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Deadman・Fantasia〜死霊術師の悪役道〜  作者: 泥陀羅没地
第十五章:神殺を企む者、神敵を討つ者
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大いなる悪魔の前座⑳


「ッ〜〜!?」


一瞬の呆然…そして気付く……この攻撃の正体を。


「ヨイ――ッ!?」

「フッ!」


腕を吹き飛ばされ、姿勢を崩す……立て直そうとするよりも早く俺の脱ぎ捨てた肉の拘束から抜け出したアーサーが俺へ剣を振り抜く。


――ジュッ――


「クッ…!」


腕が焼けるように痛む…俺の力を削り取る様な不快感に顔を歪め、アーサーの攻撃が振り抜かれて俺はエリセから引き剥がされる。


屍の世界に造られた、神々しい〝祭祀場〟をエリセが登るのを見て舌打ちする…。


「チッ…惜しくも負けたか」


最早エリセ達の〝策〟を止めることは出来ないだろう…ならば切り替えるか。


「面倒だが、俺の不手際だ仕方無い…予定外の乱入だが良いだろう…天使共を殺し尽くしてからだ」


何…今一度天使共を殺して魂を回収してしまえば良い話――。


「残念だけど、君の相手は〝天使〟じゃないよ?」

「……何?」


再生の遅い身体を癒しながら、俺はそう言って薄く笑うギルネーデへ目を向ける。


――ドォッ――


その刹那…白の祭祀場から天を衝く白い魔力の柱が〝結界〟を貫いた……。


「君が戦うのは彼等、彼女等の〝主〟…いや、僕の元主でも有る御人…もう分かるだろう?」


ギルネーデが紡ぐ言葉が、俺の耳を突く……その言葉の意味を理解したと同時に、ギルネーデが俺よりも先に言葉を続ける。


「――〝善神〟…〝アフラーマ〟その人、張本人だ」



その声は、まるで死刑宣告の如く重く…俺の絶望を慮る様な同情の声をしていた……。




●○●○●○


――ザッ――


「アルクさん、アルトさん!」


私が叫ぶ…すると、アルクが言葉を紡ぎ始める。


「『我等は神の代理人、人々の守り手、悪性を排する神々の使徒』」

「『〝我等は主の手で有り、足で有り、眼で有り、耳で有る…主の望みが果されし時こそ、我等天子の至上の誉れ〟』」


「「『『――で、在った』』」」


アルクに続き、アルトが紡ぐ…それと同時に私の手の内にあった天使達の魂が漂い、アルク達と並び陣を組む。


「『天の誓いは破られた』」

「『天使の務めは果たされなかった』」

「「『『今や世界は危機に堕ち、我等が収める事は敵わず』』」」


ソレは祝詞であり、祈りであり、懺悔である…その言葉にアルクやアルト、周囲の魂が揺れる。


「『――我等は恥じよう、神の手足足り得ぬ事を、神の眼耳になり得ぬ事を』」

「『我等は悔いよう、愚かなる我等の恥を、主に拭わせてしまう愚行を』」


――ボォッ――


その時、魔術陣から炎が生まれ…天使達を包み込む。


「「『『主よ、我等が生命を薪に焚べ、我等が焔に応え給え…そして、願わくば人々へ降り注ぐ〝闇〟を、主の〝焔〟にて撃ち祓い給え』』」」


その言葉と共に烈火の如き白炎は燃え盛る〝光〟となり、空高くへ突き進む……そして。



『――我が子達よ、その願い…〝聞き届けました〟』


焔の中から、そんな〝声〟が響き渡った……。






『――報告、〝世界〟より〝天使〟の消滅を確認』

『〝緊急事態発生〟と認識、〝調停者〟による単独調査或いは殲滅が困難と〝推定〟』

『世界に残留する〝善性〟の急激な喪失を確認』

『――報告、現時刻より凡そ0.01秒前に該当座標■■■にて、強力な瘴気反応を確認――〝消失〟』

『分析結果――個体名〝ハデス〟による〝妨害〟及び〝隠蔽〟と判断』

『干渉開始――〝失敗〟』

『干渉開始――〝失敗〟』

『干渉開始――〝失敗〟』

『――〝善神〟より提案、〝善神〟の一時〝顕現〟の要請』

『――〝賛成〟』

『――〝賛成〟』

『――〝賛成〟…〝神域〟を座標■■■に移動します』



●○●○●○


『来た来た来た来たァッ!!!』


真っ白な空間にて、一人の美女が叫ぶ…清廉な空気の中に相応しくない程の声で。


『警告、飽く迄も〝一時顕現〟である事を忘れない様…〝神格〟の長期顕現は世界全域に多大な負荷を生みます』

『――ッはいはい、分かってるわよッ…フッフフフッ♪』


その美女は〝心を持たぬ同期〟からの警告に軽く返し、その聖域を白い焔で包む。


『良くやったわ〝我が子〟達よ、今は休みなさいッ』


そして己の手に集まる〝魂〟達へそう言いなが〝一人〟になる。


『漸くこの時が来たッ…あの屍風情に天誅を下す時が…見てなさいアーリーユ、世界に真に必要なのは〝()〟である事を証明してやるわッ』


美女はそう言い、その焔の中に消えてゆく……その顔に〝勝利〟の笑みを浮かべて。



しかし、その美女は…〝善神アフラーマ〟は理解していない。


その勝利への〝確信〟がともすれば…一種の〝慢心〟であると言う事を。


○●○●○●


――ダッ――


「――止めようとしても無駄だよ、もう〝召喚〟は止められない…君の負けだ」


ギルネーデの言葉が俺の背を突く…その言葉に、俺は〝答えない〟…。


「――まさか、天使では無く…その〝主〟が自ら直々に来るとは……」


俺は未だにその言葉を、ギルネーデの言葉を振り返る。


〝善神〟が来る…神本体が直々に、俺を〝殺し〟に……。


――ハァ……ハァ…!――


余りの事に呼吸が逸る、心臓が高く打ち付ける…。


「諦めなよ…もう君の負けだ」


身体が硬く、俺の中に〝色〟が湧き出す。


ソレは〝暗く〟…〝黒く〟…〝深く〟…〝蠢く〟…。



全く――」

「どうせ死ぬなら、僕が殺して上げるよ……彼女に殺されるより、幾らかマシだろう?」



あぁ……〝本当に〟――。


――ドクンッ――


「『何たる僥倖かッ…!』」


〝悪悦〟の〝感情〟に己の口角が歪み上がるのを感じる。



――ズオォォッ――


「――え?」


ギルネーデを置き去りにする…そして、俺は揺らめく焔の祭祀場に〝直心〟する。


「――〝我は悪の魔〟……〝有らん限りの呪詛を込めて〟…〝我は爾を忌み呪わん〟」


――ズォォッ――


俺の言葉と同時に世界が〝揺れる〟……地に滴る〝血〟が、壁にへばり付く〝肉〟が、巻き散らかされた〝骨〟が、独りでに動き出し、一点へ進む。


「〝我は尽き果てぬ悪意で在る〟」


その速度は緩やかに…しかし、徐々にその速度を増してゆく。


「〝我は満ち足りぬ虚無で在る〟」


その〝中心〟の俺は、その姿を醜い……ソレは醜い屍肉の化物へ変えて、祭祀場へ駆ける。


「〝尽きぬが故に我は求める〟」

「〝満ちぬが故に我は求める〟」


やがてその世界は〝真っ黒〟に変わる……大地も空も距離も何もかもが無い〝真っ黒な世界〟に。


「「「「〝血を、肉を、骨を、臓腑を〟」」」」

「「「「〝富を、名声を、汎ゆる全てを〟」」」」



その黒い世界にたった一つ〝有る〟……白く燃え上がる焔へ迫り、その口を開く。


「『我が腹に入れ、溶かそう…虫を、獣を、人を、龍を――〟』」


――〝神〟でさえも。



「『――〝死霊の腸〟』」


そして俺は術の名を紡ぐ……深い深い、冥府よりも深い地獄の底、神々の手の届かぬ、世界の目すら届かない〝黒の世界〟…。


〝信仰すら通さない〟…〝虚無の世界〟の名を。



『「ハデス――ッ!?」』


それと同時に〝ソレ〟は現れ、叫ぶ……その瞬間、その女は目にするだろう。



辺り一面〝黒〟の世界と、今…正に目の前に迫る。


己を喰らおうとする化物の〝大口〟を。


――バクンッ――





「『始めまして〝アフラーマ〟……そして、さようなら♪』」


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