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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
終章:悪神討つ英雄譚
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己が全てを賭してでも

――トンッ――


「ん?……お〜……漸く入れたか♪」


いやぁ良かった良かった…流石に四日間も〝ログイン停止〟されてしまうとは思わなかった♪


「――で、例にも漏れず君かい?」

「えぇ…雁首揃えて貴方と〝お話〟をするのは非効率だと思ったので」


白い大地に降り立って早々、俺と相対して初めての〝表情〟を見せるその男へ向き直り、指を鳴らす。


――パチンッ――


「――まぁまぁ、座りなよ〝太一君〟…〝紅茶〟は好きかい?…それとも〝珈琲〟の方が好みかな?」


そして、白い空間に作られた無機質なテーブルにお菓子や紅茶を並べながらそう言うと、太一君はその目に確信を得たように呟く。


「やはり、見間違いでは有りませんでしたか…一応聞いておきますが、どうやって〝この空間〟に干渉を?」


その言葉を聞きながら、俺は珈琲を啜る……相変わらず珈琲は苦くて苦手だ。


「――べぇッ、良く飲めるねぇ…で、君の疑問だが…それに関しては簡単な話だ…此処も〝世界〟が影響を与える〝世界の一部〟だっただけの事さ」


ソレは俺よりも自身の方が良く知ってるだろう。


「さて……今回は一体どういう要件かな?…いや、お話と言ったね?…つまり今回は単純な取引では無い訳だ」


俺の言葉に太一は語らず、そのカップの珈琲を飲み干して一息付く…。


「えぇ、まぁ……今回貴方をこの空間に呼んだのは〝貴方の器〟を〝抹消〟する事が決定したからです」

「ほぉ……ソレはソレは……中々思い切った決断だね?」

「えぇ、ですが飽く迄も器の〝消失〟…貴方自身のログインは自由です、また新しくやり直すならば、今後行き過ぎた行為は自制する様――」


――カランッ――


「――遅いなぁ…お前等は♪」

「……何だって?」


俺の言葉と同時に周囲の情景が変わる、白から黒へ、黒からは無数の映像が浮かび上がっていた。


「ッ――!?」

「ベクターには既に〝伝えてある〟…もしも俺が〝起きなければ〟…その時は〝お前達〟で〝世界を壊せ〟……と」


――ガチャンッ――


その映像に太一は立ち上がり、鬼の形相で俺を見る…無理は無い……何せ今、太一の見た光景は――。



『〝屍は語らず、眼は曇り、耳は腐り、腸に蛆と蝿、崩れ去り虚無へ帰す〟』

『〝善意には恵みを、悪意には報復を、対価と代償、世の理を以て我等は〝世界〟に仇成さん〟』


豪雪の大地で、密林の大地で、天高い山の地で、海に浮かぶ甲板で。


四人の〝屍〟達が祝詞を紡ぎその身に膨大な〝屍の写身〟を纏い呪詛を紡ぐ。


「汎ゆる可能性に目を張ったさ、お前達がお前達の想定の〝腹〟から溢れ出した、私という〝劇物〟にどう対処するのか…俺という存在の抹消に走り出す事も〝考えていた〟…当たり前だろう、お前達にとっちゃ己等の創り上げた世界に〝干渉〟する異物だ、ソレがお前達のルールに則り生まれた産物であれ何であれ、必ず俺へ〝妨害〟を入れ、そして交渉の座に着かせようとするだろう事など、〝この舞台の創造〟を想像した時から考えていた…」


俺をこのまま抹消する?…良いだろうとも、お前達がそう〝選択〟したのならソレを受け入れよう……しかし。


「〝俺の舞台を〟…〝彼等との最後の勝負の場〟を壊そうと言うのなら、相応の〝報い〟を受けてもらう…既に世界の命運は〝守護者〟へ委ねられた、お前達風情が俺を殺し、俺という〝物語の終幕〟を消し去ったとして、既に動き出した〝仕掛け〟は止まることはない……〝俺を殺す事〟で止まる〝滅びの仕掛け〟が、お前達の介入により〝抹消〟される…であれば残るのは〝何の対処の仕様もない滅び〟だけだ」

「おま――貴方は自分の〝舞台〟を壊すつもりで――」

「オイオイ、人聞きが悪いな?」


俺が俺の〝理不尽〟に〝絶望〟を与えると?…笑わせるなよ観測者。


「この結果へ導くのは〝お前達〟だ、過ぎた干渉が起こした〝破滅〟…回避しようの無い〝絶望的結末(バッドエンド)〟を選択したのは〝お前達〟だッ♪」


見てるんだろう、〝渾沌の夢〟の〝小間使い〟共。


「俺は困らんさ、例え俺という存在が未来永劫、この世界への〝干渉権限〟を失おうと…俺はその後の〝絶望〟を見て腹から笑ってやるとも……しかし、〝彼等〟はどうだろうな?…七日の猶予を与えられ、死に物狂いで準備した、憎しみの塊、怨敵も怨敵たる〝私〟を殺さんと、引き裂き、腸を抉り出し、その顔を砕いて足蹴にして嘲笑おうと〝気負った彼等〟…しかし、蓋を開ければ空の玉座に〝不在の王〟…しかし破滅は刻々迫り、唯一の鍵で有る俺は一向に見せず〝世界は終わる〟……きっと酷い罵詈雑言、憎しみ怒りが溢れ出すだろう…無論俺は謂れのない〝罵倒〟を受けるつもりはない…故にこう返さねばならんだろう……〝観測者の妨害の所為〟だと…そうなるとどうなるか、お前達ならば分かるだろう?」


俺の言葉に〝誰も答えない〟…当たり前だ、半ば脅迫染みた手札を手に俺と対面した…なのにいつの間にか立場が入れ替わり、俺が観測者達に〝ナイフ〟を突き付けて居るんだから。


「さぁどうするね……俺は何方でも構わないぞ?…〝綺麗に物語を終わらせるか〟、それとも〝醜く続く虚無〟を延々と演じるのか…♪」


――ゴポッ――


世界が黒に染まる…俺の身体が〝影に覆われ〟、姿が崩れ去り…俺は後退る〝太一〟を見る。


「『俺はこの舞台に〝全てを賭けた〟…己の血も、肉も、骨も、腸も、魂の一片すら〝捧げてやった〟…今更お前達風情に媚び諂い、赦しを乞うつもりも、お前達の〝介入〟も許す物か』」


お前達は〝舞台上〟に上がる〝演者〟じゃナイ。


「俺を殺すのは〝勇者〟だけだ、俺を殺し〝世界を取り戻せるのは〟…、神でも、畜生でも、ましてや俺と同じ〝化物〟でもない」


化物を殺すのは人間だ、そんな物は〝人間讃歌〟だと、誰も彼もは言うのだろう……だから何だ。


「〝化物を殺すのは人間〟で有る、〝俺と言う化物〟を殺す役目は〝人間〟…否、〝英雄〟…否…!――〝勇者〟にのみ与えられた権利だ」


コレばかりは例え愛おしき〝人間〟で有ろうと、天上から見下ろす偶像共ですら否定する事は〝赦さない〟…。


「〝観測者(お前達)〟はその役目に能わない…お前達如きが〝騙る〟事は赦さん」


太一を何十の眼で睨み、何百の口で呪詛を吐き、何千の四肢で〝捉える〟…。


「この全ての〝一幕〟…泡沫の〝夢〟が覚めた後ならば、好きな様にするが良い…疾うの昔にそんな〝代償〟は背負っている」



そう言い終えると同時に、世界は黒に染まった……〝俺の意思〟ではない。



その暗闇を泳ぐ事暫くして……。


――パチッ――


俺は〝玉座〟から目覚めた。


「『〝御苦労だった〟』」


その言葉に、其の場の護衛、遥か遠くの〝忠臣〟達が俺の目覚めを認識する。


「全員休め、そして〝備えろ〟…我々と守護者の、〝最後の闘争〟に」

『『『『御意』』』』



そうして、〝最後の演目〟はその準備を着々と終えて行った。

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