒の崇拝者〟を追ってくれ、仲間に引き入れなくて良い、狂信者は邪魔なだけだ、殺して構わん」

「承知致しました」


………ふむ。


「ベクター、ちょいと待て……〝死霊作成〟」


俺はインベントリから死骸を取り出し、数人の死霊を創る。


「〝屍隠者(ハイド・シーカー)〟……流石にお前一人では手が足りんだろう、こいつ等を使え、命令も聞く」

「有り難く頂戴いたします」


今度こそ、隠者達を引き連れてベクターは実験場を去る。


「さて、それじゃ仕切り直して……そう言えばセレーネ西の森に面白い奴が居るって言ってたな……其処に行くか」

「ちょい主」

「ん?何だヴィル?……ソレは……確か前に騒いでた…」

「そうだ……つってもこれ以上下げると威力も下がっちまうが」

「いや分からねーよ、そのゴルフ玉で十分だろ」

「馬鹿言え、彼奴等はピンポン玉であの威力だったんだ、どうやったのか、俺も作りてぇ!」

「分かったから揺らすな阿呆ッ、恫喝かよ!?」


ヴィルの腕を無理矢理引き離し、軽く睨むとバツが悪そうに頭を掻くヴィル。


「……ったく、材料有るんだから暴れんな、足りなかったら自分で摂るか手下使え、俺は気にせん」

「応!……あぁ、それと主!主の部屋に新しい装備用意したから気が向けば着てくれ!」

「お〜う」


軽く手を振りながら、俺は屋敷を出る……すると屋敷の庭から、3匹の馬が駆けてくる。


「「「ヒヒーンッ♪」」」

「スレイ、アンヴァー、バイコー、久し振りだなぁ、うん…全員良い毛並みだ、ちゃんとブラッシングされてる様だな……ほら、蟲人やるよ」

「「「ヒヒーン♪」」」


美味そうに蟲人を齧り取る3匹の馬……すると、何処からか恨みがましい視線を感じる。


「キシシシ……」

「何だアジィ、随分と引き締まったな?」

「おぉ、大旦那様!」


中庭から這い出てくるのは、少し大きくなり80cmに成長したアジィ、そしてソレを追ってきた1人の屍人だった。


「お前がこいつ等の世話係か?」

「はい、私は〝屍人調教師アンデッド・ブリーダー〟のマイネです、御初にお目に掛かります、大旦那様」

「ふむ……ベクターの部下か」

「はい、ベクター様に大旦那様の従魔達の世話と他の騎乗馬等を世話する者の統括を行っています」

「そうか……所でコイツに餌をやっても構わんか?」

「キシシシ……」


先程からよだれ垂らしながら迫られて困るのだが。


「はい、問題ないです」

「悪いな……ほらちゃんと味わえよ……」

「キシャーッ♪」


バリバリと、噛み砕き長ら身体へ流し込むアジィ……また太ら――オーケー、御口チャックしておく。


「まぁ何はともあれ頼んだよマイネ、休息もちゃんと取れよ?」

「は、はい!ありがとうございます!」


俺はマイネに暇潰しで造った菓子の詰め合わせを渡し、西の砦へ行った。



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